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Mr.NO-GOOD´  作者: 慎之介
第三章:帝国と陰謀編
29/106

二話

わっふ~い!


おっほ~い!


うほほほほ~い!


『……楽しいのか?』


そんな……。


訳……。


無いだろうがぁぁぁぁぁ!!


殺されそうなんだぞ!


うおいっ!


『それにしては奇声が、楽しそうじゃな……』


変な声も出るって!


うおっほ!


リリスの連射、パネェッ!!


つか! 動きが速過ぎる!


ちなみに俺は、有翼族の村近くで魔道砲を連射されてます。


はい……。


かる~く……。


うおっと!


殺されかけてます……。


なんだ! この状況!


俺!


くそっと!


命の恩人じゃないのかよ!


因みに魔族の中でバンパイア族、人狼ワーウルフ族、有翼族が三強の種族です。


その中で最強を担う一角が、全力で俺を殺そうとしてきてるわけですよ。


ったく……。


やってらんね~……。


ワーウルフ族は、力と速度が。


バンパイア族は、魔力と力が。


有翼族は、魔力と速度が。


それぞれ優れていて、五将軍のうちの三人がそれだ。


残りはダークエルフとワータイガーだったかな?


うげっ!


それ所じゃなかった!


身長とおんなじくらいある魔道砲を連発してる、あの二重人格馬鹿をどうにかしないと!


俺が死んでまう!


『魔力不足で、あの砲撃を消し飛ばすのも無理じゃな……』


くっそ!


それにこれだけ連射されてたら、元々消すなんて無理だ!


「くっ! 避けるな人間!」


アホですかぁぁぁぁ! 貴様!


避けるわ!


当たればどう見ても即死の威力じゃねぇぇか!


殺す気か!


『殺す気じゃろうが……』


ですよね~……。


うおっと!


「くっ……。これだけ私の攻撃を避け続けたのは、人間ではお前が始めてだ。貴様の速度と戦闘力は認めてやろう」


「それはどうも……」


お互いに間合いを計りながら向かい合ったリリスが、褒めてくれたので取り敢えず返事をする。


「だから! さっさと死ね!」


リリスの砲撃を避けながらも、俺は返事をしたさ……。


「断るわ! 馬鹿!」


だからの意味が分からん!


てか、だからの意味が分かってないんだ! この馬鹿女!


そんな理由で死ねるか!


「だぁぁれぇぇがぁぁ……。馬鹿だ!」


うおおおおおおお!


連射を速めるな!


こっちは病み上がりなんだよ!


本当に死ぬから!


****


俺はそれからも避け続けていた。


命、大事!


『ふ~……。殺そうとしてきた相手を、殺さずに相手するなど……』


だって!


うおう!


リリム! 恩人!


さすがにぃぃ!


殺す! 出来ない!


『必死なのは分かるが、片言で叫ばれては分かり難くてしょうがないんじゃが……』


そ!


れ! こそ!


無茶言うな!


返事ぃぃぃぃ!


するだけましだろうが!


村の隣にあった丘が更地になる頃、さすがにスタミナが切れたのかリリスの息が上がり始めた。


避け続けて三時間……。


すでに森が二~三つなくなっている。


化け物です……。


この子化け物ですぅぅぅぅぅ!


誰か! たぁぁすけてぇぇぇぇぇぇぇ!!


「はぁ……はぁはぁ……。人間! 貴様……はぁ……。本当に何者だ?」


「唯の旅人です……はぁはぁはぁ……」


「ふざけるな! はぁはぁはぁ……。私の速度について来るだけでなく、攻撃をすべて躱す人間などいてたまるか!」


「だから! はぁ……はぁはぁ……! 本当に人間です! 後、見逃そうよ! はぁはぁ……それか、諦めてよ……」


「私に……はぁはぁ……その選択肢は……はぁはぁはぁ……無い!」


うわぁぁぁぁん!


また撃ってくる!


この子化け物で、それも馬鹿者です~!


助けてぇぇぇぇぇ!


『(分かっておらんのか? 相手の攻撃を村に被害なく避け続けるなど、実力差が相当なければ無理じゃ……。こいつのレベルはすでに、Aランクまで上がっておるんじゃないか?)』


連射の速度落ちたけど、まだやめてくれない!


もう諦めようよ!


静かにお眠りよ~!


もぉ~!


『(この馬鹿は気付きもしとらんな……。まぁ、死ぬことはないじゃろう……)』


どうにかしてよ! ジジィ!


『まぁ、久しぶりのトレーニングだと思え……』


こんな命がけのトレーニング……嫌じゃ! ボケ!


「はぁはぁはぁ……。しぶと過ぎる……」


やっと……。


連射が止まった……。


****


うおっ!


油断した俺の足元に、三本の矢が刺さった。


「くくくくっ……。苦戦してるんじゃない? リリス」


「ミネア……」


弓を持った、やたら露出度の高い服を着た女が、リリスの元へ歩いてくる。


真っ白い髪で、褐色の肌そしてとんがった耳。


ダークエルフだな。


「同じ五将軍として、人間一人にこんなに手こずるなんて……。さすがに見過ごせいないわね」


はいぃぃ!?


五将軍もう一人出てきちゃったよ!


なに無理にでも殺そうとしてんだよ!


神様よ~!


今日はがんばったんだから、もういいじゃん!


ここは逃がそうよ!


「はぁはぁはぁ……。ミネア……余計な真似は……」


「もう……。完全にスタミナ切れしてるじゃないのぉ。いいからここは私に任せなさいって! あんなの私の弓ですぐに仕留めてあげるわぁ」


あんなのとはなんだ! このエロねぇちゃん!


てか、逃がせよ!


次から次にボス戦とか、ありえないだろうが!


こっちは一人だし、片腕ないし……。


何よりも……。


もぉ! 疲れたの!


『なんじゃな……。怒り方が馬鹿そのものじゃな……』


だって疲れたもん!


ん?


ダークエルフが肩に触れた瞬間から、リリスが動かなくなった。


動けないのか?


あいつ、なんかしたのか?


おっと……。


こっちには一声もなしに、弓を連射してきやがった。


矢自体が、魔法出来てるのか。


『多分、雷の魔法じゃな……』


掠るだけで、動けなくなるって事か……。


リリスにもやりやがったのか……。


しかし……。


あの女の顔! むかつく!


何で俺をいたぶるのを、楽しんでる顔してるんだ!


頭おかしいのか!


てか! なんかこいつ嫌い!


なんか腹立つ!


何でだ?


『さあ、わしに聞かれてもなぁ……』


う~ん……。


ほいっと……。


俺の足があった場所に、雷の魔法で出来た矢が突き刺さる。


これなら、避けるの問題ないな。


『あのエルフが、リリスより弱いのに偉そうじゃから……。ではないか?』


あっ! それはあるな。


でも、何か……。


ひょいっと……。


「ちぃ! さっさとくたばれ! このクズが!」


はははっ……。


俺のあだ名をよく知ってたねぇ。


エッチな悪戯してから殺すぞ! このアマ!


あぁぁ! 腹立つ!


マジでちょっと斬りたくなってきた!


『まぁ、ここまで我慢したんじゃ。もう少し我慢せい……』


でもよ~……。


んんっ! なんだ! 突然!


『この魔力は! バカな!』


何だ?


ジジィこの魔力の原因分かるのか?


俺が片手間にミネアの矢を避けている間にも、巨大な魔力が近づいてくる。


それは轟音を立てながら、俺達の上空を通り過ぎた。


マジですか!


てか! ジジィ!


『分かっておる!』


ドラゴンって架空の生物じゃないのか?


何で俺の目の前、通り過ぎるんだよ!


『かつて、邪悪な神が創造したことがある……。大昔の話じゃがな……』


あっ!


俺は、ジジィの記憶を見た時の事を思い出した。


確かに邪神の化身として、邪竜が生まれたのを追憶で俺も見た!


でも、今なんで突然?


『分からん! じゃが、あの方向は!』


分かってる! 有翼族の村のほうだ!


爺さんが!


俺が走り出す前に、フラフラとしているがリリスが村に向かい飛び始めていた。


どうする?


んっ?


「よそ見してんじゃないよ!」


その間にもミネアは、俺に矢を放ってくる。


ああ……。分かった……。


「なっ! きゃ!」


俺はミネアとの間合いを一瞬で詰めると、弓を切り捨てた。


こいつにむかついていた理由も、その時に理解できた。


偉そうな事言ってるが、カーラよりも全然弱いんだ、こいつ……。


俺は、カーラの矢はまったく避けられなかったが、お前のは余裕なんだよ。


なんかそれなのに、偉そうでむかつく!


『(お前のレベルがあがっとるんじゃ……。カーラよりもミネアのほうが弓でも魔力でも上じゃ……。まったく……)』


俺は座り込むミネアをそのままに、有翼族の村へ走り出した。


「きゃぁぁぁ!!」


村が火の海に……。


リリスが魔道砲で、竜を牽制しているが……。


被害はもう出てしまっているようだ。


あ、爺さんは無事なようだ。


ふぅぅ……。


あの竜、全長五メートルってところか?


「しまっ……きゃああああ!」


リリスが竜の爪で魔道砲を破壊され、尻尾で弾き飛ばされていく。


何とか立ち上がろうとしているが、羽も折れているようだ。


ジジィ!


『うむ! Aランク中位! 気を抜けばこちらが死ぬ!』


行くぞ!


俺は魔剣を天に掲げて、秘言を唱える。


「この世に漂いし、迷える戦士の魂よ! 我の元に集い我が刃となれ!」


形を変えた魔剣に、周囲から魔力の球体が集まってくる。


『行くぞ!』


「力を示せ! スピリットオブデス(死神の魂)!」


真の名を叫ぶと同時に、魔剣は光の刃を灯す。


「はあ!」


おいおい……。


俺は全力で切りかかった。


だが、魔道兵機切り裂いたこの魔剣で、幾つかの鱗が剥がれただけだった。


くっそ! なんだよ! この防御力!


俺は、尻尾を避けるために跳び上がる。


そこへ、竜の火炎が吹き付けられた……んだけど……。


あれ? ここか?


俺は火炎の中心へ、剣の先を差し込んだ。


力なんてまったくこめてないが、その瞬間竜の火炎は霧散した。


なんだ?


自分でやっておいてなんだけど……。


どう言うことだ? これ?


『魔法やそれに連なる技には、その中心となる核がある。今、竜の火炎のコアを的確にお前はついたのじゃ。この方法なら魔力消費は最小限ですむ』


おおぅ。


何故俺はそんなことできるようになったの?


自分で自分が分からない……。


うわっ!


などと考えていると、竜の爪が襲ってくる。


一撃で大岩を破壊しやがった。


その後も幾度か斬りかかったが、竜にはあまりダメージが与えられない。


火炎は消し飛ばせるが……。


『ドラゴンが強いのは、その体の大きさと硬さから繰り出される凶暴な力の為じゃ……。光の剣はもう持たんぞ!』


お互いに致命的なダメージは与えられないし、こっちにはタイムリミットが……。


どうする?


唯一鱗がないのは、腹の部分だけか……。


やるか……孤塁抜き!


『コルク抜き?』


違う!


相手が防御していたり攻撃している剣の先とかを、わざと狙う師匠から教わった技だ。


防御してる部分はダメージを受けないと、相手が思い込んでいる所を突くんだよ。


盾を持ってる場所を剣で貫けば、そこは丸腰って技だ!


『なるほど……。狙うは……』


火炎だ!


今まさに俺に吹き掛けられる火炎に向かい、俺は突進する。


そして、炎を霧散させ……。


目の前となった敵の腹部に、背負った剣を全力で打ち下ろす。


〈ドラゴンバスター〉


捨て身の切り込み技だ。


適当に名付けた時は、本物のドラゴンに使うことになるとは、思いもしなかったけどね。


よし!


『うむ……』


ドラゴンが塵になるのと同時に、カシャンと音を立てて魔剣が元の姿に戻る。


何とかなった……。


つか、もう疲れた……。


もう限界……。


『まぁ、よくやった……』


****


おおう?


いつの間にやら村の火を消した村人と、爺さんに肩で抱えられたリリスが、俺の周りを取り囲んでます。


何だろう?


この感じ……。


デジャヴ?


いやいや……。


二回も村救ったじゃん!


逃がそうよ! ここは!


鋭い目つきのリリスが、ゆっくりと口を開く……。


「こんな……人間に……」


はい!


こいつ何が何でも人間嫌い!


逃がす気ないよ!


しかぁぁぁし!


ドラゴンの魔力吸収した俺を! 舐めるなよ!


すでに煙を噴いてる左腕は、二の腕部分まで生えてきている。


火傷もほぼ完治済み!


はい……。


にげまぁぁぁぁすっ!


俺は、村人の間を高速ですり抜け森に駆け込んだ……。


「待て! 人間!」


リリスの叫び声が聞こえた……。


魔族ってのは、血も涙もないんだな……。


恩って言葉も知らないのか?


このアホどもが!


****


森の中を突っ走りながら、俺は悩んでいた。


う~ん……。


『逃げたはいいが、行くところがないし、ここがどこかもさっぱりじゃな……』


だよねぇぇぇ。


『流石、不幸の塊といったところか……』


ああ、そうなっちゃいます?


はははっ……。


あ~あ……。


神様よぉぉぉ!


俺! お前! 嫌い!


死ね!


たく……。


やってらんね~……。

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