十二話
『目覚めよ……』
なんだ?
『目覚めよ……』
うるせ~な~。
『目覚めよ……』
「後五分……」
『馬鹿かお前は!』
「うっせ……。死ねボケ……」
『空気を読まんか! このバカ者!』
なんだよ~。
もぉぉぉぉ、眠いんだよぉ。
無視してもう、ひと眠り…………んっ?
俺は、飛び起きた。
『や……やっと起きたか』
んんんんっ?
俺……生きてる?
木の洞の中で、俺は目を覚ました。
「何で? おおぅ?」
左腕もあるし、左目も見える。
右足も痛くない。
でも服だけは、ボロボロだ。
「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ!!」
『頼むから話を聞け……』
ん?
頭の中から声がする?
まぁ、それは置いといて……。
「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁ!!」
『話を聞け! 馬鹿もん!』
えええぇぇぇぇ。
頭の中からの声に答えるなんて、俺そこまで頭おかしくないんだけどなぁぁ。
『わしが魔剣だと、分かっておったじゃろうが! 馬鹿かお前は!』
「おおぅ? ずるいぞ! 頭の中読めるのか?」
『あたりまえじゃ。お前とわしは一心同体じゃ』
「えええぇぇ。ジジィと? 嫌だぁぁ」
『くっ……。あのまま見殺しにして、次の継承者を待つべきだったか……』
んお?
「じゃあ、この怪我が治ってるのって、魔剣のおかげなのか?」
『ふぅ……。そうじゃ』
「ほんとにぃぃ?」
『疑うな! 二度と助けんぞ! この馬鹿もんが!』
「冗談だよぉぉ、マジになんなってぇ。ところで、どうやったんだ?」
『くっ……。わしは魂を魔力に変えて操る魔剣じゃ。所有者の傷をいやす事や、身体能力を上げる事が出来る』
なるほど、それで俺は怪我の治りがはやかったり、魔剣出してる時には、何時より速く動けたりしてたのか……。
『そう言う事じゃ』
「でも、あんな重症も治せるんだな。すげぇぇな」
『本来そこまではなかなか難しいが、今回は魔人の魂を吸収したのでな。五日ほどかかったが、成功した』
「へ~ぇ」
しかし、これで……。
「彼女が作れるし! 童貞も! オゥ! イエスッ!」
俺は、喜びを全身で表現してみた。
『今まで継承者は、十五人その中でも、わしの声が聞こえた者は五人……』
「あっ、そう」
『くっ……これ程馬鹿な者は、初めてじゃ』
「人を馬鹿馬鹿言うな! ジジィ! 思春期の男子なんて、頭ん中全部それに決まってるだろうが! 俺は普通だ!」
『思春期の男児に謝れ。はぁぁぁ……。やはり、見殺しに……』
「ジジィ! 一応賢者だろうが! そう言う非人道的なのは良くないぞ!」
『お前に言われとうないわ!』
「ああ……。もう、うっさい……。頭の中でがなり立てるな……」
『こ……こいつ……』
さて、生きてるのはいいが、これからどうするかなぁ……。
俺の財布には、二万ギリか。
武道大会の出店用に、少し多めに入れておいてよかった。
しかし、これだけじゃ、半月ともたないだろうし……。
『アルティア王国に帰れば良かろう?』
「馬鹿かジジィ! あれだけ大勢の前で、魔剣使ったんだぞ! 帰ったら死刑にきまってるだろうが!」
『(今帰れば、英雄になれると思うが……。こ奴腹立つから黙っておくか……)』
「ああぁぁぁぁぁぁ!!」
『なんじゃ?』
「よく考えると国外行っても、指名手配されてる可能性あるじゃんか! 最悪だぁぁぁ」
どうする?
どうする?
まっ! なるようになるか……。
『お前はネガティブなのかポジティブなのかどっちじゃ?』
「んなもん知るか。てめぇで考えろ」
『この、くそガキは……』
さてさて……っと。
「よし! 決めた!」
『どうするんじゃ?』
「ニルフォ共和国で、素性を隠して時効まで逃げ延びる!」
『それでいいのか?』
「ジジィは今の情勢知らないだろうけど、ニルフォ共和国は商人と傭兵の街で、傭兵達のギルドもたくさんあるんだ」
『ほう……』
「その中には前科者や脛に傷がある奴も多いって言うから、そこでとりあえず生活の基盤を固める! これしかないだろう!」
『そう、うまくいくかのう? お前の運の無さは……』
「じゃあ、どうしろと? 魔剣の継承者が餓死してもいいのか?」
『そうすれば、正当な後継者に受け継がれるのぉ』
「この……機会があったら叩き折ってやる……。まあ、いい! とにかく! ニルフォにレッツゴー!」
そんなこんなで、魔剣の真の力を使える代わりに変なジジィが頭の中に住み着いた俺は、名うての傭兵目指して奮闘することになる。
もちろん、目標は彼女を作って! 童貞卒業!
ただ、当然のごとく、新たな生活に心躍る俺の背後には、不運がヒタヒタと後をつけてきていた。
とことん泥沼にはまるのだが、その時の俺は、それを知るよしもなかった……。
って、マジですか?
だから! 死ねよ! 神様!
運くれよぉぉぉ!
やってらんね~……。




