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Mr.NO-GOOD´  作者: 慎之介
第八章:魔界と運命編
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十三話

「くくくっ……お前を本来の姿へ戻してやろう!」


く……そ……。


「私の傀儡へと戻るがいい! 貴様にはそれが相応しい!」


ちく……しょ……お……。


(貴様は、そんなものなのか?)


ミル……フォ……ス?


(ふん! 賢者共も魔力を封じられて動けんか……。所詮、お前はただの人間という事か)


ま……だだ……。


(何?)


まだだぁぁぁぁぁ!


意識を繋ぎ止めろ!


まだ俺は死んでいない!


魂が消えてない!


魔力が無くて……。


体が動かなくても……。


死んでも戦うんだ!


俺と言う存在が、この世から消し飛んでしまうまで!




「これで、やっと目的が達成できる。死神も排除した以上、私の心配は全て解消された!」


偽神が立ちあがり、今まさに俺に触れようとした瞬間……。


ビィー!ビィー!っと、警報が鳴る。


「なっ!? 何だ!?」


空中に浮かんだモニターには……。


師匠!



生気を失った俺の目に、体は前のように半透明でノイズが走っているが師匠の姿がうつった。


師匠は、あの場所に眠る天候操作装置を一刀のもとに斬り捨てた。


これで、滅亡は無くなる……。


でも、まだ……。


「この世界の干渉を運命のレベルで制限しているのに! あくまで邪魔をするか! 死神よ!」


師匠は、見えないはずのこのモニターを見据え……。


叫んでくれた。


「思い出せ! 馬鹿弟子! 我が流派の真髄を!」


はい、師匠。


俺はまだ戦えます……。


師匠の体は、その後数秒で消える。




師匠の記憶を覗いて知っている……。


今の三十秒程度の干渉でも、一生抜け出せない空間の狭間に閉じ込められるリスクがある。


それでも来てくれた……。


これに応えなければ……男じゃ……。




俺じゃない!




惨めでも情けなくても、何でもいい!


力をよこせ! ミルフォス!


俺はまだ戦うんだ!



まだ終わってない!



体は、指一本すら全く動かないが……。


俺の戦闘本能は、意識だけを繋ぎとめた……。


(くくくっ! イいだろう! お前の細胞と融合した、液体金属に残っている俺の全てをやろう!)


全て……。


お前は、俺に命を……。


(さあ! 失望させるなよ! 人間!)


ああ……。


「くう……。まあいい! こいつを操り、再度装置を製造すればいいだけだ!」


死神の剣の神髄とは……。


心、技、体全てを極限に高め敵にぶつける事……。


俺にいま出来る、最高の力を引き出すんだ。


意思の力で!


「なっ!? 何だこれは!? 何故魔力が残っている?」


俺の全身から立ち上り始めた白と黒のオーラに、偽神は後ずさりをする。


『今こそ!』【全ての力を一つに!】



左右で、色の別れていたオーラが徐々に混じり合う……。


そして、全身を包むオーラが灰色へと変わった。


魔力量は関係ない……。


聖魔融合で到達した、究極の魔力。


すなわち技……。



俺を掴んでいた、蛇共がオーラに弾き飛ばされ俺の体は自由になった。


「カシャン!」


俺とジジィ、若造の意識を一点の曇りなく集約する。


左手に持っていた聖剣が、液状化し賢者の石を露わにした魔剣へと絡みつく。


そして、一本の剣となったそれは、二メートル超の魔力の刃を発生させる。



オリハルコンとは精神感応金属……。


俺達三人の意思力が、形さえも変化させた。


すなわち心……。



「馬鹿な! くそっ!」


俺達の意思力と魔力は、レーザーを空間ごと湾曲させた。



俺の体内の合成液体金属[青生生魂アポイタカラ]は、その意思力と魔力に呼応して……。


俺の肉体を極限へと高めた。


すなわち体……。



「馬鹿な! 馬鹿な! 馬鹿なぁぁぁぁぁ!」


今こそ究極の一撃を……。


「一撃必殺!」


全力で踏み出した俺の体は……。


光へと到達した。






「ディメンションブレイカ―!!」






俺の放った一撃は、何の変哲もない只の真っ直ぐな斬撃……。


しかし、光の速度で……。


究極の魔力を込め……。


全力で放った一撃。


次元の壁ごと斬り裂いたその一撃は、偽神の胸部に局所的ブラックホールを発生させた。


偽神は、最後の言葉を残す事もなく……。


粉々に砕け散りながら、ブラックホールに吸い込まれていった。


終わった……。


ついに終わった……。


融合していた二本の剣が、元の姿へと戻り腕の中へ吸収された。


体中から、細胞達の悲鳴が聞こえてくる……。


俺の魂からは、もうミルフォスの気配は消えていた……。


これで、肉体も魂も無へと返るんだな……。


目の前のブラックホールが広がり始めている。


あれが俺の死か……。


終わったけど、誰にも褒めて貰えないな。


地上の人間は、誰も俺の事を覚えてないし……。


魂も無くなるから、師匠にも会えない……。


やってらんね~……。




でも、いいや……。


俺は運命に勝ったんだ。


おい! ジジィに若造!


お前等だけでも、地上に帰れよ。


俺は、ここで終りらしいからな。



『わしはもう、五千年頑張った! じゃから、引退じゃ!』


何だよそれ?


『わしの最後の我がままじゃ。最後までお前と共に!』


俺が最後の継承者かよ……。


誰にも語り継がれないぞ?


『知った事か!』


【私は、あなたの為だけの聖剣です】


おいおい……。


お前もかよ……。


【あなたが死ねば、どうせ私も滅びます!私には、選択肢なんてないんですよ!】


全く、お前ら馬鹿だろう……。


『最後まで憎まれ口か……』


俺は、何処まで行っても俺だ。



てかさ!


俺達! 運命ってやつに勝ったんだ!


『そうじゃな』


神様をぶっ殺してやった!


【痛快ですね】


だろ!


やってやったぜぇぇぇぇぇぇぇ!




心の底から、三人で笑った。


あまりにも可笑しくて……。


あんまりにも可笑し過ぎて……。


涙が出てきた……。


十年以上ぶりの涙は……。


うれし泣きだった。


俺はやり遂げた……。


これで、未練なく逝ける。


無へと返るんだ……。


びっくりするくらい最低で……。


最高の人生だった!





やったぜ! こんちくしょぉぉぉぉ!





宇宙ステーションは、そのまま拡大するブラックホールに呑みこまれた。

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