プロローグ
世界はちっぽけな人間にとって、無限と思えるほど広く感じる物です。
短い寿命しか持たない人間が、その全てを見る事は不可能に近いでしょう。
しかし、絶対に不可能とは言い切れません。
何故なら、人間とは世界の広さに負けないほど、無限の可能性を秘めた存在だからです。
これは、少し変わった一人の男性が、力任せに剣を振るうだけの話。
たったそれだけの物語。
その物語は、魔王やモンスターが存在し、それに人が剣や魔法で対抗している、ディウスと呼ばれている世界の、レーム大陸から始まります。
レーム大陸には、四つの国がありました。
魔王を頂点とした魔族達が支配する、バーゴ帝国。
商人や傭兵達が中心となっている、ニルフォ共和国。
魔術師が中心の工業が盛んな国、ルナリス。
魔物に対抗する騎士達を一番多く抱えた、アルティア聖王国。
魔族達と人間達による大きな戦争が終結を迎えて、三十年の月日が経過しました。
しかし、人間と魔族の間には遺恨が残っており、小競り合いが絶えず、レーム大陸からはきな臭さが消えません。
何時戦火が再燃してもおかしくない大陸の、アルティア聖王国に物語の主人公である十六歳の少年がいました。
その少年、レイ・シモンズはある事情からアルティア聖王国に代々続く貴族の当主に拾われました。
そして、当主の意向に沿い、国家を守る騎士になるべく王立アルティア学園に通っています。
本来ならば、彼は学園を卒業し、騎士としてその世界で普通の人生を全うするはずでした。
しかし、レイ・シモンズという少年は、言葉で表現するのが難しいほどにアホの子であり、本能に忠実な性格だったのです。
そんな彼は、いつしか自分だけの幸せを求めて、全力疾走をし始めてしまいます。
驚くほど残念な思考と、生まれつきの運のなさで、最悪の運命に巻き込まれていく彼が、最後にたどり着く場所と、手に入れる物とは……。




