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ゲーコイ!  作者: イズチ
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「アズ、ゲームやらないか?」


 突然そう声をかけてきたのは、腐れ縁というもので繋がってそうな俺の友達、里辺(さとべ) (あきら)だった。それにしても…コイツはまた変なこと言い始めたな。まあ、『この本読んでないか?!』とか言われてエロ本を突き出され、買い弁のジュースを吹き出した時よりはマシだが。あの時は確か懸賞に当たる確率を上げたいから、応募しないなら同じものを応募して俺にくれとかなんともくだらない理由で言われてたんだっけ。まったく、どうもコイツは何かあったらことあるごとに俺に頼む節がある。俺はそこら辺にいる代表的なヘタレなんだから、そういうことはしっかりしたヤツに頼めっつーの。と、言ったのは合計したら何回くらいになるのだろう?数えたくもないが。で、今回はゲームをやってるか?


「まあ、人並みにはしてると思うけど…。それがどうかしたか?」

「ん~。ゲームはゲームでもさ、ほら、Grue(グルー)やってる?」

「Grue?」


知ってるのは知ってる。やったことはないが。Grue…確か最近人気沸騰中のモバイルゲームサイトだっけ。あれができてからそこら中でケータイをいじっている人が増えた気がする。一応無料らしいが、結局ゲームをスムーズに進める為には課金しなければいけないようになってるらしい。世の中そんなに甘くないってことだな。


「やってないけど…。何で?」


そう言うと、明がぱあっと顔を輝かせた。…率直に言おう。嫌な予感しかしない。


「じゃあさ、登録してくれよ!」

「はあ!?」


いや、そんなことだろうとは思ってたけど!なんでそんなこと俺にいちいち頼むんだよ!


「今さ、キャンペーン中でアズが俺に紹介されたことになれば、紹介特典で貰えるポイントが2倍なんだよ!」

「だから毎回言ってるけど、そういうことは俺以外に頼め!何で俺なんだ!?」


と、明はふっふっふっ…と漫画だったらかけている眼鏡がキラーンと光りそうな明らかに不敵な笑みを浮かべた。ああ、今日俺厄日だわ。星座占い見てないけど最下位だったんじゃねーの?


「今まではさ、反応が面白いからやってたんだけど…今回は違うんだよ!」

「おい」


後の言葉はともかく、前の言葉が聞き捨てならないんだが。だが、明はそんな俺のことはまったく無視して、


「アズにぜひやって欲しいゲームがあるんだよ!」

「俺に?」

「おう!恋愛シュミレーションゲームなんだけどさ、課金対象が無い、イコール完璧無料!今、Grueで人気№1のゲームなんだよ!」

「へえ…」


よくわかんないが、今は恋愛シュミレーションゲームが人気なのか。画面の中に恋人がいちゃあ、そりゃ日本も少子化になるわな。


「で、今日やって来て明日感想聞かせろ」


ん~…ま、いっか。今日やって明に報告して、それからはほったらかしか退会すればいいだろ。


「いいぞ」

「よしっ!それなら早速俺が登録してやる!」

「あ、おいっ!」


明が俺のスクバに手を突っ込んでケータイを取り出しなにやらカチカチといじっている。ずっと一緒にいるからどこにケータイがあるかなんてお互いお見通しだ。…こんどから位置をこまめに変えよう。もし勝手に開けられたりしたらたまったもんじゃない。と、明が『登録完了しました』と表示された最近親に買ってもらったスマホの画面を俺に突きつけてきた。その表情は酷く満足げだ。


「登録完了!じゃあ帰るか!」

「あ、待てって!」


出て行こうとする明を俺は慌てて追いかけた。


 家に帰ってきてケータイを手にする。さて、感想も言わなきゃだしやってみるか。まあ、30分くらいやれば十分だろう。明によれば1番人気でホームに大きく表示されてるから問題ないとのこと。なんか自動でログインできるようになっているらしく、ご丁寧に俺の名前はアズとなって登録されていた。え、何でアズかって?…ああ、説明してなかったか。俺の名前は安須地(あずち) 祐太(ゆうた)。よって苗字の最初から2文字を取ってアズなのだ。いつの間にか明がそう呼んでいたのが浸透して、今では完全に俺のあだ名となっている。おそらく恋愛シュミレーションゲームらしきものを見つけてタッチしてみる。と、何やら髪の毛やら顔の形を選ぶ画面に出てきた。どうやらここは自分のアバターを作って、お望みの学年になりきって進行させていくものらしい。結構好き放題だから人気があるのかもしれないな。アバターは別にこんなんがいい、というのはなかったのでなるべく俺に似せた。幸い俺は平凡男子なのでかなり上手く似せることができた。学年は…現実と一緒で高2でいいかな。ここまでやると、自分のアバターが教室らしきところに移動した。俺の他に男子と女子が数人いる。これは普通に考えて話しかけなくちゃいけないパターンか…?とりあえず隣の女子をタッチすると、女子の顔がアップとなって映し出された。お、意外と可愛い…って当たり前か。ここ2次元だし。てか、可愛くない女子が出てくる恋愛ゲームなんてどこにあるんだよ。あ、でも最近はキモカワとかいうやつが流行ってるんだっけ…?と、画面におそらく女子の名前である『リナ』というものが顔の右下辺りに表示され、話すウインドウっぽいところに、『はじめまして!』と表示された。お、俺もなんかやんないと。でも、このゲームは一味違った。


「選択形式じゃない…てか自分で書くパターン?」


そこにはよくありそうな選択する項目など何1つ無く、ただ下に何か打てといわんとばかりにメールのようなコマンドが出てきていた。


「初めてだな、自分で打つタイプなんて…」


てか、認識とかできるのか?とか思いつつ、『はじめまして』と、返す。またリナが返してきた。


『アズって言うのね』

『お前はリナって言うんだな』

『うん。ホントはちょっと違って、これはあだ名なんだけどね』

『同じだ。俺もあだ名だし。てか、これが本名だったら嫌だ』

『ふふっ、そうだね』


なぜだ…。自然なことに違和感を覚える。だって考えてみろよ?コイツはあくまでゲームのプログラムのハズなんだ。何でこんなに自然に会話が成立してる?まさか明のヤツ…肝心なこと俺に教えてくれてないんじゃ?と、


『アズ?どうしたの、トイレ?』


お、いけね。こいつの存在忘れてた…。まあ、コイツに罪はないし。とりあえず答えてやらないと。


『悪い悪い、考えごとしてた』

『それだけならよかった』

『そういえばここには友達に無理矢理登録させられたんだけどさ、明日これやった感想言わなくちゃいけないんだ』

『無理矢理?大変だったね;』


…俺は2次元のヤツに同情されるほどアイツに酷い目に合わされてるのか。


『でも悪いヤツじゃない』

『仲良いんだね』

『バカ言うな。あんなの腐れ縁だ』

『ねえ、アズ』

『なんだ?』

『アズの学校、どこの学校?』


いよいよ怪しいな…。まさか俺何トカ詐欺とかやられそうになってるんじゃないか?まあどうせお互い顔もわかんないんだし…。高校名くらいいっか。


『春ヶ丘高校だ』

『春ヶ丘!?滅茶苦茶有名校じゃん!』

『そうか?腐れ縁のヤツが受けるっていうから一緒に受験しただけなんだけど』

『わかった、明日行くよ!校門前で待っててね!』

『はあ!?』


瞬間、リナがいなくなった。え、なんなのこれ、マジで。


「とりあえず…明日アイツをとっちめないとな」


俺はケータイの電源を切った。


 次の日の放課後。俺と明は昨日のことを話していた。


「で、どうだったゲームは?」

「お前…なんか隠してるだろ?自然に話せるキャラなんておかしすぎる」

「やっぱバレちゃった?あれな、実は…」


『自分をアバターにして恋愛ゲーム風にコミュニケーションをとれるサービスなんだ♪』


「…なんだ♪じゃねーよ…」

「ごめんごめん、て、アズ?」

「どうするんだよ!?アイツに俺高校名教えたぞ?!」

「え、ちょっと。アイツが誰かは知んないけどお互い顔知らないから大丈夫だって!」


あ、そっか。掴んでいた明の服の襟を解放する。と、明がニヤニヤした目をこちらに向ける。正直に言うとキモい。


「いや、俺が悪かったから。そんな冷たい目しないで?」

「うるせー。で、何が言いたい?」

「いや、勘違いしてたにしろアズがどんな子と喋ってたのかな~って」

「勘違いしてたのはお前のせいだろ…いたって普通の元気な女子高生って感じだったけど?あとここが有名校だって教えてもらった」

「ぶっ…知らなかったんすか、安須地さん」

「だってお前がここ受けるって言って、母さんもそれならここ受けろって言ったから受けただけだし」

「…神様は平等だね、顔は平凡でも頭だけは良いもんな、アズ」

「黙れ残念なイケメン」

「え、褒めてくれてる?」

「お前褒めてくれるヤツなんて世界中どこ探してもいねーよ」


そんな冗談みたいなやり取りをしていると、不意に外が騒がしくなってきた。なんだ?不意に女子の話し声が聞こえた。


「何、あのリムジン?誰のお迎え?」

「なんかアズって子に会いに来たらしいよ?」

「アズ?誰?」

「……御呼ばれだよ、アズ」

「いや、俺じゃない。俺のドッペルゲンガーだ」

「いや、現実逃避しないで」

「どうしてこうなったあぁぁぁぁぁぁぁ!」


頭を抱える俺に、明は楽しそうに笑う。おい、元はといえばお前のせいだからな!?俺の怒気を含んだ視線に気づいたのか、明は笑いながらも、ごめんと言って、


「まあまあ、とりあえず行ってみよーよ」

「…そうだな」


このまま校門前にリムジンが違法駐車してあってても問題ものだし。


「責任お前にもあるんだしついて来いよ」

「はいはーい」


俺たちは校門へ向かった。


 校門前に『え、何100万?やだなあ、億ですよ、億!』といいたげなリムジンは置いてあった。その前に昨日見たアバターそっくりな明るい茶髪で長い髪の――昔のあの子を髣髴させるような人物が立っていた。俺は人物に近づき、


「あの…もしかしてリナ?」


俺がそう声をかけると、その人物は目を輝かせて俺に抱きつい…えっ?!


「アズ!間違いなくアズね!リナよ!」

「お、落ち着けっ!わかったから」

「アズの方が落ち着けよ」

「お前は黙っとけ!」

「あ、その人が腐れ縁?」

「え、2人の間で一体どんな扱いだったの、俺?」

「とりあえず…離れてくれ」

「うん」


リナは笑いながら俺から離れる。と、とりあえず自己紹介…か?


「改めて。俺はアズこと安須地 祐太。コイツが昨日言ってた里辺 明」

「じゃあ、私も言わないとね!リナこと日坂院(ひざかいん) 梨依奈(りいな)です!あ、ちなみに…」


『多分予想通りだと思うけど、日坂院株式会社の令嬢です!』


…俺は笑顔が引きつっていなかっただろうか?






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