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氷の様式美に泥をぶちまけろ!  作者: velvetcondor guild


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冬のソウルの朝。

まだ陽が斜めに差し込む時間帯。


ユミのワンルームに、

地響きのような足音が迫る。


ヨギョン

「ユミせんせ!! 起きてくださいってば!!

今日だけはマジで、ガチで、人生レベルで大変なんですってば!!」


電気ストーブの前。

原稿用紙とノートPCに埋もれたユミは、

パーカーを布団代わりにして“死んだフリ”をしていた。


ユミ

「……まだ締め切りじゃないのに……

作家の唯一の防御手段である“現実逃避型睡眠”を剥がすとは……」


ヨギョン

「そんなこと言ってる場合じゃないんですよ!!

今日のは本当にヤバいんです!!」


ユミ

「前置きが長いときはロクでもない。

“結論”から言いなさい。“結”から」


ヨギョンは雑誌を机に叩きつける。


表紙には金色の文字。


『凱旋帰国!

ハ・ジュニ作家――ハリウッド帰りの天才脚本家、韓国ドラマ界参戦!

新作「眠たい目に、愛を込めて」制作決定!』


ユミの眠気が吹き飛ぶ。


ユミ

「……ハ・ジュニ」


大学時代、

原稿用紙の枚数を競い合い、

文学論で殴り合い、

そして――

理由も告げずに彼女を振って消えた男。


ヨギョン

「しかもタイトル、“眠たい目”ですよ!?

絶対ユミせんせのこと思い出してつけたでしょ!!」


ユミ

「褒めてるの? 怒ってるの?」


ヨギョン

「両方です!!」


さらにヨギョンは続報を出す。


『ハリウッド帰り × スランプ中の新人賞作家

奇跡のコラボドラマ制作決定!』


ユミ

「……スランプ中って全国ネットで言うなぁぁ!!」


ヨギョン

「でも“泥臭いリアリズムが持ち味”って、

めちゃくちゃ当たってますよね?」


ユミ

「合ってるけど!! 私以外が言うな!!」


ヨギョンはふと真剣な声になる。


「ユミせんせの文章、

わたし、子どもの頃から読んでたんですよ。

“傷を見せてくれる作家は、一生もん”って、

ばあちゃんが言ってました」


ユミは黙って聞く。


ヨギョン

「だからこそ!!

“元カレだから出ません”なんて理由で逃げるの、

絶対許しません!!」


ユミ

「誰が逃げるって言ったのよ」


ヨギョン

「……え?」


ユミ

「行くわよ。

仕事して、ギャラもらって、

ついでにあの男の鼻をへし折ってくる」


新品の眼鏡を取り出す。


ユミ

「まずは戦闘用眼鏡に変える」


ヨギョン

「そこ!?

いや分かりますけど!!」


そして、ヨギョンは爆弾を落とす。


「初顔合わせ、

ソウルの高級ホテルのスカイラウンジで、

“制作発表パーティー”です。

全国ネット生中継です。

ハ・ジュニ氏も来ます。

スポンサー様も来ます。

修羅場です!!」


ユミ

「ヨギョン、スマホ窓から投げるわよ」


ヨギョン

「ダメです!! もう“参加します”って送ったので!!」


さらに追い打ち。


「今回のドラマ、

アメリカとの共同制作らしいですよ。

ユミせんせの“泥のリアリズム”、

世界に届くかもしれません」


その言葉だけは、

ユミの胸に静かに刺さった。


ユミ

「……いいわ。

行ってやろうじゃないの。

あの男の“氷の様式美”の上に、

泥をぶちまけてやる」


ヨギョン

「最高です!!」


冬のソウルの空気が、

少しだけ温かくなる。


静かだったユミの生活に、

いま、確かに物語が動き始めた。


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