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適応教室指導員 ポン&カン ~「助けて」と言えなかった親子のための教室~ ここは孤独と向き合う最前線です  作者: さとちゃんペッ!


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第7話 ポン先生、余計なことしないでください

ご覧いただきありがとうございます!

謹んでお届けします。

インターホンが鳴った。ミカさんからだ。

「適応教室を見たいという親子がきました。カン先生お願いします」

「はーい、サエさんですね。今行きます!」


会議室に行くとフリースクールでよく見かけるタイプの親子がいた。

緊張した表情で親の陰に隠れる女の子だった。

「サエさん、そしてお母さん。それでは一緒に教室に行きましょう」

親子をミカさんから引き継いだ。


女の子はサエさん。まだまだ学校に来るには早すぎるような固い表情だった。経験者だからわかる。指導員による家庭訪問の支援が必要な時期だと思った。これまで何度も電話で話をしてきたお母さんは、期待でいっぱいの明るい顔をしていた。


「まあ、すてきな教室ね。適応教室ってこんなにすてきな場所なのね」

お母さんは嬉しくて仕方がないようだ。

壁の掲示物を指さして、「ねえ、さえ、これ見て。かわいいわね。いいところね」としきりに話しかけている。一方サエさんは、ちらりとさえ見ようとしない。


わたしは、思い切って話しかけた。

「ねえ、サエさん。わたしは黒川カンナです。カンちゃんって呼んでほしいな」

「……」

「サエさん、いつでもここにきていいのよ。静かで、気持ちよい居場所を一緒につくりましょう。待っているよ。……でも、ここに来るのが難しければ、ほかにも学習をすすめる方法があるの。サエさんの家に来てくれる先生。どうかな? 今度紹介したいんだけど、どう?」

サエさんは、わたしの目を不安そうに見た。


その時だった。

ポン先生が大声で「おお、見学者かな? こんにちはー!」と言った。

サエさんがびくっとする。


「ポン先生、静かにしてもらっていいですか?! ここは昭和じゃないんで!!」

「なんだよ! 挨拶は元気に大きな声でするもんだ。お前、名前は?」

「お前って……。答えなくていいよ。サエさん」

「ん? サエっていうのか? サエさん!」

「……」

「返事はどうした? 呼ばれたら元気に『はい』と返事をする。これは人間社会の基本の基本」

「はあ?! ポン先生やめてあげて。さえさん、気にしないで。……あの人は昭和の人で、一回死んで転生したの。昭和のもろもろをひきずってきてるだけ、だから気にしないで。昭和の知識をもって転生しているから。もし、いいところがあったらそこだけもらおう。でも今は無視していい!」


サエさんが母親の後ろに隠れた。

母親と目が合った。母親が立ち上がった。

「すみません。用事を思い出しました。サエちゃん、帰りますよ」

二人は後ろを振り返ることなく出て行った。


わたしはホンダ先生を冷たい目で見た。

そして、深呼吸して……言ってやった。


「あーあ、せっかく一人目の入室者をゲットできたと思ったのに」

「いや、あいつ、挨拶も返事もできないなんて躾がなっとらん。親の顔が見たいよ」

「だから、ここに来るんでしょ。挨拶も返事も大きな声でできる子は、ここには来ません」

「だから、教えてやろうと思って」

「余計なことをして……、ミカさんが電話を受けて、こちらからも電話して、やっと今日ここまで来てくれたんですよ。これまでの私の努力を挨拶と返事指導でぶち壊したのはポン先生、あなたです。もう、いいです。邪魔しないでください」

わたしは、怒っていた。壁に向かって座った。


「あああ、そうだったの? ごめんよ。ごめん。もう、面談中は何も言わないよ」

ポンはおろおろ歩き回る。時計の針は進まない。ふたりきりの教室。気まずい時間が永遠かのようにゆっくり流れる。


「たまんねえな。おい、お前、機嫌直せよ」

わたしは何も言わない。壁を見つめた。

「9時半か、これから4時半までずっとこれか? 地獄だなこりゃ」

ポンは松葉杖で歩き回っている


「忙しすぎる教頭職は辛かったが、この何もしない時間を過ごすってのも地獄だな。ああ、仕事が欲しい。適応教室に誰か入らないかなあ」

「だから、不登校のお子さんに電話をかけました。なかなか出てくれないんです。3回目にやっと出てくれて、適応教室の説明を1時間かけてお話ししました。そんな電話を毎日して、やっと『サエちゃんが行ってもいいって言ってます』にたどり着いて今日を迎えました。それなのに、ポン先生はぶち壊しました。サエさんは入室一号者になるはずの子でした。以上!」


「自分の子を、他人の前でサエちゃんと呼ぶか? 普通呼ばないよな。親が非常識だな。今度来たら指導してやらなくちゃな」

「ああああああああ、余計なことしないでください! だいたい、わたしやサエさんをお前呼ばわりするところから間違ってませんか? 指導してやらなくちゃならないのは、ポン先生、あんたです!! だいたい、わたしの学校生活はあんたのせいで壊れたんです!」

わたしはポン先生に初めてぶちまけた。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます!

いかがでしたか?


感想をいただけるとすごく励みになります。

次回もどうぞお楽しみに!


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歴史部門:なろう日間2位 週間2位 月間2位 四半期2位 (1位はとれない)

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