第18話 フリースクール 満面の笑顔
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謹んでお届けします。
9月、夏休みは終わった。だけど、今年はヒナタが学校に行かないから、夏休みも新学期もない。
他の子どもたちの学校生活は始まったのだろう。
午前8時、わたし、山下涼子はヒナタのタブレットでオンライン授業をつないだ。
いつもカンちゃんがいる。
「山下さん、おはようございます。ヒナタさん元気ですか?」
声をかけてくれる。
「おはようございます。ヒナタはまだ寝ているんですけど、今日はフリースクールに連れて行ってみようかなって思っているんです」
「そうなんですか。それはよかった。
気を付けていってらっしゃい」
「はい。ありがとう」
「……よかったら、東西小の適応教室にいらっしゃいませんか?」
わたしはもう聞いていなかった。カンちゃんの声を背中に聞いて、今やるべきことをやる。
ヒナタを起こす。
「ヒナタ、起きて。フリースクールに行く約束でしょ」
そうは言ったものの、今のヒナタは昼夜逆転で、朝はとうてい起きられない。
何度も起こしたが、目覚めたのは11時半。
ヒナタは久しぶりにパジャマを脱いだ。
学校に行くときの服装に着替えると、
不登校児には見えない
フリースクールについたのは、12時半。
電話では、「午前中に行く」と伝えていたのに。
いい加減な母親だと思われそうで嫌だなと思った。
看板には「森の秘密基地」と書かれていた。
その施設に一歩入ると、木の香りがした。
入り口の紹介文を読むと、
この地域で採れた木材で作られているとのこと。
わたしは、木の香りを胸いっぱいに吸い込んだ。
ここならヒナタも落ち着くだろう。
大きな木の扉を押すと、かわいいキャラクターのエプロンを付けたスタッフがふたり待ち構えていた。
「いらっしゃい、ヒナタさん。よく来ましたね」
ヒナタは歓迎されている。
「お母さん、初日は30分にしましょう。お子さんも疲れるでしょうから。
お母さんはこちらでアンケートを記入してくださいね」
ヒナタはきょろきょろしている。
「ヒナタさん、何が好き?」
「ゲーム」
「ゲームはおうちでやってね。ここでは、いろいろな遊びができるのよ。製作活動もできるのよ。ほら、けん玉はどうかな?」
ヒナタはけん玉を手渡された。
ヒナタがけん玉を動かすたびにスタッフが大げさなリアクションを見せる。
「おしい!」
「もうちょっと」
「やったー! すごいね、ヒナタさん。もしかしたらけん玉名人かもよ」
辺りを見回したが、他の子どもの姿はない。
ママはスタッフに付き添われて施設内を歩いた。
パーテーションの中に隠れるように座っている子供がいた。
やはりスタッフが大げさに褒めていた。
「すごーい。できるじゃない! さすがだねー!」
おおげさな褒め言葉が、何だか悲しく思えてしまう。何でもないことなのに、そんなに褒めなくても。
一周回って入り口に戻った。
大きな木のテーブルがある。
そこに座って周りを見た。
けん玉、積み木、段ボール工作、本、どんぐりや松ぼっくりなど自然素材が取り揃えられた製作コーナー。
カタン、スタッフが正面に座った。
「お母さん、こちらが料金表になります」
「お金がかかるんですか?」
「森の秘密基地は有料のサービスなんですよ。
たくさんのお子さんや保護者さまに喜ばれています」
「わかりました。帰って夫とも相談してみます」
パンフレットを受け取った。
「お母さん、無理しないでね。お母さんが倒れちゃうともう大変ですから。発達障害とは長い付き合いになりますよ」
「発達障害?」
……発達障害と言われた。
「あ、いえいえ、まだ検査は受けていらっしゃらないのでしたね。ほら、お母さんが明るい気持ちで。いつでも森の秘密基地を頼ってくださいね」
……いつものあの生暖かいセリフを浴びせられた。
もやもやした気持ちが襲い掛かる。
「また来てねーー、ヒナタさーーーん」
ヒナタは満面の笑顔のスタッフに、おおげさにハグされていた。
大きく手を振って送り出された。
明るく健康的なスタッフさんを見るのが疲れる。
そんな気分になるのは、やはり私が病んでいるからだろうか。
それと……やっぱりプロの目から見ると、
ヒナタは発達障害なのだろうか。薬を飲めば治るのだろうか。
薬を飲んで、学校に行って大人しくしてくれるのなら病院に今すぐ行きたい。
せっかくそう思えたのに、4か月待ちだなんて、ほんといらいらする。
ヒナタの背中はしょぼくれていた。
追いかけて話しかけた。
「ヒナタ、どうだった?」
「なんか違う」
「そうだよね」
でも、ヒナタは友だちと遊びたいはず。
「友だち、できそう?」
「ううん、あそこにいた子、最後まで一言もしゃべらなかったよ。スタッフさんがいろいろ言うのに黙ってる。ぼくの行くところじゃないかも。ここは違うよ」
商店街を通った。
帰りにハンバーガーを買って帰ろう。
いきなり、ヒナタが歩道にはみ出していた段ボール箱を思い切り蹴った。
ドラッグストアのスタッフが出てきて叫んだ。
「何するんだ、お前! ちょっと来い!」
ヒナタは駆け出した。
わたしは「すみません。すみません。すみません」と言って頭を下げて、ヒナタを追った。
最悪。地獄。もう、いやあああ!!」
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