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適応教室指導員 ポン&カン ~「助けて」と言えなかった親子のための教室~ ここは孤独と向き合う最前線です  作者: さとちゃんペッ!


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15/22

第15話 パート辞めゲーム課金せがまれ。相談しても糠に釘 

ご覧いただきありがとうございます!

謹んでお届けします。

教頭先生が補欠指導に入る3年2組。教頭先生はすぐに所用で席を外すから、教員免許もないのにわたしが見守っている。だけど、ポン先生が手の空いているときは指導してくれるから、私語はない。3年2組はずいぶんと改善されてきた。ヒナタくんは、休んでいる。


15時、帰ろうとしたら、ヒナタママ、山下涼子さんが来校した。正確に言えば、指導員であるわたしの勤務時間は14時半だ。でも、そんなの無理。

わたしは喜んで山下さんと面談した。


「カンナ先生! 聞いてください。

わたしのスマホは充電コードにつながって、リビングにずっと置きっぱなしでした。

今日の10時でした。スマホから着信音が鳴り響いたんです。わたしは気づきました。


OSオフィス!!

わたしは、一日4時間勤務していたパートのことを思い出したんです。勤務を入れていたことをすっかり忘れていたんです。


ヒナタが休み始めて、欠勤報告をしていたんですけど、最近はいろいろあって、それすら忘れていたんです。


応答ボタンをおそるおそる押しました。

「はい、山下です」

「山下さん! やっと出たわね。何回も電話していますよ。無断欠勤が続いているから」

「すみません。子どもの体調が悪くて」

「せめて連絡をしてくださいと言いましたよね!」

「なんだか、毎日すごく大変で、うっかりしていました」

「社会人としての最低のルールも守れないようでは、うちのオフィスで勤務していただくことは難しいです。本日限りで退職ということにしていただいてよろしいですか?!」

「え? 待ってください。これからお金も必要なので、ぜひ引き続き……」

「本日出勤してください。そして、私物をお引き取りください。退職の書類も書いていただきます!!」

「え? 本日って、それは難しいです。子どもを置いて外出できないんです」

「わかりました。書類は郵送します。私物はこちらで処分してもよろしいですか?」

「ええ? 待ってください。ごめんなさい。辞めたくないんです」

電話は切れてしまった。


せっかくみつけたよい環境の職場。みんないい人だったんです。

時給もそれなりによかったんです。

だけど、ヒナタが家にいる限り、何をしでかすかわからないので、外出できないんです。


カンナ先生、仕事は辞めるしかないですよね」


「うーん。学校に行かない子どもがいるご家庭では、やはり誰かが家にいた方が良いかと思います。あ、これは私の考えですけど。あの、フリースクールなどに通えるようになれば、またお仕事もできるかなって思います」


「そうですよね。それで、ヒナタの部屋をのぞいてみたんです。夜遅くまでゲームをしていたようで、モニターをつけっぱなしのまま寝ていました。今なら外出できるかも……って。

わたしは急ぎました。スマホをバッグに突っ込んで、着古したTシャツを脱ぎ、キレイ目シャツに着替えました。


職場はいつも通りだったんです。

でも、上司の松坂さんは、いつもより口数が少なかった。


退職届などの書類を受け取り、仕方なく記入しました。

私物をはすでにまとめてありました。

松坂さんに挨拶した。

「子どもが登校するようになったら、またここで働きたいんです。

よろしくお願いします」

「不登校なの?」

「はい、そんな感じです」

「家で何しているの?」

「ゲームしてます」

「そうなんだ。大変ね」



「……そして、わがまま放題。

……ハンバーガーしか食べないとか言うんです」

「まあ」

「そして、ゲームに課金してとか言うし」

「……」

「最近は部屋にこもったきり、出てこなくて。父親大嫌いで」

「……」

「すぐに癇癪を起こすんです。

窓開けて大声出して、近所迷惑になってるんです」

「まあ……」

「近所の人が怒鳴り込んできて……

もう、いろいろ、大変なんです」

話していたら涙が出て来ました。

すると、松坂さんは手を握って来たんです。

「そうだったの。

……あなたも戦っているのね。

でも、冷たいようだけど無断欠勤はこちらも迷惑。

あなたを採用することは2度とないわ。

でも、相談窓口を紹介してあげる。待って」

涙を拭き、待った。


松坂さんはパンフレットを持ってきました。

「山下さん、読んでみて」

「子どもの困りごと相談?

市役所青少年相談室?」

「今すぐここに行ってみたらどうかしら」


その足で、市役所に行きました。

青少年課相談室というところを探してたどりついた。

こちらでお待ちくださいと椅子をすすめられた。

担当の人をしばらく待った。

キューという椅子を動かす音がしたので顔をあげた。

50代60代くらいの女性が名刺を差し出した。

「お待たせしました。品川です」


「あの、ヒナタが……」

涙があふれました。

たどたどしい話かできなかったんです。

話が学校の事と家の事とママ友の事が、ごっちゃになって

話している自分でも何が何だかわからなくなってきた。

ただ、黙って聞いてくれたんです。

アドバイスなどは一切なかった。

そして、次回の予約をとりました。


「お母さんがあまり抱え込まないでね。

何か自分の趣味でも見つけて息抜きしてね」

この最後の一言は、余計なお世話だった。

藁にもすがりたい状態なのに、全くわかっていない。それで頭にきて、言ったんです。


「何もしてくれないんですか?」

品川さんはにっこり笑って言った。

「次回、またゆっくり話を聞きますよ」


急いで帰らないと、ヒナタが暴れているかもしれない。

ゆっくり外出するなんて二度とできないのに、わかってもらえないって涙が止まりませんでした。


ごめんなさいカンナ先生。こんな話して。カンナ先生も苦労しているって聞いて、ご迷惑かと思ったけど、カンナ先生に会いたくて……。


涙をぬぐうことも忘れて、山下さんはため息をついた。

ティッシュペーパーの箱を差し出した。

1枚とって涙をふいた。


「カンナ先生、わたし、わかったんです。あの雰囲気。あの相談員、元学校の先生だと思うんです。

学校の担任が辞めたことを話したから、私のことモンスターペアレントでクレーマーだと思っている? 解決策を提示してくれることはなかった。

悔しいよ。

とりあえず、ショップに寄って、ハンバーガーとポテトを買って家に帰ったんです。

ヒナタはまだ寝ていました。寝ている間は騒がないのでほっとできるんです。


今のうちだと思って、ネットで調べました。

子どもの困りごと相談の電話番号があったんです。

ここなら、なにかアドバイスしてくれるかもしれない。

そう思って、電話をかけたんです。

学校にクレームを入れて担任が辞めた話は、意図的にしなかった。

ヒナタの状態、パパが話を聞いてくれないなどの愚痴になった。

「発達障害と言われたことはありますか?」

そう聞かれたので、「ありません」と答えた。

ここはプライドがある。

それなのに、病院を勧められた。児童精神科! 

電話番号を教えてくれた。

あの日、若井先生が言っていたことじゃない。

「発達障害だから、病院で薬をもらった方がいい」って。

パパの怒りに火が付いた言葉だ。

若井先生の言うとおりだったってこと?

悔しい。悔しいけど、もうここしか望みはない。


すごく緊張し、何度も立ち止まり、やっと電話をした。

「東西総合病院です」

つながってしまった。ドキドキする。

「あの、子供のことで、児童精神科に相談があるのですが」

「お待ちください。担当者と変わります」

「児童精神科の受付です」

ずっと心臓が飛び出す思い。

「今からですと、ご予約は4か月後になりますが、それでもよろしければ予約します」

「4か月? 今すぐ、今日でも診て欲しいんですけど」

「申し訳ございません。当病院では、待っている方が多いので、最低4カ月お待ちいただくことになります」

「わかりました。……他を当たります」

他の病院では受付の電話が混んでいるか、

「時間をおいておかけ直しください」というメッセージが流れた。


ネットで探した他の相談窓口に電話した。

「不登校のお子さんでしたら、フリースクールという居場所もありますよ」

いくつか紹介された。そして、お決まりのあのセリフを聞いた。

「お母さんが倒れないように。無理をしないでくださいね。あまり思い詰めないように。何か気分転換もしてみてくださいね」

余計なお世話だ!!!


ネットでフリースクールの詳細を調べているとヒナタが起きて来た。

ハンバーガーを食べ始めたので、声をかけた。

「フリースクールっていうのがあるらしいよ。行ってみない? 

さすがに友達と遊びたいでしょう」

珍しく素直に「だね」といったんです。


何も解決策がなくって、ごめんなさい。上司と相談してみます。ヒナタさんのこと。


ここの学校にはもうヒナタは来させられないと思っています。うまくいくはずがないです。わたしがカンナ先生に会いたいだけ。カンナ先生しか、わたしを理解してくれる人はいません。この地球上で、ただ一人の理解者なんです。


山下さんは泣いた。


わたしは、南山教頭をやっとつかまえた。

「教頭先生、最近ヒナタさんオンライン授業つなげていないんです」

「そうなの?」

「ヒナタさんこそ、適応教室にくるべき子どもじゃないでしょうか」

「ん?! そうね。その通りだわ」

「電話をして明日の放課後にでも……」

「教頭先生! 保護者さんから電話です。2年2組ユウさんの」

教頭先生は忙しすぎるようだ。

でも、ヒナタさんが心配。

保護者に電話ができるのは、教員免許をもっている教諭職だ。

わたしは無力だなあと感じた。


ポン先生は、素早く搬送されたので速やかに治療ができ、

明日にも退院できるそうだ。

でも、すぐに出勤はできないだろう。

こんなにストレスのある職場では体によくない。

でも、早く出勤して欲しいなあ。

カンナはポン先生の出退勤カードを見た。

ずっと「退勤」のままになっている。

寂しいなあ……。




最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます!

いかがでしたか?


感想をいただけるとすごく励みになります。

次回もどうぞお楽しみに!


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