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適応教室指導員 ポン&カン ~「助けて」と言えなかった親子のための教室~ ここは孤独と向き合う最前線です  作者: さとちゃんペッ!


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12/22

第12話  ヒナタママ、カナママに呼ばれる

ご覧いただきありがとうございます!

謹んでお届けします。

「すごい車ですね。こんな車、初めて乗ります」

わたしは、何を話したらいいのかわからなくて、そんなことを口走り、ああ失敗したなと思った。カナママは何も言わずに運転する。学校を通り越し、郊外に出た。


◇◆◇

わたし、山下涼子は郊外のファミレスにいる。カナの母親に誘われて、しぶしぶここに来た。ヒナタが帰宅し、カナちゃんたちが家に来た。

カンナ先生という指導員も一緒に。


そして、AIで偽造したようなフェイク動画らしきものを見せられた。

今も信じていない。ヒナタがそんな授業妨害をしているなんて。ヒナタをみんなからの誹謗中傷から守りたくて、こんなところにまで来た。


ファミレスの店員さんに案内されて、カナの母親、そして、指導員のカンナ先生もきた。みんなヒナタだけを悪者にしたいみたいね。その手にはのらないわ。


「山下さん、こんにちは」

「こんにちは」

「幼稚園での役員会の話し合いで何度も来たファミレス。楽しかった思い出がいっぱいね」

そう言いながら、カナの母親の表情は,これまで見たことがないほど厳しかった。

「ここでの支払いはわたしがします。カンナ先生も山下さんも何でも好きな物を頼んでください」

「いえ、自分の分は自分で支払いしますので、大丈夫です」

わたしは急いで言った。

カンナ先生も「公務員ですから、自分の分は自分で払います」と言った。


「いいのよ。黒川先生。勤務時間が終わっているので付き合わせてしまって、申し訳ないと思っているの。甘いものでもいかが? もちろんドリンクバーは利用されますよね」


カナの母親はパネルを操作して、注文したようだ。

わたしは軽く震えていた。

「いえ、今日は自分で支払います。それと、ドリンクバーだけで結構です。ヒナタがみんなに責められて可哀そうだから来たんですから」


ふたりはパネルで注文し、紅茶を取ってきた。二人が戻ってわたしも紅茶を取りに行った。


それから、沈黙が続いた。紅茶は飲んだ気がしない。

カナの母親が先に口を開いた。

「あなたは……ヒナタさんが学校で羽目を外して、授業にならないって知っているのですか?」

「すみません。若井先生に聞いていたけど、そこまでひどいとは思わなくて。カナちゃんが動画を見せてくれたので、見せていただいたけど……。でも、今はAIでフェイク動画が作れるらしいです。わたしだけはヒナタの味方でいたいと思います」

「フェイク動画だとおもっていらっしゃる。カンナ先生、フェイク動画ですって、あお話にならないわね」

「知ったのは、ほんの1時間前なので、ヒナタにはまだ会っていなくって……確かめてみたいことには……」

カナママは深いため息をついた。


「若井先生、辞めてしまいましたね」

「ええ」

「代わりの先生が決まらないらしいですよ。だから、忙しい教頭先生が仕事の合間に入ってくださっている」

「ええ」

「それについて、ヒナタさんのお父様・お母様はどう責任を取ろうと思われているんですか。3年2組32人の学習が滞っているんですよ。はっきり言ってヒナタさんのせいで」

「責任と言われても、夫にはまだ話していないし、今夜話します」



「カナの塾、月例テストがあるの。他のどのクラスよりもうんと遅れていて、

テストの成績下がったの。本人も悔しくて泣いている。明日から、学校休んで勉強するって言ってます。校長先生に相談したら、オンライン授業は出席扱いにするそうです。タブレットで教室とつないで、授業を受けることになります。ヒナタさんも、そうなさったらどうかしら?」

「学校を休ませるのはちょっと……」


カナの母親はまた紅茶を飲んだ。落ち着こうと努力しているようだ。そして、思い切ったように顔をあげた。

「見て欲しいものがあるんですけど」

「はい」

「これは、みなさんの同意を得たので、あなたにお見せするものです。逆恨みなどなさらないでね」

カナママはスマホの画面を見せた。

わたしはそのスマホを手に取った。


グループチャットの画面だと気づくのに少しかかった。

「お疲れさま(泣)今日もユウが荒れて大変。1時間目から4時間目まで自習と言う名の休み時間で、ヒナタは相変わらずうるさいし、もうやだって」

「おつかれさま(泣)アイリもそれ。明日から行かないって。泣いていたけど塾に送って行った、塾の友達と話してすっきりしたみたい」

「ヒナタママ知ってるのかしら」

「知らないんじゃない?」

「知っていて放置なら許せない」

「みんなで押しかけて教える?」

「お疲れ様(泣)ショウタが荒れてる。1組の算数がどんどん進んで、テストも返してもらったのに、ぼくたちは今日もうるさいヒナタをにらむだけだったって。せめてヒナタが休んでくれたら、自習できるから勉強できるのにって」

「先生が来れないのは仕方ない。ヒナタ両親の犯した罪だから。教頭先生はがんばってくれている」

「若井先生を辞めさせたモンスターペアレンツは山下ヒナタの両親」

「それ。モンペヒナタ親」

「子どもの塾代、家庭教師代、請求しようか」

「みんな、若井先生が辞めてから勉強がヤバいって気づいて、塾に入れたものね」

「カナちゃんの家庭教師もそこから始めたものね。これは山下ヒナタ家の犯罪でしょう」

「請求したら、目が覚めるかも。学校休ませてくれるかも」


まだまだ続いている。

これ以上読めなかった。


「あ、もう十分です」


心臓がばくばくする。

「カンナ先生も見ていただけますか?」

カナの母親がカンナ先生に手渡した。


カンナ先生は少し読むと、苦しそうに顔をゆがめ、冷めた紅茶を一気に飲んだ。そして、スマホをカナの母親に帰した。


「いいのよ、カンナ先生、最後までもっともっとご覧になって」

「いえ、もう」

沈黙が流れた。わたしの心臓はバクバクが止まらない。汗が噴き出す。涙が流れる。


「山下さん」

「あ、はい」

涙で顔はぐちゃぐちゃだった。カナの母親が封筒を差し出した。

「家庭教師代。請求しますね。みんなも塾代を請求してくると思う」

「そんな……」

「それと、当然、ヒナタさんは明日から休ませてくれますよね。ママチャット見たでしょ。いくら鈍感なあなたでも、わかりますよね。カナの撮った動画も見たんでしょ。フェイク動画なんかじゃありません。今日撮ったばかりのほやほやの現実です。

まさかそれを知って、何も変わらないって、ないですよね」


わたしは目をぎゅっとつぶり、うなずいた。そして、封筒を受け取った。

「ヒナタと話して、夫と相談します」

「クラスの子供たち、そしてその両親、祖父母、みんなヒナタさんに怒っている。

そして、ご両親の対応を怒っている。若井先生を辞めさせたのは、あなたたちの間違いだった」


「ヒナタが、ぼくだけ叱られるっていうから」

「叱られて当然のことをしていたのだから、『叱ってくださってありがとうございます、若井先生』と言うべきじゃなかったの?」

「あの時は、ヒナタにも悪いところがあるとはわかっていなくって。ヒナタが『先生が悪い』というから」

「早くお知らせすればよかったわね。これは4月2週目から、ママチャットで共通認識されていたことなんですけどね。……あなた、友だちいないの?」


わたしは目を見開いた。

目の焦点が合わない。音が何も聞こえない。頭の中がパニックになったようだ。請求書の入った封筒をぎゅっと握りつぶした。


「友だちいないの?」


カナの母親は、もう一度言った。その時、カナの母親のスマホが震えた。

「ちょっと失礼」

あの人は、立ち上がって外に出て行った。


「カンナ先生、すみません。一番いやな言葉を言われてしまいました。中学・高校と、わたし、このセリフが一番怖かったんです。だから、無理にでも誰かと友だちごっこをしていたんです。


一緒に行動する友だちはいたんですけど、友だちと言える人はいなかった。


だけど、今、ヒナタがこんな大変なことになっているってこと、誰も教えてくれなかった。そのことがショックです。チャットのグループに入れてもらえなかったのもショック。つまり、わたしには友だちがいない。ヒナタのせいで、外されているんでしょうか?」

「いえ、わたしにはわかりません」


「カンナ先生、私はダメな発言などしませんでしたよね。後日、裁判になったら証言してくださいね」

「裁判、そのために連れてこられたのでしょうか」

カンナ先生もいっそう暗い表情になった。


◆◆◆

「カンナ先生帰りましょう。会計は済みました」

わたし、黒川カンナは、カナリンのハンカチを握りしめ、千円札を取り出したが、受け取ってもらえなかった。

「300円の紅茶をご馳走したことは、わたしから校長先生に報告させていただきます。安心なさって、カンナ先生」


それからカナの母親の高級車で学校まで送ってもらった。校長室で一通り話をして帰って行った。


「すげえ車だなあ。乗ってみたい」


そんなことを言うポンは本当にあんぽんたんだ。





最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます!

いかがでしたか?


感想をいただけるとすごく励みになります。

次回もどうぞお楽しみに!


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歴史部門:なろう日間2位 週間2位 月間2位 四半期2位 (1位はとれない)

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