第6話 教会への境界
烈、ミリア、ルナの三人は貧民街から抜け出そうとしていた。
神願の試練「デザイアル」を目指し、大いなる輝石「シャルト」を手に入れるため、情報が必要だった。烈はボロボロのジャケットを羽織り、傷だらけの腕をさすった。
「さてと、関所を越えるぞ。」
烈がそう言うと
突然ミリアが、ひょいっとでてくる。
「ちょっとレツ!、私の家に寄っていって!ここの近くだから」
そういえば忘れていた。昨日がとてつもない日だったから。
ミリア自身も忘れかけていたようだった。
異世界に転生して、ミリアと出会い、ゼノに会って「デザイアル」のことを聞かされたら、ミリアの悍ましい過去を聞いたりした。その後、
少年が痛めつけられる音がしてそこには貴族が居た。そこに秩序に固執するルナが現れる。
ルナの火輝石魔法と烈の「平等の天秤」で貴族の私兵を退け、ルナが自己を見つめあえる機会を与えた昨日。
考えながら進むと、
意外とすぐミリアの家へ着いた。
ミリアが軽快に言う。
「ここが私の家!意外とボロいけど入って入って!」
そこにあるのは山麓に作られた自然感じる家。植物が家を囲い、もはやそういう系統の家だと思える。だがよくよく見ると元々凛々しい家に見える。
周りは山は木々が多く、人が通る道はなさそうだ。
そして烈は森の奥を見た。その後、周りをチラチラ見る。ここにセリアが居たのか……。辛い話を思い出し、気分が悪くなってしまった。
気を取り直して中を開ける。中は意外と綺麗にされていて、外と中では極端に美醜の差が激しい。
ミリアが自分の部屋へ、歩く。土足のままでいいと言っていた。二度と戻る気はなかったのだろう。ミリアは部屋の外で待ってて、といった。家を少し回ることにした。
「ミリアの小さい頃の写真……」
レツが写真に興味を持つ。ルナが横から現れ、一緒に見る。
「レツ、ミリアの写真じゃないか、今と変わらないな。」
このころからわんぱくだったんだなと烈も感じる。
ルナにもミリアの過去のことを話しておこうかなと思ったが、
流石に重すぎる。それにミリアが許可してないのにダメだそんなことは。利点があまりにも少ない。
「お待たせ〜!」
高らかな声にやってきたのはミリア、少し着替えていた。
「見て見て!、可愛いでしょ!戦いやすく調整したんだ!」
ミリアは、服を整えていた。より身軽に戦えるように、隠密に行動できる全身黒ずくめで、フード付きコートやオーバーニーソックスで体を闇に包んでいる。
だが、今はある意味目立っている。
「私は目がいいからねー。斥候役は任せてよ!」
情報収集をする前の情報収集場所を探してくれる頼もしい限りだ。
烈達はミリアの家を後にし、関所へ向かう。
そこでは外交が今でも盛んであった。関所を抜けるためにはルナが必要だ。元々ルナがいなければ、壁をよじ登るつもりだった。
「ルナ、頼んだぞ。」
「あぁ、任せてくれ」
ルナが関所を通る。見張りがルナの身辺調査をした後問題無しとされ通された。そのあと烈とミリアが通ろうとしたが止められた。
「止まれ、貴様ら何者だ。」
烈は焦った。貧民が邸宅街に入ることは許されない。
しかしルナがフォローに入る。
「あぁ、そいつらは王都へ向かう労働力だ。」
「労働力か、ならば通れ。」
烈達はなんとか関所を通ることに成功した。
秩序を守っているルナに救われた。
「ありがとな、ルナ……焦ったわ」
関所から逃げるように去っていく。
邸宅街。
昨日の本によるとこの世界は貧民街と邸宅街の割合が6:4である。ほとんどが貧民街だ。貧民街と比較してみると、明らかなハイライトの違い。白色が使われていた。貧民街と比べのならない明暗差、不平等が垣間見えた。
しばらく歩くと、ある街についた。そこで妙な建物を見つけた。
「あれって教会?」
烈の問いかけにルナが答える。
「そうだ、あれは輝石教会と言って、古代から大いなる輝石を奉っているらしい。ここはその支部だな。」
烈は確信する。
「教会ならシャルトやデザイアルの情報を深めるものがあるはずだ。潜入するぞ。」
ルナが眉をひそめる。
「教会に敵対する気か? 無駄な敵を増やすんじゃない。後始末が大変だぞ。」
教会の支部は森の奥、石造りの荘厳な建物だった。尖塔には輝石が光り、蒸気管が煙を吐く。神聖なよくある教会のような風景だ。
ミリアが木の陰から様子を伺う。
「衛兵が10人くらい。輝石魔法の使い手もいるね。やばい匂いプンプンだね!」
烈は固唾を飲む。
「ミリア、お前が衛兵の気を引け。ルナ、俺と一緒に潜入だ。」
ルナがため息を吐く。
「はぁ、いいか?情報集めたらさっさと出るぞ。」
夜の闇に紛れ、三人は行動を開始。ミリアが風輝石魔法で木の枝を揺らし、衛兵の注意を引く。
烈とルナは裏口から支部に潜入した。
内部は薄暗く、輝石の光が壁を照らす。
書庫にたどり着いた。
書庫でも意外と暗く、物体の形を上手く捉えられないほどだ。
棚伝いに歩いていく、こう歩くとすごく広いことがわかる。ある本をひとつ取ってみる。いかにも難しそうな歴史の本や、数千年前の戦記等が置いてある。
ようやく壁に触った。これで全部かと思うとなにやら木箱のようなものに当たった。
そこには古びた文字で「神願之試練」と書かれていた。
烈は古い巻物を開く。
「デザイアル…シャルト…あった!」
目を細めしっかりと、凝視すると、「予選会場」の場所と試練の記述。
「1000年に一度、1000人が争う…神々の遊戯だと?」
ルナが目を細める。
「神々の遊戯? 何だ、それは…」
その時、足音が響いた。
その音はコツコツと、近づいていく。このままでは確実に見られてしまう。
しかし周りには何もない。見られてしまうことを受け入れるしない!
そして1人の少女がやってきた。
白い神官服の少女が現れる。金髪ロング、青い瞳の聖女の美少女。
「何者だ! 教会の聖域を荒らす気か!」
烈は手を上げた。何とか弁明しようと言葉を作り出す。
「落ち着いてください! 俺たちはただ情報を…」
セレナが輝石を握り、結界を張る。
「黙れ! 輝石教会を侮辱する者は許さん!」
ルナが剣を構えた。
「セレナ・ルミエール、聖女だな。私は聖輝騎士団の見習い、ルナ・ヴァルティア。戦う気か?」
セレナの目が揺れる。
「ルナ…? 騎士団がなぜ盗賊と?」
烈が割って入る。
「盗賊じゃねえ! 俺はレツ・スズキ。最悪な環境から、シャルトでこの腐った世界を変えようとしてるだけだ。」
セレナが息をのむ。
「シャルト…? 貴様、聖なる輝石を何だと思っている!」
セレナが神妙な顔でこちらを見る。烈が反発する。
「俺はシャルトで、世界を平等にする。それよりもお前、聖女のくせにまともな言葉遣いが出来ないのか?」
セレナが笑顔で反論する。
「どうして、犯罪者に「敬語」を使わなければならないんですか?」
2人は一触即発状態だ。
2人の緊張が極限に高まる。




