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第4話 名も無き理想

二人は路地を駆け抜け、貧民街の迷路のような通りを逃げ回る。私兵の追跡は執拗だったが、ミリアの機動力で振り切る。路地の角で息を切らし、烈は壁にもたれた。


「…お前、すげえな。助かったぜ。」


ミリアはニヤリと笑う。


「まぁね! それはそうとさっきの話、レツ、私もシャルトを狙うよ。レツが求める平等に興味湧いてきた。」


さっきまでのミリアの表情とは全く違う。


その顔に烈は微笑み、遠くの時計塔を見上げた。


「当たり前だが死ぬのは怖え。けどよ、この世界のクソみたいな不平等…見過ごせねえよ。」


「平等……かー」


貧民街の廃屋で休息する二人。烈はゼノの言葉を反芻していた。シャルト、デザイアル、代償…。平等な社会を目指すなら、どんな犠牲も払う覚悟が必要だ。


「ねぇ、レツ。シャルトってさ、ほんとに平等な世界作れると思う?」


烈は空を見上げ、


「…わかんねえ。けど、やれるだけやろーぜ。」


「ここから俺とお前は仲間だ。一緒に平等を目指そう。」


ミリアがこくりと頷いてくれた。烈は、自分の思想に賛同してくれてとても嬉しかった。


遠く、神域の聖峰が暗闇にそびえていた。


烈の戦いは始まったばかりだった。


◇◇◇


逃走劇から数時間後


レツ・スズキはボロボロのジャケットを脱ぎ、傷だらけの腕を眺めた。転生初日から怪我をした。貴族の私兵に叩きのめされた痛みが体に残る。


「くそ…まだ痛むんだけど」


隣でミリアが心配し、傷んでるところに包帯を巻き直したりしている。そしてミリアは笑って


「レツ、貴族に突っ込む前に特訓したら?流石に弱すぎると思う!」


烈はミリアを睨んだ。


「うるせえー。俺は頭で勝負するタイプだ。力なきものも、平等に接しろー!」


と、冗談交じりにそう話す。

ミリアは肩をすくめた。


「いつも通り、熱いねぇ〜。」


すると突然何かを思い出したかのように

ミリアはポンッと手槌を打つ


「あそうだ、少し私の家に寄っていってくれるかな?」


烈は廃屋の窓から外を見た。煤けた建物、遠くの時計塔。ルミナリスの不平等な現実が胸を締めつける。転生前の光景—母の過労、村人の顔—が蘇る。


「あぁ。いいぜ、そのついでに少し情報を収集だ。」


烈は呟き、拳を握った。


朝、烈とミリアは貧民街の市場へ向かった。神願の試練「デザイアル」の情報を集めるためだ。ゼノの言葉、大いなる輝石「シャルト」、平等な社会への鍵が烈の頭を離れない。市場は人で溢れ、露店の叫びの音が響く。ミリアが露店のリンゴをスっと盗む。


「おい、盗むなよ!」


烈が咎めると、ミリアは舌を出した。


「貧民の掟その一、生きるためには手段を選ばない! ほら、半分こ」


リンゴを齧りながら、烈は苦笑した。


「あのなぁ、そういうのは法律でそして憲法でー」


「やめろぉ!難しい話は聞きとうなぁい!」


ミリアの軽快さが、張り詰めた気分を和らげる。その時、市場の広場で叫び声が上がった。


「払えねえなら働け! 貧民のガキが!」


貴族風の男が、少年を革鞭で叩いていた。少年は地面に倒れ、怯えた目で貴族を見上げる。


「またかよ…!」


烈の血が沸いた。烈が動こうとした時、ミリアが腕を掴む。


このミリアの行動に烈は心配した。ミリアが未だに過去に囚われているのかを。


「レツ、まって! またやり返されるだけだよ!」


しかし、考えすぎだったようだ。

ミリアは過去を踏み台にした。成長した。


「放せ! こんなクソくらえな世界、黙って見てられるか!」


烈は猛々しく走り出し、

少年の前に立ちはだかった。


「てめえ、ガキを叩く趣味でもあんのか? クズ貴族が!」


貴族が驚いたように烈の顔を見る。


「金がねぇなら働けだと?ならその環境はどこにあんだよ。働ける環境もろくに作れないのに、金が作れるかよ!」


貴族が嘲笑した。


「働ける環境だって?何言ってんだ。作ってるじゃねぇか、ただてめぇらが職を掴めてない()()だ。」


烈は強く拳を握り、怒りを顕にした。


「掴ませる気の無いくせに、綺麗事抜かしてんじゃねぇよ。」


そういうと貴族はため息を吐く。


「ふん、貧民の分際で汚い口を吐くとは。衛兵、始末しろ!」


貴族の私兵で革鎧の男たちが剣を抜く。烈は構えたが、体は昨日の傷で重い。

烈はため息を吐く。


「貴族は全員こうなのか?まともな貴族はいないのか!」


そこへ、甲冑の音が響いた。赤髪のポニーテール、赤い瞳の少女が剣を手に現れる。軽鎧に身を包んだ、凛とした美少女だ。


「貴様ら!、矛を収めよ。聖輝石騎士団見習い、ルナ・ヴァルティア、参る!」


ルナの剣が閃き、私兵の一人を弾き飛ばす。烈は目を丸くした。


「騎士団? 助け舟か? 助かるぜ…!」


烈はそう解釈した。

だが、ルナは烈を睨んだ。


「騒ぎを起こす愚か者は、秩序を乱す!」


どうやら彼女はここにいる者たちを悪としているようだった。

烈は驚く、しかし、鼻で笑った。


「秩序? こんな不平等な現場に一時の平等を求めるのか?、永久な平等を作れよ。」


そんな煽りを言うと

ルナが剣を構える。


「黙れ! 貴様らのような者がルミナリスを乱すのだ!」


貴族が笑い声を上げた。


「貴様、見習いの分際で俺に逆らうか? 上に報告すれば、お前の貴族の名誉は終わりだぞ。」


どうやら貴族とルナは面識があるようだった。

ルナの顔が強張る。貴族は命じる。


「ルナ及び私兵たちよ、ここにいるヤツらを始末しろ!」


ルナは驚いていた。


私兵のリーダーの大柄な男が巨大な剣を振り上げる。ルナの剣に炎が宿る。恐らく火の輝石魔法だ。


ルナの剣が烈に襲いかかる。


「レツ!危ない!」


ミリアが吹き飛ばし烈を助け出す。

その後烈は立ち上がる。


「ミリアここからは俺が一人で戦う。」


そんなことをいった。


「そんな無茶な…」


烈は歩き出しながら言う。

その背中はなにか惹かれるものがあった。


「真の平等を体現させてみせる。」


そう言い残し、私兵たちに立ち向かう。


貴族が退屈そうにあくびする。


「おい見習い、さっさとガキ共を殺せといっただろう。」


しかしその横暴な案にルナは部分否定した。


「いえ、まずは捕縛を」


貴族はルナを突き飛ばす。

ルナは地面に叩きつけられる。その時ルナは話していたため、一瞬呼吸ができなくなった。


「聞いてなかったのか?俺はそいつらを殺せといったんだぞ?」


貴族はため息を出す。そして呆れたようにルナを見下したあと、私兵を呼んだ。

ルナは嫌な予感がした。


「貴様ら、こいつ用済み。あいつらと一緒に殺せ。」


貴族がそういった瞬間、私兵は承諾しルナに剣を振り下ろした。


その振り下ろされた理不尽に対抗するが如く、剣を抜き出し私兵の剣に重ねたた。

触れた衝撃に誘発されるように、ルナの輝石が光り、炎の斬撃が私兵を吹き飛ばす。


烈は私兵と戦っていて何があったかわからない。


「なんだ!?」


ルナが私兵を次々に倒す。烈には理解できなかった。仲間割れだろうか。

だが、私兵の数は多い。見習いということもあってルナは次第に追い詰められる。


ルナは劣勢だ。


烈は考える。彼女を守りつつこの不平等な場を平和に収める方法を…。

烈は集中する。ルナの輝石が私兵を切るときに光ったり、ゼノが光らせた明るすぎる輝石。

そこからインスピレーションが湧いた。平等。この場を一瞬だけ。


「平等の天秤」


頭の中に浮かんだモノが発動する。体が熱くなり、視界がクリアになる。私兵リーダーの剣が鈍り、ルナの炎が一層輝く。そして烈は息切れした。呼吸が苦しくなり、汗が止まらない。


「何だ、この力は…!」


ルナが驚く中、少ない酸素量で、烈が叫んだ。


「俺も知らん!とにかく今だ! ぶっ飛ばせ!」


ルナの剣が唸り、炎が私兵を飲み込んだ。


その攻撃は先程と違い、強化され洗練されていた。その剣さばきは私兵と同じ技術であった。

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