第38話 ただ一つだけ
どういうことだ。
このリオネとか言う男が、あまりにも強い!
セレナは数の暴力に押されていたこともあるが、それとは別に見た目に反してとてつもなく強い。
「おやまぁ、天災っちの下で修行を積んだのに詰めが甘いねぇ。持ち前の怪力で誤魔化したところが多いですねぇ。」
リオネはセレナを煽りまくっている。
ただし事実ではある。1ヶ月という短い期間だと、未完成な部分がどうしても生まれてしまう。
「ならよ!」
セレナ思いっきり飛ぶ。そして空中の空気を踏みつけるように構えると、そのまま落下する。
「割れろぉぉぉ!」
肘を強く押し出し、地面を殴った。
地面はビビを伴い割れる。そうすると地面が隆起し、揺れる。
「ただ地震を起こしただけ……?」
リオネが疑問に思うと、突如自分の髪がふわりと上がる。生暖かい空気が上昇している。
リオネは気づいた。
「お前たっち!そこを離れなさい!」
リオネが叫び逃げると、赤い液体が少しだけ地表に現れた。
「減圧融解ですか!!」
ギチギチに詰まった地下のマントルをほぐして、マグマを作った。リオネの部下は続々とマグマの餌食になったり、断層に足を持っていかれたりした。
「とんでもないやっちですね。」
リオネは口角を上げた。
セレナは空高く飛んでいる。
リオネを見下すように悪魔のような笑顔を向ける。
「まだまだこっからだ!」
ぶくぶくと嫌な音が聞こえる。
「くっ!!」
リオネは予め作っておいたであろう薬品を持っていたものと混ぜ合わせた。
「とりあえずです!」
そうして完成したものを火口に入れた。
そうするとセレナの周りに穴が空いていく。
「ガス抜きです。」
水蒸気が吹き、セレナは吹き飛ばされる。
そしてリオネはそれを追いかける。
後ろを向きながらリオネは叫ぶ。
「あなたたっちは先に行っていなさい!ここはわたくしに任せなさい!」
「はっ!」
そう言うとリオネの部下達は負傷者も担ぎながら颯爽と去っていった。
リオネは走ったままの勢いで右腕をセレナの胸へと突き出す。
しかし足場が不安定なセレナであったが持ち前の体幹で腕を止めた。
「やるじゃないか!」
セレナはリオネを称賛した。
「どーも。ただ、小細工はなくなりましたがね。」
セレナは拳を鳴らす。
「なら、ここからは拳のみの戦いというわけだな!」
「そうです……ねっ!」
リオネが言葉を言い切った瞬間、勢いよくセレナへと飛んでいく。やはりある程度武を修めているようだ。
セレナは低姿勢になり、上へと半月を描くように蹴り上げた。しかしリオネはセレナの足をつかむ。そのまま着地し、リオネはセレナの足を持ち上げ遠くへ飛ばした。
地面を擦り、セレナの肌にはたくさんの擦り傷がついたが、すぐに治っていく。
「セレナっち……あなたっちの輝石の能力は修復機能の促進。前借りと言った所でしょうか。」
潜在輝石の能力もバレてしまった。
「バレたところで……関係あるのかな!」
セレナは勢いをつけ、飛び蹴りする。
リオネはため息をした。
「関係…ありますよ!」
金属音が響く。そしてその引き金を引くと、弾が飛び出す。それは無慈悲にも止まることを知らず、セレナを貫いてしまった。
「ぐぁッ…!!」
リオネは「銃」を取り出していた。この世界で銃はあまり普及されていない。なぜなら輝石の方がより強い効果を成すから。
「それは…なんだよ」
セレナは撃たれた脚を治療しながら質問する。
「出来れば玉は使いたくなかったね。これは銃、簡単に人を殺せる道具さ。」
そう言ってリオネはリロードしてセレナを撃った。
セレナは今度は避けようとする。しかし当たってしまった。
「無からエネルギーは生まれない。なら傷をつければいつかは治せなくなる。そうだろ?」
リオネは弾を入れ替えながらそういう。
それが恐怖を掻き立てた。
しかしセレナも負けない。
烈達仲間のために。
「あぁ、そうだ。だからよぉ、」
セレナは構えた。
「その前に仕留め切るぜ!」
脚が完全に治った、その瞬間リオネのリボルバーが一線を描いたが、一足先にセレナが動いて怪我を避けられた。
「ちっ、」
リオネは軽く舌打ちをした。
セレナはとても高い天井を駆使し、なんとか四方八方へと高速移動している。
「くっ、これじゃあ何も見えないですね…」
リオネが気づかないままセレナに1発を食らってしまった。そしてまた1発。
リオネはダメ押しで1発撃つ。しかし当然当たる訳もなく。
(このままじゃ、持久戦……しかしわたくしは長期戦が苦手……)
「ふはははっ!万事休すか!リオネ!」
セレナはリオネを煽る。
その後もリオネは何も出来ずただ、攻撃されてばっかりだった。
リオネは絶望する。
(このままやられてしまっては、わたくしの夢が……)
大嫌いな輝石を使ってでも、叶えなければならない夢があるんです!
***
どれだけ社会の役に立てるか。
輝石が発掘され1000年以上は経った。輝石が生まれ、文明が発展し、それ無しではもう居られなくなってしまった。
もちろん世の科学者は輝石を中心に研究しはじめた。発展性や、実用性。
しかしわたくしは輝石よりも自然現象によって生まれる化学の方に興味が出た。
生まれつき、頭脳の良さに周りからの期待もあった。
「お前は輝石科学者となりなさい」
それが両親の口癖だった。
2年前のある日わたくしは
「化学を究めます。」
といった。しかし両親は否定した。
「今更そんなのを学んだところで意味はない。」
「せっかく頭の良いのにもったいない」
わたくしを否定された気分だった。
そこから両親はわたくしに化学をさせない為に邪魔をしてきた。化学を一切触れさせず、輝石分野の科学のみをやらせてきた。
そんな日、わたくしはシャルトという存在を知った。そしてその大会が2年後に行われることを。
わたくしは親の目を盗み、ひそかにデザイアルへの準備をすすめた。
シャルトで願うものは決まっていた。わたくしが自由に化学を究められる。
しかし代償の障壁があった。
それは簡単に突破できる。わたくしは化学だけを極めたい。だから━━━
***
リオネはネクタイを緩めた。
そうするとセレナの表情を変えた。
リオネは脱力したように下を向くが、そしてセレナを見上げ、服を握る。
「いいですよもう、ぶっ殺します。」
リオネはスーツを脱ぎ捨てた。
「わたくしの願い、俺に輝石の知識を手に入れるためにあなたっちを潰します。」
リオネから本気の殺意を感じた




