第37話 今を見るか次を見るか。
激しい攻防。烈はライララの隙を全くつけずにいた。
(どうなってやがる……、完璧な攻撃とかわしのバランス!)
ライララの蹴りが振り上がった。烈はその隙を着こうと直ぐに、拳をストレートに押すが、ライララは支えていた左脚を横に倒し、低姿勢を作る。
烈はただ負けじと、いつか作る隙を伺う。
烈の体力もかなり使ってしまった。
烈はライララにおもいっきりフェイントした後、後ろに下がる。
1呼吸した後、話し出した。
「お前、なんで平等を目指す?」
ライララは剣を地面に刺す。
「そんなもん、てめぇに教えるかよ。」
やはりな、と烈は頭をカリカリっと少しかいた。
「じゃあよ、なんで世界を壊すんだ?」
烈は目を細めた。
「だからてめぇに……」
ライララが言いかけた瞬間
烈が反論した。
「平等を目指す理由はこの世界にあるはずだろ?その根本を壊してしまえば、本末転倒じゃねぇか。シャルトで願って理由を直せたとしてもその理由を持つことができなくなる。」
ライララの目が少し動く。
「あぁそうだ。世界を壊せば、理由はなくなるかもしれねぇ。」
ライララは譲歩した。
烈はその譲歩に乗っかった。
「なら俺と普通の平等を目指そうぜ?、お前のその理由も一緒に直していけるはずだ。」
ライララは剣を投げた。その剣は烈の頬をかすり、烈の安心感に傷をつけた。
「なら、もしその理由がこの世になかったら?」
ライララは放った時の手をグッと引き寄せながら握る。
壊す理由には満たす。しかしなぜ?
「それなら理にかなってる。だがなんで壊す必要なんてあるんだ?八つ当たりか?」
ライララは烈に右ストレートを放つ。
烈はその手を両手で止めた。
剣がないとはいえ、とてつもないパワーだ。
「俺をそうさせた理由はこの世界だ。この世界は腐ってる。元には戻せねぇよ。」
ついにライララは烈と会話し始める。
「元には戻せる。俺がシャルトで平等を願う。俺が犠牲で元の世界を作れる。」
ライララは突いた手を戻し、ジャブを打つように次々と攻撃を繰り出す。烈は器用にそれを受け流す。
「へえ、そりゃあたいそうなこった。てめぇが犠牲なんてどうでもいいがな。どっちにしろこの世界は捨てるしかねぇよ。例え俺が新世界で生きられなくなってもな。」
ライララが世界の崩壊を願えば、新世界を望んだことと同義。ライララは新世界を生きることはできないだろう。
「それぐらい、この世界での平等は無理なんだ。逆にてめぇはどうなんだよ。そんな覚悟があんのか?」
烈は蹴りを上げる。当然ながらライララに防がれてしまうが、話すにはちょうど良い距離感を作れた。
「当たり前だろ。この世界での俺は平等を目指す。いいか?俺がシャルトで今の平等を目指すのは、努力をさせるためだ。」
「 『今の考え方はダメだ。この考えの方がふさわしい。』シャルトで願うことというのは「きっかけ」に過ぎねぇんだよ。」
ライララの目がキリッとなる。
「つまりだ、ライララ。失敗を経験してないやつが成功すんだよ。逆に言えば、失敗がない思想に未来はねぇよ。」
それは烈の人生経験だった。
ライララは強く拳を握る。かすかな頬の痛みを感じた。雷だ。
なぜか今まで隠していた、雷がついに登場する。
「レツ、必ずしも成功するとは限らねぇよ。失敗を永遠に続けるやつだっている!!」
ライララは雷を操りはじめた。
精度がかなり上がっている。デタラメに打つことはもう無くなったようだ。
「平等の成功は必ずする。なんてったって俺がいる。」
自信満々で烈はそう言った。
「お前はシャルトで平等を願う。そうなりゃお前は平等を愛せない人間だ。」
「あぁ、だから正確には━━━━━」
烈は後ろにあるトンネルの向こうをライララを見ながら親指を指す。
平等の思想を受け継ぐもの
「俺の仲間がだ。」
ミリア、ルナ、セレナ、リズ、エリカ。
この5人なら俺が思想家として朽ちても代わりに平等を強くする。
ライララは、脱力したかのように立つ。
「……てめぇと会話して完全に理解したよ。」
烈は腰に手を当て自信ありげに口角を上げた。
「あぁ俺もだ。」
2人は息を揃えて言った。
「「俺はお前が嫌いだ。」」
ライララは雷を操るが、挙動がおかしい。まるで原子核の周りを漂う電子のように。
次の一発で決めるようだ。烈の勘が正しいならば勝機はある!
「ここでお前は脱落だ。」
「それはどうかな?確実に仕留めないと分からねぇぞ俺はな。しぶてぇぞ思想家はな!!!」
ライララが更に力を込めた。烈も力を溜めた。そして構える。
ライララが地面をけった。超スピードでライララはこっちへ来る。思ったより早い。烈は横にあるものを放った。
「どんな弱者も、強者に対等に立ち向かえる。それが平等だ!!!!」
烈は光の輝石を放った。
当たりはとてつもない光に照らされた。ライララの目は強い残像が残った。
しかしライララは負けじと電子を放つ。
烈が壁に埋まるようになにかを投げた。それは、磁石の輝石。光を放ったあとは、その磁石に引っ張られる。
ライララの攻撃は当たりはしない!
烈は引っ張られる感覚を身に染みて感じた。
(俺の勝ちだ!)
……何かがおかしい。烈のとこへ来るライララの挙動は烈のすぐ後ろにあった、剣の方向。なぜだ?まるでライララが剣の方向に思いっきり引っ張られているかのような。
「ぐはぁっっ!!?」
全身が痺れる。
烈は滲み出たかのように血を吐き出した。
ライララは刺さっている剣に寄りかかり、その場にうずくまる。
烈はそのまま倒れた。
(考え……ろ…、なぜ俺は痺れている……!)
烈は確かに磁石に引っ張られた。…引っ張られたんだ。
引っ張られたのは磁石の「輝石」でない。磁石となった「ライララの剣」だ。
せっかくのチャンスが無駄になってしまう。この隙が無ければもう二度とデザイアルへの復帰は出来ないだろう。
「1度作られた上下関係と言うのは、覆ることはない。例えそれは一瞬平等となったとしてもな。」
その声は段々と大きくなっている。ライララが余りにも傷がついて無さすぎる。痛みを平等にすることはできないようだ。
(負けちまうのか……俺はここで。)
***
何度だって立ち向かってやるよ。どの分野においても俺より優秀な奴がいるなら、そいつを抜いてやる。
挑戦する機会は誰にだってある。平等にな。
***
「うあ"あ"あ"ぁぁぁー!!!」
上手く声が出せないが、強くがなった声を出した。
平等の天秤発動!!
白い光に包まれた。しかしまるで何も変わっていないように見える。
「終わるわけにゃ行かねぇんだよ!」
烈は強く立ち上がり、思いっきりライララを殴った。
少しぐらついたがライララはまるで効いていない。
見た目に全く影響を与えていなかった。
しかしライララは倒れた。
「くっそ……この技は後遺症が…」
良くも悪くもライララを一時戦闘不能にすることが出来た。
しかし烈も無事という訳でもなく。
「こりゃ、しばらく歩けねぇな……」
烈は小鳥のさえずりのような声でそう言うと、少しずつ這うように移動し始める。
(腕は無事だ。今はとにかく距離を稼がなければ……)
先導者がいるおかげで、危険なことなく烈は進むことができるはずだ。
そして烈は大きな声で言う。
「期待してるぞ!みんな!!」




