第36話 思いがけない分断
最初に言っていた
***
「初動でお前を潰す。」
***
という言葉は嘘ではなかったようだった。
他の選手は前へ進んでいき、もはや見えなくなりそうになっていた。
烈はこのままではまずいと思った。
「みんな!ここは俺だけにして、先に行け!」
烈がそんな提案を言うとみんなは驚く。
「だが、レツだけではそいつには勝てないぞ!」
ルナが応援を申し込む。
「わかってる!ここでライララに勝つかどうかは関係ねぇ!俺たちがすることはゴールへ行くことだ!」
烈は何をすべきなのかを判断していた。
「俺を信じてくれ!」
ルナは目を閉じ、前を向いた。
リズも何やら覚悟を決めて前へ向く。
他の人たちはまだ慌てている。
「みんな行くぞ!レツのために先が行きやすいよう掃除するんだ!」
ルナがそう意気込むとみんな前を向き始めた。
しかしエリカがまだ心配そうに見る。
「エリカ、俺は負けねぇし終わらねぇよ。待ってろ。」
エリカがその言葉を聞いて頷く。
「待ってます、レツお兄ちゃん!」
リズが走り出した。
後続も着いていく。
「あーあ、仲間がいたのにもったいねぇーな。それとも俺に勝てる自信があるのか?」
ライララは揶揄した。
しかし烈は自信ありげに構えた。
「あるわけねーだろ。ただ、勝つチャンスは平等にある。」
その言葉はライララの逆鱗に触れる。
「お前が平等を語るな。」
ライララは脚に力を入れ、勢いよく大剣を横振りしながら突進してきた。
烈は輝石を取りだし、魔力を込めた。
そうすると光の刃が出てきて、大剣を受け止めると火花が少し舞った。
(俺の所持してる輝石は、
SNの磁石の輝石と、刃の輝石と、光の輝石と
そして平等の天秤
)
烈はライララにどう勝つかを迷っていた。
この戦いはしばらく武力戦となりそうだった。
「どっちにしろ、俺が勝つ。」
烈はそう意気込み構えた。
ライララが先に動く。1回左回転をすると、剣もその軌道を辿るかのように大きく振られた。
しかし烈の顔には届かなかった。烈の視線はそのまま左方向へ行った大剣に行っている。
その瞬間左頬に痛みが走る。
「ぐッ!」
視線誘導をした上、ライララは剣を振った遠心力で身体を回転させた。
烈はこの動きが見えなかったのだ。
烈の身体が宙に浮く。
「逃がすわけねぇだろ」
ライララはその一瞬をも見逃さない。
飛んだ体を着地させた後直ぐに地面を蹴り烈の腹部に右で一発。左で顎を一発。そして足で腹部に━━━
「させるかよっ!」
平等の天秤、発動
白き光が辺りを照らす。その光は消滅した。
烈は地面に着いており、肩で呼吸をしている。
一方ライララは、少しだけグラッと体が揺れた。
「慣れねぇな、少し力を失うってのはよ。」
ライララにはあまり驚きはなかった。
初見の技ではないからだ。
「お前と俺じゃ力の差が歴然だ。これでやっと平等だな!」
ライララはまたもや深く構えた。
「何度言ったらわかる。平等を語るな。」
烈もまた構える。
「いやだね、俺は俺の平等を実現する。語るのに資格なんていらねーんだよ!」
両者同時に地面を蹴り、拳を振り上げた。
◇◇◇
「うわーん!!寂しいですー!」
みんなが目的地へと走っていく時、
エリカがそう叫ぶ。
そうするとミリアも次第に叫ぶ。
「ちゃんと無事に居てくれるかなぁ〜!!」
セレナがため息を出してツッコむ。
「あんたたちねぇ〜……、さっきかっこよく任せたでしょうが」
しかしミリアは肩を脱力させている。
「だってぇ〜」
ルナは背中を全員に見せたまま話す。
「私たちができることはとりあえず道を作ることだ。」
リズが何かを察知した。
「でも、どうやら簡単には行かないみたいだね〜。」
周りを見ると何人かがリズ達を囲む。
段々と人が増えていき、逃げ場所が無くなる。
やがて、謎の人間達が動きを止めると当然リズ達も動きを止めざるを得なかった。
セレナが拳を手のひらにぶつける。
「ひと仕事ってわけだぜ!」
セレナが全神経を拳に集中した。
リズ達も加勢しようとした瞬間、セレナが手を横に広げ制止させた。
「ここは私に任せな、変なもんに足止めくらってちゃレツさんの意思を無駄にしちまうぜ?」
確かにセレナの言う通りだった。相手は複数人で、どうしても時間がかかってしまう。
ここはセレナに任せるのが懸命な判断だと感じた。
しかし道が塞がれてる以上、手も足も出ない。
そこでセレナは少し低く拳を構えると、
「じゃ、道開けるぜ」
拳を前に突き出す。そうすると何かに、ヒビが割れそれをセレナは歯をむきだしながら壊そうと意気込む。
「ふんぬぁぁ!!」
バギィィィィン!!
轟音とともにとてつもない風が吹いた。
するとセレナの殴った方向は人間ごと抉り取られていた。
「今のうちだ!行け!」
セレナがそういうと、多少恐怖しながらもリズ達は逃げることができた。
セレナは4人を見送ると、敵の方に向き直す。
そうすると謎の人間たちは間を空ける。その間から人影が現れる。
「素晴らしいね、お嬢さん」
声高らかに喋り、拍手しあざけ笑う。
細身ながらも、邪悪さがこもっている。
静寂に黒のスーツに包み、青いネクタイをタイトに付けている。
「誰だよてめぇ。」
セレナが牽制するとその細身の男は、右足を後ろに引き、上半身を深く折り曲げ、床を擦るように靴の音をコツっと響かせた。
まるで紳士のように。
「ご紹介が遅れました。わたくし、反実架想教会教主リオネ・カジルと申します。」
聞いたことがある。突如現れ、文明の先端を牛耳った輝石の存在を忌み嫌い、今まで培ってきた人類の努力の文明を重宝すると言われている教会。
「私は元輝石教会……」
「管轄部セレナ・ルミエール」
さすがだ。情報戦に長けている。
セレナは構えを取る。
「ならさっさと潰すしかねぇな。」
リオネは不敵に笑った。




