第35話 デザイアル開幕
朝、いつもと変わらない日であったが、烈達にとっては覚悟の日。
デザイアルがまもなく始まる。
共有スペースにて、烈達は集まり作戦会議をしていた。その作戦会議が終わったあと烈はみんなに活力を与える言葉を言う。
「いよいよ始まる。この戦いは思想のぶつかり合い。本気で勝ちに行くぞ!」
烈はみんなの目を見る。自信満々であり、本気な目。烈は嬉しかった。
烈達は早速デザイアルの会場へと急いだ。
◇◇◇
会場は湧きに湧きあがっていた。色々な選手がいて、それ誰もがそれぞれの思想を持っている。
天気は快晴だ。神のいたずらかのように雲ひとつない。
遠くを見ると、白い軍隊のようなものが見えた。
イザナ率いる聖輝石騎士団だろう。
あの攻撃は今でも烈は根に持っていた。
あれはガルドだろうか。話かけようとしたが、今もう敵同士、お仲間ごっこしていた訳じゃない。と自分に言い聞かせた。
なによりガルドの周りには何やら強そうな人間があと6人なにかを囲んでいた。あれが俗に言う、
「輝石教会幹部七議席ですね。」
セレナが烈の考えたことをカバーしてくれた。
やはり全員参加をしていたようだった。
そしてあの中央にはアガネ・ゼエルがいるはずだ。
しかしおかしいゼノがいない。ゼノなら始まる前に烈に会いに来ると思っていた。少し探してみることにした。
みんなには師匠が参加している。と理由をつけておいた。
11時を越えた。
全く居ない。顔見知りなのはほとんど見てきた。
本当に神出鬼没なやつだ。
その時、殺意を感じた。後ろを振り向くと、そこには
大きな大剣を持った、青髪のオールバックの男が立っていた。そしてそれは烈がよく知っている男。
ライララ・ソウジャー。
「よお、久しぶりだな。エセ思想家。」
ライララは厳つく口角を上げるが、感情は怒りだ。
「っ!?」
みんなが同じような反応を示す。
デザイアルの参加者でない彼がなぜここにいるのだろうか。観客になることはありえない。なぜなら彼は敗北にとてつもないトラウマを持ったからだ。
「なんでお前がここにいる!」
ライララが大剣を烈に振りかざす。烈はそれを避ける。
そしてライララは話し始めた。
「俺はあの屈辱の試合が終わった後、とにかく修行をした。そして特設ルールでたった1人に勝ち抜いた。」
烈は思い出す。予選のルールに、敗者の中から1人を選ぶことが書いてあったことに。
「やっとお前と戦える。お前を俺は許さない。」
烈は冷や汗をかく、あの時はたまたま勝てたから良いものの、今の状況では難しい。
「あなたは……」
エリカ自身もライララを知っているみたいだった。
みんなは臨戦態勢へと入っていった。
しかしそれを断ち切るかのように声が聞こえた。
「間もなくデザイアル開始時刻です。選手達は、デザイアル正門の前へ来てください。」
それは聞いた事のないような、覚えにくい声をしていた。
そのアナウンスが終わるとライララは大剣をしまった。
「ちっ、つくづく運のいいやつだ。いいかレツ。初動でお前を潰す。」
そう言ってライララは帰っていった。
そして烈達もデザイアル正門前へ行く。
◇◇◇
正門の前へ着くと、どこからか声が聞こえてくる。
「人生を賭けた神願の試練への挑戦をありがとう。コチジャはデザイアルの主催者。簡単に言えば、君たちの言う神だ。」
ノイズと共に高音でも低音でも無い声を周囲に響かせる。
「君たちには、これから様々な困難がたち塞ぐだろう。それを君たちの信念、そして心で打ち砕いて欲しい。」
みんなが騒ぎ立てる。
耳を閉じても意味がないほどに声は響いている。
ハウリングが起こり、みな静かになる。
そして神は喋った。
「最初の試練のルールを説明する。」
そういうと神はゆっくりと記憶に残るように話した。
「当試練は計5つの条に分かれている。それぞれにそれぞれの適性を試すものがある。その全てを制したものがシャルトを手に入れられる。」
思ったよりも、デザイアルは長く続きそうだ。
しかし烈の顔はまだ思想家の顔をしている。
「それでは第一条 洗礼。第一条は、ただ翌日までに目的地に向かって欲しい。このデザイアルの空間はトンネルのようになっている。その最奥にたどり着くのが第1の試練の内容だ。」
会場ががざわざわし始める。
ただ目的地に着くという簡単な試練。
楽勝だと思う者もいた。
「第二条の内容は目的地で話す。以上、質問のある人間は挙手せよ。」
そう言われたが誰も手を挙げるものはいなかった。
とある男が手を挙げた。
「質問。」
その男は不気味に口角を上げていた。
その気味の悪さが見て取れた。
ねっとりと口を開けて質問をした。
「目的地に行く間、どんなルールがあるのかな?」
確かにルールは目的地に着くということだけ。その間なにをしてはいけないだとか、何をすべきだとかは具体的に告知はされていない。
これがないと、やりたい放題できるじゃ……
「ルールなんてない。ただ君達は目的地に行けばいい。その間のルールは無い。失格になることなんてない。」
失格になることはない。やはりそうだ。
この試練中、何をしても許される。
「了解、」
不気味な男は満足したように目を閉じ微笑んでいる。思考したその脳の中には一体どれ程の邪悪が潜んでいるのだろうか。
しかし先入観は良くない。
彼の質問により、不意打ちを打たれる可能性が少しでも減ったのだ。
「恐らく時間だ。」
神はそう言ったあと少し息を吸い込んで言った。
「これより、1000年に1度の催事、神願の試練を開催する。」
静かだった会場がこの合図より湧き上がった。
その熱気は熱くたくましく、複雑だった。
「位置についてよーいっ」
神が高らかにそういうと
参加者はスタートダッシュのポーズをする。
「どん!」
それと同時に土埃が舞った。
その土埃はまるで参加者を鼓舞するかのように大いに立ち上がった。
烈達もまた行く。
「よし、行くぞ。」
烈達は走り出した。
最初の目標はただひとつ全員が無事に目的地へ辿り着くこと。
烈は後ろを守り、ミリアやリズは前列で敵の行動を見ている。エリカも烈と同じく後ろで魔力を探知していた。ルナは中央で、前後どちらも対応できるようにしている。
この陣形は破られることは多分ないだろう。誰も欠けなければ、この陣は無敵だ。
しかしそれは一瞬にして破られることになる。
烈の目の前に何かが通った。通り過ぎた方向へ向くとどこかで見た大剣が地面に深く突き刺さっている。
そして烈はなにかに顔を掴まれた。
後ろにいたエリカには突然なにかが現れたかのように見えた。
そのなにかは烈を地面へ当てようとした。
しかし烈は自身の体を旋回させ、烈の体はなにかの手から外れた。
そのおかげでもろ受けはたえられたようだった。
なんとか烈は立ち上がると、前をぎょっと見た。
そうすると、よろめく視界ではあったが既視感のあるシルエットが見え、烈は確信した。
「お前…やっぱりライララかッ!」
その男は大剣を引き抜き肩に大きく添えた。
そして不敵に笑った。




