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第34話 嵐の前の静けさ

「君の平等という思想は、俺の国家を覆す。これを言いに来た。」


彼の言葉により、王が目の前にいるということを教えられた。


今の状況を客観視するならば、極左対極右と言ったところだ。世界を圧縮したものとそれを刺激する不純物。


「どういう意味だ……!」


烈は拳を握る。

しかしタドナギには未だに敵意を感じ取れない。


「デザイアルを終えることでこの世界は変わっていくってことだよ。この試練がこの先の未来を想像する。」


「……意味は強いて言うならお互い頑張ろう的な意味だよ。」


そんな締まりの悪い言い方をした。

強風が吹く。烈の髪の毛が上を向く。


「なんだよそれ。」


烈はため息をつく、しかしその後タドナギを見つめ、威嚇するように歯を出し微笑む。


「だが、平等を成し遂げる(勝つ)のはこの俺だ。」


タドナギは烈のその姿勢を見ると、安心したかのように微笑んだ後烈のように笑い、


「いいぜ、勝負と行こうか。右翼と左翼のな!」


そう言ったあと、タドナギは手を上にあげると手の中にある輝石が光り、飛び去った。


それを見送ったあと、烈はそのまま宿に戻っていく。

宿にもどる最中はただただ余韻を感じていた。


◇◇◇


宿の方に着くと、みんなは居た。


「みんな、ただいま。」


そう烈が言ったあとみんなは


「おかえり、レツー!遅い!」


と言ったミリアのように呼応してくれた。しかし烈は隠していた、深い傷を負う左腕がすぐ向かい側にいたルナに見られてしまった。


「レツ!!なんだその傷は!」


先程まで気まずそうにしていたルナがそう叫ぶとみんなも気づく。そして唯一事情を知ってるセレナが気まずそうにする。


「これは、人工的に作られた傷だね〜。刺されでもしたって感じかな〜」


察しの良いリズは的確に当ててきた。

仕方なく、事の顛末を話した。


「じゃ、じゃあ「抜く」ってのは……あぁ」


まずは勘違いしていたルナは独りでに真っ赤かにしながら撃沈していた。そんなルナをリズが宥める。


「その傷は誰かにやられた訳でもなくて自傷ってことだね〜」


コクリと烈は頷く。

一方ミリアはセレナの潜在輝石に夢中だった。


「でもすごい!セレナの技すご!「抜く」っていう名前の由来とかある!?」


ミリアは未だに勘違いをしているようだった。

エリカは怪我した烈の左腕をよく観察している。まるで何かをしようとするための準備のように。


「レツさん、その傷を負わせた事はごめんなさい。明日はデザイアル本番だと言うのに。」


セレナは自分が犯した罪を反省している。しかし烈は反論した。


「いや、結果は同じだと思うぜ。あのまま何も無ければストレスで精神的なダメージが来ると思うから。むしろセレナありがとうだ。」


セレナは少し目が歪んで


「どういたしまして」


と言った。

しかしこの左腕の傷は深い。動かす度に少し疼く。ハンデを被ったと烈は思った。

ここで突然エリカが声を上げた。


「レツお兄ちゃん、もしかしたら治せるかもしれないです!」


エリカはそう訴えた。エリカの魔女の輝石には自己治癒能力がある。それを他人に応用することができれば治すことは可能かもしれない。

烈は驚く。


「まじか!、頼むエリカやってくれ!」


エリカは了承した。


「レツお兄ちゃん、ちょっと痛いかもしれないですが我慢してください」


そしてエリカは指を傷に触れさせた。

魔力を注入し再生する。

エリカは烈を見上げた。少し悲しんだ表情をしていた。


「レツお兄ちゃん……私はこういうこと初めてですし、傷も深いからかなり時間がかかると思います。」


「だから、このまま部屋に行って治療しましょう。この輝石は体力も奪うのですぐ寝れる準備をしていた方がいいと思います」


エリカの顔とは裏腹に

烈は優しく微笑んだ。


「うん、わかった。ありがとなエリカ」


そういうとパァーっとエリカの顔は笑顔になっていった。


そして烈は大声で叫ぶ。


「じゃあみんな各自明日、勝つ準備をしておけ!」


みんなは呼応した。


「おー!」


烈はエリカに案内されながら部屋に戻った。

ミリア達も各々部屋に戻る。


◇◇◇


個室の中には1つ分のベットが鎮座していた。その上では、前のように平等を目指す男と、差別を受けた女がそこには居た。


未だにエリカは烈に治療を施している。

エリカは少しきついような、何かをこらえるかのような顔をしていた。身体も少し震えている。


「大丈夫か?、俺には言葉しか掛けることができないのが情けない。」


エリカは自分の感情が表に出てることに気づき、驚く。そして笑顔になる。


「心配してくれてありがとうございます。」


そして今度は下を向いた。

苦しさという理由かと思ったがそうではなかった。


「レツお兄ちゃん、言葉以外にもできることはありますよ……」


上を向いた。汗をかき頬を赤らめる姿がそこにはあった。左腕を胸に置き、「はぁ…はぁ…」と少し息をきらしながらエリカは


「レツお兄ちゃん、私の左腕をギュッと握ってくれませんか?」


と言った。

烈は少し驚く。しかしエリカが身を粉にして頑張っている恩に少しでも報いようとした。

エリカの左腕を優しくギュッと繋いだ。


触った瞬間、震えていたエリカだったがすぐ収まった。


「やっぱり、安心しますね。」


そう言い、治療に専念した。

烈はその姿を見て少し照れた。


◇◇◇


治療終了からの料理に入れ


「終わりましたよ、どうです?」


烈は気力を無くしていた。ただ痛みは完全に消えていた。


「すっかり良くなった。ありがとうエリカ。」


エリカを見るとやりきった感を出し体を伸ばす。

そして今度は上着を脱いでベッドから降りた。


なにやらカチャカチャと金属が擦れ合う音がする。


「今は疲れていますよね?、体力を回復するためには睡眠も必要ですが、」


烈の腹から深い音がした。


「ふふふ、そうです正解です!食事も大切です。私が作ってあげますね。」


そう言ってエリカは屈んで本を探し始めた。

楽しそうに身体を揺らしながら探す。


「大丈夫だ、そんな事しなくても」


「ダメです。ちゃんと栄養取らないと倒れたらこまりますよ。」


そんな息子に言い聞かせる母親のように言う。

「ありました」とエリカが本を取り出して言うと本をパラーッと速読し烈に質問した。


「レツお兄ちゃんの好きな料理ってありますか?」


烈は考える。1、2を争うならばガラクタ丼が上位に入るが、こんな邸宅街では作れる材料はない。

だからこそ生前好きだった料理を言う。


「ハンバーグ」


母はいつも忙しい。だからこそ作り置きとして冷凍ハンバーグを作ってくれる。冷凍は1ヶ月程持つため30個ほど作り置きしてくれる。


「ハンバーグ……?」


恐らくこの世界ではそんな名前ではないのだろう。

なので少し言い換えた。


「細かい肉の塊を焼いたものだ。」


そうするとピコンとエリカが口を開けて閃く。


「これですかね、ゴロゴロ?」


肉団子のような感じの料理のようだ。

烈はエリカにそれを大きくしたものを一つだけ作ってくれ。と頼んだ。


「頑張って作りますね!それまで寝ていてください」


そう諭され横になろうとした。

しかし烈のために料理を頑張ってくれているエリカを見ると、ふとエリカの昔のことを思い出した。


さっきの自己治癒能力の魔女の輝石。

これは彼女にとってとてつもない過去の産物なのではないだろうか。彼女はこの能力のせいで悲惨な目にあった。


治療している時の苦しみは、過去を堪えているようにも感じた。


(俺と手を繋いだのもそういう理由なのか……?)


烈はなんとも言えない表情になってしまった。ずっと考えていると突然


「いっったーい!」


エリカが叫ぶ。どうやら指を切ったようだ。

早く治ってくれ〜と言わんばかりに指を抑えている。


(いや、考えすぎか)


その姿を見た烈は安心して、立ち上がり、エリカに近づく。


「大丈夫か?」


烈がそう呼びかけるとエリカが急いで後ろを振り向く。少しカァーっと赤くなった後、そのまま眉をひそめた。


「ダメですよレツお兄ちゃん、安静にしてください!」


エリカが叱ると烈は視線を逸らして言った。


「お前にばっかやらせて申し訳ないと思ってだな。」


これは烈の本音だった。

そうするとエリカは微笑んで作業をしながら言う。


「そんなことないですよ、レツお兄ちゃんにはただ居てくれるだけでいいんですから。

……逆にレツお兄ちゃんが身体を壊したらそっちの方が私は嫌ですよ?」


エリカがそう言うと少し肩がぴくっと動いた。


烈の存在がエリカにとって嬉しく堪らないものとなっていっている。だからこそ居なくなってしまったら辛くなる。烈にはその経験があった。突然として消えてしまった人達。烈の心は永遠に塞がらない。


その様子を見た烈はエリカの肩に手を置いたあと、手を戻し、


「…レツお兄ちゃん!?」


それはエリカのためなのか自分のためなのか烈には分からなかった。ただ1つ、身体が勝手にエリカの身体を包んだ。


エリカの身体はただただ暖かった。

レツの身体はすこーしヒンヤリしていた。

エリカの鼓動がエリカの首を通じて烈の耳に聞こえた。烈の鼓動もエリカは身体で感じた。


エリカはすこしだけ後ろを向いた。烈の顔が予想以上に近かった。


「…邪魔だけはしないでくださいね……?」


「うん。」


2人はただ満たしていた。


◇◇◇


「へいお待ち!」


ルナ達の目の前に出されたのは、正体不明の材料から作られた「ガラクタ丼」呼ばれるものだった。


「ミリア……なんだこれは?」


ミリア達は烈と解散した後、ミリアに引き止められ晩御飯を作ってくれると言われたので嬉々として受け入れた。そしてミリアの部屋にて自慢気に出されたのがこのガラクタ丼。


「ふふーん、これはねー!」


ミリアは淡々と材料の説明をしていく、その説明を聞いたルナ達はこの前の烈と同じ反応をしていた。


「ほんとに美味しいんか?ミリアちゃん!?」


セレナは不安の声を露わにする。

さすがのリズも食べたくないようだ。


「食べてくれないの?」


ミリアが明らかに悲しそうにする。その表情を見て、ルナは覚悟を決めた。


「私は騎士だ!どんな物にも屈しはしない!!」


勢いよく食べる。

セレナも食べようとする。


「偏見で決めたらダメよね!ええい!」


リズも食べようとした。


「私だけっていうのも不平等だし、なによりミリアちゃんに失礼かな〜!」


みんなが1口食べた。

そしてその感想は


「「「「うんまぁ〜〜!」」」」


感嘆の嵐だった。

そこからはミリアは質問攻めをされた。


どんな風に料理をして、どんな組み合わせでこの独特な味が生まれたのか。


ミリアはその勢いに圧倒され、少し困っていた。


「まぁ、そろそろ寝ない?」


もう日を跨いでいる。

時間に気づいたみんなは、そのまま部屋に戻り、眠ろうと立つ。


そしてミリアはみんなの去り際に一言。


「明日のデザイアル、がんばろー!」


みんなは拳を上にあげて、おー!と叫んだ。

その後ルナは騒音のことに気づいて少し冷や汗をかいた。


◇◇◇


烈とエリカは互いに近い距離で、まるで冷たい布団を温めるかのようにそばに居た。


エリカがそう頼んできたので、烈は断る理由もなく流されるまま今の状況に至った。


「レツお兄ちゃん、明日はデザイアル本番ですね。」


明かりを消して、夜も更けているのでエリカは静かな声で話してきた。


「そうだな。絶対勝たなきゃいけない。」


烈の顔はとても穏やかではなかった。どちらかと言うと怒りの方に。ただ、どこか子どものようにワクワクしている。夢を叶えられるのが嬉しいようだ。


「レツお兄ちゃん、一緒に頑張りましょうね。」


健やかな笑顔を向けられた。

烈はその言葉のせいで少しだけ感情を忘れていた。


◇◇◇


ついにやってきた。デザイアルの戦い。

この戦いを制したものが、この世界を制す。


烈、いや烈達の目標を達成するためにこれまで頑張ってきた。


朝、みんな集まり、ある程度の作戦を話した。

そして最後にはみんなで声をあげる。


「勝つぞ!」


「「「「「おー!」」」」」


烈達はデザイアル会場に着く。

1番先が見えない。それほどまでに多くの思想家がいる。予選を勝ち抜き、試練を受ける権利のあるもの達。


しかし予想外なことが一つだけあった。


予選に負け、本来いるべき無いものが。


「よお、久しぶりだな。エセ思想家。」


それはライララだ。

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