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第29話 お別れ

まさかこうなるとは思わなかった。


「いや離れない。この子は魔女だが、悪魔じゃない。この子も被害者だ。」


地面が揺れる。トルが怒っているようだ。


「お前は騙されてる。人間を沢山殺め、呪った一族だぞ。」


リヤが慌てて外へ出る。


「何やってるのみんな。」


「リヤ!家から出るな!」


そんなリヤを止めるトル。

トルが前へ進む。


「俺がそいつを殺す、どけレツ。」


そう言うが烈は


「嫌だ、俺はどかない。」


と反発する。

ミリアはあわあわと焦っている。


「邪魔するなら俺はお前を殺してでもやるぞ。」


以前のトルの冷静な態度とは真逆に、頭に血が上っているようだった。


「トル!落ち着いてよ。」


「落ち着いてられるかよ!魔女だぞ!仇だ!」


トルの過去が少しだけ見えたような気がした。

そして残酷な運命による引き起こされたくなかった戦いが始まる。


「俺はそんなことさせたくないよ、トル。」


「俺だってお前を殺したくはない。」


2人ともやはり戦いたくは無いようだ。


「違う。魔女もだ。」


烈は当然のように言う。


そしてその言葉を引き金に2人は激突する。

トルの強さに敵うはずがない。


「使わせてもらう。」


平等の天秤━━━━発動。


しかし何も起こらないように見えた。


「なんでだ?」


烈は焦る。


「そうか。」


烈は気づく。


「俺はこの状況に不平等を感じていない。俺はこの不平等を憎んじゃいない。」


そのままトルに思い切り吹っ飛ばされて地面を擦った。


「いってぇ。」


烈は傷を拭い、土を払う。

烈はトルに対して、親友に対して、何も敵としてなんて見ていない。その心が平等の天秤は揺らめかせたんだ。


「レツお兄ちゃん大丈夫かな……私のせいで」


ミリアがエリカに抱きつく。


「大丈夫だよエリカ、レツはエリカのせいでやってないよ。エリカのためにやってんだよ。」


エリカは少し安心する。

リヤがこの状況を何とか理解しようとしている。


「だいたいつかんできた。あの子は私達の仇の魔女。どういう理由か分からないけどレツはあの子を庇っている。魔女を殺そうとしているトルは困惑しているってことね。」


リヤの背後に怪しい影が潜んでいる。そして一口に食べた。


「えっ?」


リヤは連れ去られてしまった。


「平等の天秤がなくたって、刃向かってやるよー!」


烈はトルに教えてもらった体技のみで立ち向かう。


「かかってこい!」


正面で受けるのは厳しいので烈はひたすら受け流す。

その隙に反撃のチャンスを得ようとするが、中々見つからない。


そして避けられない一撃の瞬間。ミリアが叫ぶ。


「リヤが居ない!?」


トルの攻撃が止んだ。


「なに!?」


2人声が一斉に響く。

トルが周りを見回す。烈も同様に、しかし本当に見当たらない。


「リヤ?リヤ?」


トルは冷や汗をかく。

烈はミリアに聞く。


「それいつ気づいた!?」


「え、さっき!見た時にはもう居なかった。」


どうやら、ミリアも攫われた瞬間には気づいていなかったようだ。


「くっそ!どこへ行ったんだ!」


気が動転しているトルに烈は声をかける。


「落ち着け!とりあえず俺はこっちへ行く、お前は心当たりがありそうなところに行け!見つけたら合図する。」


トルは正気を取り戻し承諾した。


「あぁ、任せた。」


そして2人は別々に捜索し始めた。


「レツお兄ちゃん!私も連れてってください!」


よく分からないがエリカの手を引っ張って草むらの中へと入っていった。


「私の輝石で探してみます!」


頼もしい限りだ。遠いところは肉眼では見にくい。エリカが遠隔で探している間烈は近接で探す。


「リヤー!どこにいる!」


声を出すのは悪手だとは思うが、犯人を煽るには丁度良い。


「見つけた!レツお兄ちゃん!あっちの方向に居るよ!近い!」


そしてレツは全力疾走をする。そして同時に叫ぶ。


「リヤ見つけたぞーーー!!!トルー!!!」


そして草むらを抜けると平坦な土地が広がった。そこにはリヤと謎の男がいた。


リヤは攫われたあと不安で胸がいっぱいだった。


(なんでこうなるの?私ばっかり?)


「なにか私悪いことでもしたの?」


そう言うと攫った男は話す。


「あそこにデザイアル出場権を持っているやつがいる。しかも2人だ。お前を人質にして、出場権を奪うって魂胆だ。お前はあの中じゃ攫いやすかったからな。」


リヤは克服したと思った過去が蘇った。


トルと比較ばっかりされていた過去を。


(いつもこうだった。兄妹だからっていつも比較され劣っている私にばっかり棘が刺さる。2人きりになってあの村で過ごしてもう克服してたと思ってたのに、ただ逃げただけだった。)


リヤは涙を浮かべた。


「こんなのもう嫌だ、誰かと比較されたくない。私のままありたい。」


そして限界を迎えたリヤは口から言葉がこぼれる。


「誰か助けて。」


そして思い切り烈は謎の男にとびひざげりをかけた。


「ぐわっ!!」


「見つけたぞこのやろー!!」


男は驚く。


「なんでここがわかった!?」


烈は問答無用にリヤを男から引き剥がす。


「大丈夫か、リヤ。」


涙ぐむリヤを烈は優しく拭う。

雨は依然降ったまま。リヤの涙を烈は雨だと勘違いしている。


「ありがとう、レツ。」


背後から男が襲おうとしたが、トルが現れ男を逆に襲った。


烈は感謝をされて空気が一変したので烈は話を変える。


「お前の言葉聞こえてたぞ。比較されてたんだってな。まぁあんなクソ強兄貴が居たらそうなるよな。」


冗談交じりでそう言う。しかしリヤにとっては深刻な問題だと烈は察していた。


「平等っていうのはな、比較出来ないものなんだ。全部が同じでいい所が同じぐらいある。リヤもトルと同じぐらい、良い所があるんだぜ?」


リヤは微笑したあと


「何それ」


と言った。しかしまだ不安が解消されていないように見えた。そこで烈はトントンが言ったことを思い出した。


***


「レツ、もしリヤの様子がおかしかったりいつもより元気が無かったりしたら、そっと何かしてやれ。」


***


そして烈の顔は若干火照ったが、そっと


リヤの過去(トラウマ)を丸く包んであげた。


「っーーー!」


リヤの頬は赤く染め上がった。


「こ、これで大丈夫だろろ?」


呂律が回っていない。その態度にリヤはますます笑った。


「あはは、うん。大丈夫!」


「エリカだっけ?エリカもありがとうね。」


トルも男を消滅させたようだ。

幸いさっきの現場はトルに見られてはいなかった。


「トル、エリカとレツが私を見つけて助けてくれたんだよ。」


トルはびっくりする。


「魔女が……?人間を呪う立場なのに、人間を救ったのか?」


エリカは弁明する。


「私が産まれる前の魔女達はそうだったのかもしれません。でも私は少なくとも人間と生きたいです。」


トルは記憶との齟齬にすこしやつれたが、理解した。


「なんか俺も誤解があったようだな。とりあえず君は悪いやつじゃないことはわかった。ごめん。」


烈が辛気臭い雰囲気を壊す。


「よし!これで仲直りしたね!それじゃ、今日は仲直りと戻ってきた祝いとデザイアルへ送別する会を両立するぞ!」


トルが驚く。


「いや多すぎだろ。てかもうデザイアル行くんか?」


烈がため息をだす。


「5分前行動ってやつですよ。早めに出といて損は無いですよ!」


と言った。ミリアと合流して家へ入る。


そしてパーティーはゲストルームで開かれた。

部屋は相変わらず変わってなく、申し訳程度の飾りが着いていた。


「レツくん、貧民天国はどうだった?」


烈は揶揄する。


「貧民の天国だなんて笑わせますよ。結局は貴族のためじゃないですか。」


トルが笑う。


「言えてるな!」


エリカが烈の袖を掴む。


「レツお兄ちゃん。」


その言葉にリヤは反応する。


「レツ「お兄ちゃん」!?」


烈はびっくりする。


「なんか突然言われ出してな。」


と慌てて弁明した。


「エリカ、レツとどういう関係なの!?」


エリカはニヤーっと笑う。


「運命共同体です。」


リヤは空いた口が塞がらず、そのまま俯くとゆっくりと見上げて


「お、お兄ちゃん?」


と告げた。烈の身体は一瞬震えると、また再開した。

トルがこちらを見て笑っているが、目だけが真顔だ。


「話しよっか、レツお兄ちゃん。」



と、そんなこんながあり、仲直りと戻ってきた祝いとデザイアルへ送別する会は無事幕を閉じた。


夜、コンコンコンと烈の部屋にノック、開けてみるとそこにはリヤがいた。


「なんだリヤ?」


モジモジしていてなにか恥ずかしそうにしていた。


「あんた、エリカとも寝てるのね。」


「まぁ、エリカがこうじゃないと嫌だって言うし、まぁもう寝てるからいいじゃない。」


リヤはため息を出した。しかしそのおかげで緊張が若干ほぐれた。


「これ、助けてくれたお礼に食べてよ。」


となんとデザートを作ってくれたみたいだ。しかもなかなか量が多い。


「ありがたいけど……。」


「さっきのやつのせいで腹いっぱいなんだけど」


リヤは目が点になる。


「せっかく作ったんだけどなぁー、一人で食べよ。」


そんなリヤを烈は止める。


「いや、食べる。全部食べるよ!」


そう言って本当に完食した。

烈はリヤのことを深く考えているようだった。


そして食べ疲れしてそのまま寝てしまった。


「本当に食べた……」


リヤは嬉しがる。そして烈が起きないことを確認して赤裸々に一言こぼした。


「しゅき……」


そして翌日、朝一番に出発する。朝食を済ませた後、今度こそ最後のお別れをする。


「これで本当の最後だな。寂しくなる。」


烈が寂しげにそう言うとリヤとミリアが泣く。


「そんな事言わないでよー!レツー!」


「そうだよー、また会えるかもしれないじゃーん!」


烈は困ってしまった。


「会えなくなるのは少し寂しいですよね。」


エリカも便乗してきた


「でしょ?エリカも寂しいよね。」


リヤがよしよしとエリカを撫でる。


そうするとトルがフォローに入る。


「まぁ、次会うときはこの世が平等になったらだな。」


「そうだな。」


昨日は対立してしまったが今日は親友と胸を張って言い合える。


烈が村全体に叫ぶ。


「じゃあな!お前ら!元気でなぁぁ!!!」


村中が騒ぐ、みんなが烈たちを送迎してくれた。


そして烈達は村を出る。次の目的地はとうとうデザイアル。


この1ヶ月成長した仲間達と敵達。


そしてまだ見ぬ強敵。デザイアルを勝ち抜いてシャルトを手に入れることが出来るのか。いや手にしてみせる。


烈はそう心に決めて歩みを進める。

前文 完

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