第24話 治療の応用
烈とミリアは戦闘により多大な傷を負った。その治療の為にソクリ街のトントンに会いに来た。
綺麗に加工された石がソクリ街とそれ以外の境界線を張っている。
「街並みが凄いなぁ、どれもこれも綺麗に作られている。」
ミリアも目を輝かせている。すごそうな店をミリアは片っ端から行こうとする。
そんなミリアを烈は止める。
烈達は街中へと足を運ぶ。
「たしかトントンさんはわかりやすい治癒業を営んでいるらしい。……わかりやすいってなんだ?」
ともかく歩いてみると、目が勝手に視界に入れたものはストロボ照明に包まれた1つの建物だった。
でかでかしく看板が置いてあり、そこには
「ダイナミックドラゴンハート……?」
という奇妙な名前をした建物があった。
ミリアが突然。
「かっこいい……!」
と言った。烈はそれを聞き開いた口が塞がらなかった。
そんな感じで店の前で呆然としていたら中から誰かが出てきて
「やぁ君達、用だね?ここに用なんだね?ようこそダイナミックドラゴンハートへ!さぁさぁ!」
「え、え!?」
と、長ば強引に中に入れられてしまった。
そして椅子に投げ込まれ烈達を連れ込んだ女性が話を始める。
「さぁ、今日はどこを治して欲しいんだい?」
と言われたことから察するに恐らくここは……治癒業だ。もしかしたらこの女性がトントンかもしれない。
「あのー、トントンさんですか?」
と、聞くと突然女性が立ち上がりボサボサとした黒髪がふわっとなりその合間の赤髪が見えた。
「質問を質問で返すなぁー!!!」
と言って机を持ち上げようとしたが、「はっ!」となっていた。どうやら我に返ったようだ。
「すまない、興奮するとついこうなってしまうんだ。」
烈は「あはは……」と苦笑した。
落ち着いたところで話し始めた。
「トントンって随分久しぶりな呼ばれ方だ。トルの知り合いかい?」
「はいそうです。友達です。」
「そうかそうか、あいつに友達……がねぇ〜。」
その言葉に引っかかった。
「トントンさんとは友達じゃないんですか?」
トントンの目がキリっとなる。
どうやらなにか深い事情があるようだ。
「あたしらは戦友だった。まぁ、かなり昔の話だけどね。」
烈は思い出す。トルは戦いが嫌いだったこと。戦いを嫌いになるということは戦いを経験していないとその考えには至らない。
「まぁそれはいいや、今日はどした?治癒なら負けとくよ、1割ほど」
少な!と思ってしまったが、よく良く考えれば減らしているだけありがたいものだ。村長達のおかげで食費もかからないのでお金の心配はなかった。
「そういや挨拶まだだったな、あたしはニトン・ヴェスパー。」
トントンはどうやらあだ名だったらしい。恐らく2トンという所に引っ張られ、より発音しやすいトントンとなったんだろう。
「俺はレツ・スズキ。こっちはミリア。」
「どもー!」
そうして病院の待合室のようなところから診察室へと足を運ぶと、診察用のベッドがあった。
「じゃ、施術するよ。横になって2人とも。」
と、言われるまま横になる
「よし、やるよ。」
そう言うとトントンは目にかかりそうな髪をかきあげ見えやすくした。その時に見えた真面目な顔にはギャップを感じた。
「一応説明しておくと、私の潜在輝石は分割。君の体に手のひらを置く。そうすると」
ドクンっと繋がった感じがした。
「……すごいなこの傷。何したらこうなるの?」
烈は説明に困っているとトントンが
「大方、誰かと戦ったんでしょ?おそらくこの傷は何かで圧迫もしくは膨張させたことによる傷?」
と代わりに説明してくれた。
治癒業を営んでいるだけあって傷の出来方をわかっている。
「まぁ、少し痛いかもなー。ま、行けるっしょ。」
そしてトントンはそっと腹を切るような感じで指でなぞる。
「分割」
そう言うとピリッとする痛みが何回もした。それと引き換えに身体の内の痛みがスッキリと消えていた。
「そしてこの治癒輝石で、治癒。」
見てみると烈の身体の至る所に軽めの傷がある。それを順に直していく。
「ふぅーこんなもんかな」
見ると傷はスッキリ良くなっていた。
「治癒輝石は大きな傷は治せない。だが小さな傷は何度も治せる。だから私の潜在輝石で傷を分割してそれを治す。というのがあたしの仕事。」
理にかなった、発想力のある考えだ。
烈は興味深いと思った。
ミリアも同じように治した。
「おぉ〜ほんとだ!一瞬ちょっと痛かったけどすぐ治った!」
そして待合室で烈達はトントンと話す。
烈はふと思い出した。
「トントンさん、なんで最初の時、無理やり俺達を上がらせたんですか?」
トントンは腕を組み答えた。
「客が少ないんだ。店の前で呆然とされたら客だと思うだろ普通よぉ。」
思わない。しかしこんなにも完璧な治癒技術なのになぜこじんまりとしているのか。
「なんでこんなに客が居ないんですか?」
トントンは頭をかきながら苦笑する。
「みんなお金が無いし。痛い、よりゆっくり時間かけて治す方が安上がりなんよね。……それに」
「それに?」
「ここは貧民天国だ。怪我する方が少ない。」
貧民天国?それはなんだ?
貧民が天国のような気分になれる場所ということだろうか?
「いいかい?この世界には豊富に塩があるところがある。海と呼ばれるものだ。」
「海から塩を汲み上げるには貧民街を跨がなければならない。だから貴族達は言ったんだ。「海までの道真っ直ぐは貧民街ではなく邸宅街にする。」と。そうして貧民街の中の邸宅街として貧民天国なんて呼ばれている。」
確かに塩を採取するには岩塩と海水が必要だ。沿岸部は全て貧民街。
だからこんなに雰囲気が違ったのだ。
「ま、こっちの事情はこんなもんだ。トルに変わりは無いかい?リヤちゃんも元気してる?」
ここでの話を終え、今度はこっちの話をすることに。
「トルもリヤも元気だよー!多分昔と変わらないんじゃないかな!あ、あとゲレナ村長もー!」
ミリアがペラペラと自慢気に話す。
トントンがほっとしたような表情になる。
「そうか……、あのリヤちゃんがね。」
明るく振舞っている彼女は昔は違うとでも言う気なのだろうか。少し暗い表情をトントンはした。
「レツ、リヤちゃんのこと頼んだよ。彼女は寂しがり屋だから。」
烈は驚愕したあのリヤが寂しがり屋だったとは。
「強い兄を持つリヤちゃんはねどしてもトルと比べられちゃうんだよね。トルはそんなこと気にすることなくリヤちゃんと接してるけど、周りの目はごまかせないよね。」
ミリアが机をダンっと叩く。
「私はそんなこと思ってないから!トルもリヤもそれぞれいいとこあるんだから!」
ミリアが必死に反論する。
その様子にトントンは驚いている。それを見兼ねて烈は
「落ち着けミリア。」
ミリアを制止した。ミリアは烈を見る、しかし烈の目はギンギンになっていて身体が震えていた。
そうするとミリアは口を閉じた。
「ごめんな。ミリアちゃん。」
トントンはミリアに謝罪をした。
「レツ、もしリヤの様子がおかしかったりいつもより元気が無かったりしたら、そっと何かしてやれ。」
当然のこと。しかし何かやれと言われてもピンと来ない。
「何かってなんですか、抽象的すぎてわかんないんすけど。」
そう聞くと立ち上がるように言われ、言われるがまま立ち上がりそして、
「んなっ!」
「はわぁ……!」
暖かく柔らかいものに包まれた。顔で感じた程よい肌の質感と圧迫さに烈はもがいている。
「こんな感じにな。」
トントンはニヤっとする。
烈は動揺している。
「何しているんです……?」
あわあわとミリアは手を口元に寄せている。
そしてトントンは席に戻り
「ともかくだレツ、あいつらが困ってたら助けてやってあげろよな。」
烈も落ち着いたようでミリアを呼ぶ。
そして治療費を払いミリアと一緒に店を出る時に1つ。
「当たり前ですよ。なんせ俺は平等を目指す思想家っすからね。」
と、捨て台詞を吐いていった。
そして店は以前と同じように静寂を取り戻した。
「面白いやつと友達なったな、トル。」
◇◇◇
日も暮れるというのに街どころか人間すらも賑やかさが絶えない。烈達は今日の泊まり宿を探している。
「少し不安になってきた。宿なんてあるのだろうか?」
あくまでもここは貧民街。貴族と接触しかねないところに泊まりたいなんていう人間はそうそういない。
そう不安になっていると、人気が少ない道が1つある。そこだけは街灯に包まれていない。なぜなら家が背面で向き合っているため、つける必要がないのだ。
その証拠にゴミが投棄されていた。
しかしよく目を凝らしてみるとゴミでは無い何かがある。なんだろうか人形……?。
それはバタッと倒れた。
「ねぇ、レツ。あれ人間じゃない?」
瞬間、烈は走り出した。




