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第2話 あくまでこれは必然に

少女の叫び声に烈は過剰に反応した。


何が起こっているかは分からない。だが、助けを求めてるなら手を差し伸べてやりたい。


路地の奥、豪華な服の貴族と私兵たちが少女を取り囲んでいた。少女はボロボロな姿で、怯えた目で貴族を見上げていた。


「貧民の分際で俺に逆らうとはな。連れていけ!」


どうやら騒ぎが起こったようだ。しかし貧民だと?烈は、その言葉を過剰に受け取った。

貴族の命令に、私兵が少女の腕を掴む。


「てめえ、ふざけんな!」


烈は叫び、飛び出した。そしてそれと同時に言葉を荒らげる。


「なぜ、貧民などと差別する!?お前みたいなクズがこの世界を腐らせてるんだよ!」


貴族が鼻で笑う。他の兵士が嘲笑を始める。


「なんだ、このガキは?」


私兵の一人が拳を振り上げる。烈は咄嗟に腕を上げた、普通なら暴行罪。しかしここが異世界ならば、


烈は思う。


日本の法律は通用しない。そしてここが異世界ならば、


俺には何かしら能力というか才能があるはずだ。

それに賭ける!!!!


しかし意外なことに


烈は私兵に叩きつけられ衝撃で地面に倒れた。


「ぐっ…!」


以前も言ったように戦闘経験がまるでない烈には勝ち目はなかった。そして烈の腹に私兵の足がめり込み、意識が遠のく。


「こんな奴ら…許せねえ…のに」


烈はそう呟き、また地面に倒れた。


意識が遠のく中、風が吹く音が微かに聞こえた。


◇◇◇


「ねぇ、大丈夫?」


あれから数分経ったあと、軽やかな声が烈を呼び戻した。目を開けると、黒髪のツインテールの少女が覗き込んでいた。15歳くらい、黒の軽装に短剣を携えている。身軽そうな格好。きょとんと烈を見る。


先程の女の子だった。

烈を心配しながらしゃがんでいた。


「死ぬところだったよ?、英雄気取り!」


「…英雄気取りじゃねえ。くそ、痛え…」


烈は体を起こし、少女を睨んだ。


「お前、名前は?」


烈は名前を聞く。

この世界がよく分からないからだ。


「ミリア・クロウ、よろしくね。んで、君はなんであんな無茶したの? 死にたいの?」


ミリアはニヤリと笑う。烈は立ち上がり、ボロボロの体を押さえた。その体は細かく疼く。


「あの貴族のクズが…君を虐めてた。貧民という理由だけで、、黙ってられるかよ。」


ミリアは目を丸くした。


「へえ、中々熱いじゃん。でもさ、ルミナリスじゃ貧民が貴族に逆らうなんて自殺行為だよ。まぁ、正確には私は少しぶつかっただけだけど」


烈は吐き捨てて言う。


「ぶつかっただけ?結局差別じゃねーか」


そう感じたあとミリアの言葉で新たに知識を得た。


(ミリアはルミナリスと言った。この国の名前か……。)


本当にここは「異世界」だと言うことがわかった。

そして鈴木烈は死んだということも。


「この一連の騒動を見たところ、確信に変わった。この世界は不平等だ。確実に根本から腐ってやがる。こうなりゃ、俺が変えてやるしかねぇ。」


ミリアは笑い声を上げた。


「不平等を変える? 面白いこと言うね! でも、そう簡単に死なないでよね。君弱いし!、それと……せっかく助けたんだから。」


烈は「助けた?」と聞き返す。ミリアは得意げに短剣を見せた。


「私の風輝石魔法でね。風の刃で余裕でビュッと!」


烈はミリアの軽快な態度に苦笑した。


「…へぇー。つまり、助けられたんか俺は……」


自分で助けに行こうとしたら返り討ちにあい、その上助けにいこうとした人に助けられるとは……と、烈は自分の弱さに悄気っていた。


「ねぇ名前教えてくれる?」


名前……、ミリアという横文字。ならば合わせる必要がある。


「レツ・スズキだ。」


「レツ、でもありがと、レツがいなかったらきっと反撃は防がれたと思う。」


感謝をされた。その笑顔はとても健やかで元気だった。なんだか複雑な気持ちだ。


そしてミリアの言っていた言葉。

風……きせき?魔法……。

恐らく魔法というところから異世界での魔法というのがここでは輝石だ。

烈はそう理解した。


その時、路地の奥で小さな鳴き声。


子猫がゴミ箱の陰から顔を出していた。

ミリアの目がキラリと光り、子猫を抱き上げる。


「うわっ、めっちゃ可愛い! どこから来たのぉ?」


子猫と、烈をチラチラ見て、


「お前、烈より100倍可愛いな!」


突然のミリアの言動に、烈のシリアスは打ち砕かれた。


「は? 俺と比べんなよ!」


烈はそう突っ込む。


「えへっ、じょーだんだよ」


ミリアの無邪気な笑顔に毒気を抜かれた。


そんなこんなで烈はミリアとこの世界について貧民街を散策しながら色々聞いてみることにした。


「なぁ、ミリア?、このルミナリスってどういうとこなんだ?」


ミリアは指を口に当て、上を向いて、んーと言いながら考える。


「ここはね、ルミナリスでも割とハズレの方だよ。正確に言えば王都からね。」


「王都?」


王都、その言葉に烈は引っかかった。この世界は王政を採用しているのか?。立憲君主制のような制限のある統治ならまだしも、支配されるという仕組みは良くない。まぁ一方的な推測だが


「この世界の仕組みは輝石が中心なんだよね。輝石が発掘されて文明は発展したの。」


輝石というのがさっきミリアが使ったやつだ。恐らく魔法のようなものだと推測した。いや、もしくは魔法を使用する触媒のようなものだろう。


俺も使ってみたいなという気持ちもある。誰もが憧れる魔法に。


文明が発展し科学も発展した。そして今の世界ができたみたいだ。


「今の生活は好きか?」


そう言われたミリアは驚いていた。どうやらそういうことを考えるのは初めてのようだった。


「私は生まれた頃からここで育っていてね。たまに来る貴族たちは怖かったけど、何もしなければ何もしてこないから大丈夫だったよ。」


そんな、平和を知らない人が、劣悪環境のことを普通だと感じているその現状に烈の胸が締め付けられた。

ミリアが、照れくさそうに言う


「だからこの生活は……好きだよ!」


そして今度は烈に質問をする


「それはそうとレツはどこから来たの?ここにいる人じゃないよね。私、だいたいの人の顔は覚えてるけどはじめましてだから。」


鋭い。しかし烈が本当のことを言っても混乱させてしまうだけだ。


「俺は貧民街生まれではない、まぁちょっとここのはずれのとこ出身だよ。」


「ルミナリスのはずれのはずれ?」


結局混乱させたみたいだ。


◇◇◇


それから話をしながら貧民街を巡った。


散策して思ったこと。

ここの生活水準は相当酷い。かなり最悪な環境を過ごしているようだ。鼻をすする。ツンとする匂い。刺激臭がした。そして広い。


「ほんと最悪だなここ。」


烈がそう愚痴を吐くとミリアは苦笑いをする。


「まぁね、邸宅街の方になるといくつかマシだと思うよ。」


烈がなるほどと手を打つ。


「ミリアは邸宅街に行ったことはあるのか?」


烈がそういうと

ミリアは恥ずかしそうにした。


「実は行ったことないんだよね。」


烈は何となく察した。

やはりここに閉じ込められているのだろうか。

烈は輝石のことを聞いてみることにした。


「ミリアのその風の輝石ってどんな感じで使うんだ?」


そう言うとミリアは笑顔になり、るんるんとポケットから輝石を取り出して握る。


「この風の輝石というかほぼ全ての輝石は握ると、魔力と引き換えに能力が……ふぅん!!!!」


ミリアが力むと、風がボワッと上がった。

烈は驚いた。流石は異世界、自然現象を作ることができるのかと。


しかし魔力。烈自身には魔力があるのだろうか。


「ねぇレツ!、この輝石を思いっきり握ってみていいよ。」


風輝石を貸してくれた。そして烈は力いっぱい握った。それは手のひらに痕ができるくらいに


ホワ〜ッ


しかし烈が起こした風は、微弱。まるで弱の扇風機のように弱かった。

それをみてミリアは腹を抱えて笑う。


「あはは、レツ!全然魔力無いじゃん!あははは」


烈は恥ずかしさが怒りに変わった。


「うるせー!魔力に偏りがある方がおかしいに決まってるだろ!」


烈が両手を重ね更に力を込める。


(なぜ俺だけ!、不公平だ!俺にも力を!)


輝石がさらに反応する。一瞬白く光った。しかしその光は減少していき、やがて何も無くなった。

いや、残ったのは烈の疲労だけだった。


「ゔぅ……しんどい」


烈は疲れて膝に手をついた。

ミリアが疑問に思う。


「なに?さっきの、私の知らない光り方したよ。」


どういうことだ?

あの白い光が通常でないなら一体……?烈の隠された力なのだろうか。


ガサガサと、何かが動いた音がした。

烈は真っ先に警戒する。


「さっきの貴族か!?」


烈とミリアが一通り見回ると突如、より一層路地の空気が急に重くなった。


後ろになにかおどろおどろしい気配を感じた。


烈とミリアが振り返ると、黒いローブの人物が立っていた。フードの下から覗く顔は息をのむほど美しいと思える。フードからこぼれ落ちる影を持つ銀灰髪は大変趣がある、透き通った肌、中性的な声。聞くものを魅了してしまうような音。


「こんにちは、君の名前を教えてくれるかい?」


烈は更に警戒しながら構える。


「てめえ、誰だ? 」


その姿は上品で、とても厳かだった。

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