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第14話 かつての異物

ルミナリスの荒野、蒸気管が絡まる街道の果て。烈、ミリア、ルナ、セレナ、リズの五人は、神願の試練「デザイアル」の参加資格を手にしていた。


烈はボロボロのジャケットを羽織り、ミリアとセントラルの方へ来ている。予選の傷がまだ疼くが、目は燃えていた。


昨日の予選、烈達はゼノやガルド達の戦いを見て心がズタボロに朽ちた。デザイアルにはこれと同等、もしくはそれ以上の実力者がいる。


それを超えるべく、烈達は自己を鍛えることにし、それぞれの修練所へ、出向いた。


烈とミリアはルミナリスの邸宅街の中央セントラル・ルミナへ行っていた。


セントラル・ルミナは治安が良く、まるで貧民街差別がないような生活を営む。

ひとつ気になるのは中央の建物の規模、あれは城と言うべきだ。もしくは王宮。そうなればここは城下町と言える。


烈は思った。現代の日本ではない地面の塗装、車等の交通手段はないので、地面はアスファルトではなくクリーム色の地面なんだと。どこかしこも洋風な建築で、治安の良い海外へ居るみたいだった。


ちなみに烈は立って、走れるほどに傷は回復した。

烈とミリアは、輝石の店へ行きパワーアップを図ろうとしていた。


「いい店はあるかしらねぇー」


オネェ口調で烈は店を転々としている。


ミリアが正規に購入した果物を齧り、烈の後についていた。


烈達は予選を勝ち抜いた時に、賞金をもらった。ミリアに金は危ないと思い、烈が預かっている。ミリアは最初、ずるーいと顔を膨らませていたが、なにか買ってやるとすぐ笑顔になった。


「おぉ、ここなんかいいんじゃないか?」


輝石の店へ足を踏み入る。中は明るく包まれており、様々な輝石が瓶に入っている。高価で能力も凄まじいような輝石は厳重に保管されている。


烈は手頃な輝石を数個選んだ。ミリアはうーんと、どの輝石にしようかと迷っていた。


烈は会計を済ませた。その後ミリアが欲しい輝石があると言ってきたので、見てみると先程言った、高価な輝石を指した。


「これ欲しいー!買ってー」


と、子どものように無邪気に頼んできた。

この輝石は、永久に使えるタイプの輝石で、能力は輝石の力を正確に制限ができるというもの。精密動作が上がって応用のしやすくなる輝石だ。


しかし代償として少し魔力の容量が少なくなる。つまりゲームで言えば最大MPが少し減る。あまり実用的ではない。


だから烈は


「ダメだ。高すぎる、すぐ金が無くなってしまうぞ」


この輝石は、所持金の半分はする。1ヶ月の生活が苦になるレベルだ。


欲しい欲しいーとおねだりをしまくるが、ことごとく無視する烈。だが、烈は少し過去を思い返し……。


「ミリア、これを買ったらお前はどうなるんだ?」


さっきまでの烈は、根拠なしの否定ばかりであった。それが転生前の鈴木烈の心と、重なった。根拠なしの否定ばかりをされた彼はとてつもない激情を持った経験がある。


自分にされて嫌なことは人にはしない。


そうしてミリアは慌てて、自己の能力を説明する。


「私の輝石って、風の力じゃん?だから、えーっとだからじゃなくて、でも私の輝石は大雑把で上手く照準も合わないし応用も効けないから、無理やり輝石の力を制限して応用がしやすくしたい。例えば、風の力を細くしたら鋭い空気の刃みたいなの出来ると思うんだ。だから強くなれると思う。」


と、あたふたしながら理由を話してくれた。ごもっともな意見で筋が通っているように見える。


「でもさ、一番の理由は輝石の力を封印して、自分の力を上げたい。」


衝撃的な理由。横着をせずに誠実な努力がしたいと言う。真剣な眼差し。


「俺もそう思ってたんだ。輝石とかいう前に自分の基礎をあげるべきじゃあないかってね。」


烈もミリアと同じ気持ちだった。

ミリアの心意気を買い、輝石を仕方なく買ってあげた。


ミリアは喜んだ。それは子どものように。そしえすぐさま首につける。

烈は今後の生活についてやりくりしなければならないので頭の中で色々と計算している。


デザイアル予選は、セントラル・ルミナの近くにあるので当然、噂は流れる。それは予選出場者を褒める声もあり、当の本人もそれを聞く機会はある。


「デザイアルの予選見に行ったか?」


烈が街中を歩いていると、声が聞こえた。今現在予選はやっている最中だ。


「あー!あの天災(カタストロフ)様が、大暴れしたやつか!」


ガルドの話が出ている。たしかにあれは凄かった。

それを超えるために修行をしている。


「あいつもかっこよかったなぁ、なんて言ったっけゼノ?」


ゼノ。ミリアと同じ時期に会ったここの人間。

いまだに謎が深いが、強いというだけわかっている。


「そういえば!第1試合のやつ、あのーなんだっけ!あいつすごいよなぁ!」


烈は期待を膨らませた。自分の話が出てくるかもしれないからだ。前例が無く、異例だと思われる平等の天秤の能力。そして基礎不足なのにデザイアル出場を果たした。


「ねぇねぇレツ、あの人たちレツのこと言ってんじゃない?」


小声でそういうミリア。ミリアもあの話を聞いていたようだ。


「レツ・キツツキだっけ?あいつ凄かったよなぁ」


キツツキ……。俺はレツ・スズキだっつーのに。

凄い……承認欲求満たすことが出来るかもしれない。

烈は、耳を大きくして聞いている。


「あいつ卑怯な戦法使ってたよなぁー、力弱いからって大剣捨てたり、しがみついたりして……やっぱ漢は正々堂々と戦わないとな!」


烈はカンカンに怒った!


「なんだと!?」


すぐさま飛び込もうとしたところ、ミリアに止められる。必死に止められる……が、なぜか止まらない。


「輝石がさっそく効果を発揮しているー!!」


着々に大地を踏みしめながら進む。


「オラァー!おまえらァ!」


「うわぁ!!!レツ・キツツキだぁー!」


街の人達は逃げ出した。


烈は叫んでいる。輝石を外したミリアに連れられながら。


そして烈はセントラル・ルミナを出る。


「てかなんでさ、ルミナにずっと居ないの?」


落ち着いた烈は、前を向きながらミリアに話す。


「誰かさんのせいでただでさえ生活費が足りないからさ、修行も兼ねて貧民街で泊まるの。」


それを聞いてミリアは機嫌を損ねる。


「レツがいいって言ったんじゃん。」


レツは後ろを振り向き、優しく微笑んだ。


「嘘だ。元から貧民街で修行する予定だったんだよ。」


ミリアはそっぽを向いてしまった。

レツは「はぁー…」と言いながら進路を進める。


しかし一月の間どうすれば格段に強くなるだろうか。一般的な方法では今と変わらない結果となってしまう。しかしここでは俺が思う一般はない。恐らくあるのだろう。不平等に力を底上げする何かが。


「ねぇレツ、貧民街の中でも具体的な場所は決めてないでしょ?」


と、時間が経って先程のことを忘れたミリアがそう聞いた。


「あぁ、たしかに決まってない。」


烈は貧民街はおろか、ルミナリスに対する地理的状況があまりわかっていない。


「じゃあ、私のオオスメの場所教えてあげる!私はもうみんなに顔を知られてるからきっとレツもすぐ覚えられて馴染むはずだよ!」


烈は思う。不平等に生きているのにこんなに明るい人を見ると嫌でも覚えてしまう。少しだけ烈は笑みを浮かべた。


関所が無いところを通り、貧民街へ入る。

セントラル・ルミナを思い出す。

怒りが湧いてきた。しかし抑える。何のためにここに来たかを再確認する。


「んで、どこにあるんだ?」


レツはミリアに確認する。


「割と奥の方なんだよ!さっ、早く行かないと日が暮れちゃうよ!」


貧民街は広い。広大だからこそ支配が届かない。裕福な所を知らない人達もいるのだろう。

ちょっと小走りで向かう。しかし烈は体力が少ない。7分そこらでバテてしまった。周りは、もう貧民街の景色しか見えない。


ミリアに呆れられてる。ミリアの顔から左に逸らしたところにあったのは、煙。


「火事かもしれねぇ!行くぞミリア!」


そして煙が出ている方向に寄り道することに、


「えぇ?」


烈がさっきの疲れが嘘のように全力で疾走する。ミリアも烈の後を追いかける。


そしてそこにあったのは想像を絶する……いや、想像すらままならない光景が広がる。


地平線。日本でも極僅かでしか、というか普通の住宅街で見られない。


地と空の境界が水平に見える。だが、少し周りを見ると家は普通にある。そこだけが抉り取られているのだ。


1つの街が丸ごと消えたような広さ。誰がこんなことを?


「あぁー……。これは、随分昔にあったものだよ。」


この風景は昔ながらのもの。確かにこの風景がさっき起きたとすれば、音がしないはずがない。


「誰がやったんだ?こんなこと。」


町が崩壊した。何か理由があるはずだ。ないならそれは貧民を差別する何かだ。自然災害ならこんなに綺麗にえぐれるはずがない。


「昔、この世界のどこかに、魔女の一族がいるとされたんだ。そいつが人間に対して発動した輝石の効果。」


なぜ人間に対し輝石を発動させたのか……。それは憎しみなのか、愉しみから来てるのか。後者なら烈は許さない。


ここは戦争の跡なのだろうか。

ミリアに聞いてみる。


「私もそこまで知らないけど〜……。かなり前にね国全体で起こった戦争があったんだ。その時に起きたらしいんだけど、なんでかは分からない。」


動機があやふやではあるが、街の人たちをも顧みない行為からとてつもなく無慈悲な一族というのが分かる。


「ただ私が聞いた話だと、かなりの被害があったらしい。」


烈は、歯を食いしばりすぎて嗚咽してしまった。


いやまて、この悲劇が今ここで起こったことじゃあないならあの煙はなんだ。


「あと、レツが追いかけたあの煙は、あの家がゴミを焼いているだけだよ。」


抉られた土地の周りの家を見ると、レーキや鍬、畑道具などが置いてあり、人が住んでいる気配はあった。

烈はホッとした。大事がなくて良かったと思った。この跡に関しても後々情報を集める必要がある。


「ちなみに魔女なんだけどね、大昔に絶滅したと言われていて、今は恐らくいないと思う。」


ミリアは淡々と話す。この世界は様々な民族がいるのか……?。

そして何かを思い出したかのようにミリアが話す。


「あーあと、この跡は1人の魔女の力らしいよ。」


この力……魔女が1人でもこの威力はさすがに怖い。


とりあえず、烈はこの場を後にして小走りで町へ向かう。


そうすると村が見えてきた。

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