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第13話 予選を勝ち抜くモノ。その2

ガルドは大剣を構える。


「そうか……ならば」


セレナは冷や汗をかく。



「 敵だな 」


ガルドはライララと比べほどにならない程の自身の大剣を構えた。


「平等の━━」


平等の天秤を発動しようとした時、ガルドは武器をおろしていた。


「やっぱ辞めた。別に抜けるのは自由だもんな、セレナを殺せーなんて言われてないし、」


皆は目が点になり、体が脱力した。


「驚かせやがって」


「レ、レツさんもう行きましょうよ。」


セレナがこの場にいたくないので烈に催促する。そして烈は仕方なく、その場を後にした。



時は流れ闘技場にて。烈達はガルドの情報を得るために、観客席へ来ている。


「んっんー!さくっと決めちゃいますか!」


自信満々にガルドがリングへ上がる。


「うわ、いかにもパワーって感じの人ですね。」


ガルドの試合相手である、ソルト・シュンガが上がる。白装束に、ビシッとした黒スラックスを着ている。見た目的には優男である。タレ目でもツリ目でもない中間な目……ジト目と言うやつだろうか。白メッシュの黒髪。


ガルドが言う。


「スカした野郎だ。かかってこいよ。」


「まだ試合は始まっていません。死に急がないでくださいよ。」


2人は挑発し合う。緊張が高まりきったところで試合のゴングは鳴る。


すかさずガルドが地輝石魔法を放つ。地面が揺れ、岩が飛ぶ。


「動体視力というか反射神経……並外れてますね。」


ソルトは手を翳し、飛ぶ岩を止める。


「ほう、興味深い輝石だ。」


「感心してる暇は無いよ。僕からもどんどん行きますよ。」


そう言うとおり、ソルトは手を交差させる。するとガルドは見えない()()()に囚われる。しかし、ガルドは自らの怪力で、


「ふんぬ!」


なにかを飛ばした。その時ソルトの手の交差も解けていた。


「空間を操る……大気ごと操るタイプだな?」


と、推測する。


「ご名答よ、あなたはそのまま地面を操るタイプみたいですね。」


「そうだぜ。」


それぞれの能力の開示がすみ、ここからは実力勝負と化す。


「貴様を敗北へといざなってやろう。変動帯(プレート)


突如地面が更に割れる。会場がボロボロになり、原型を留めていなかった。


変動帯地質現象説(プレートテクトニクス)シーン1、広がる境界。」


彼が指定したプレート、リングが移動を開始した。そして


地震が起きて、プレートの窪地に溶岩が吹き上がる。地震はより深くなり、


グラグラと闘技場全体が揺れていた。経つこともままならなくなり、ソルトは、体制を崩す、


「ふっ、隙だらけだ。行くぜ?」


輝石が光る。


「侵食!」


ガルドの大剣がオーラを纏い、それがソルトへ襲う。

勝ちを確信するが、


「甘いね。実に。」


バゴーンッッ!!


カウンターを見事に食らう。


「あれすごいですね、急所を狙ったのですが。」


ガルドは寸で急所を避けた。さすがの動体視力。


「まぁな、それよりもお前どうやって……」


問いかけると素直に答える。


「簡単ですよ。慣性の法則です。空気を揺らしました。」


慣性の法則を使い、空気の振動と地面の振動の動きを完全に一致させたのだ。そして安定を生んだ。


どちらも下がらない攻めと攻め。ガルドが動き出す。


「運搬。」


床を破壊しながら、河川の如く攻める。


「うーむ。空気よ轟け(インパルス)


ソルトがそういうとゴロゴロと辺りが泣きはじめた。そして、


「これは使いたくなかった。僕にも被害が及ぶ。だが、あなたは強いですから。使わせてもらいます。」


そう言うと、


「破壊し、降臨させます。大気成層圏(オゾン)


して、青白い光がさす。それは青臭く、森林を感じさせる空気の匂い。しかしどこか痛々しく、ある1人は呼吸を荒くしている。ガルドだ。


「皆さん、これから空気をあまり吸わないようにお願いします。でなければオゾンを吸い、死ぬ恐れがありますよ。」


そしてガルドを向き直し、


「あなたはもう終わりです。」


オゾン層を呼び出した。必殺技というものだな。烈達観客は、すぐさま逃げるか、布等で口を覆い、空気を吸う量を調整した。だが、あまりにも熱い。灼熱を感じる。ガルドがよろめく…しかし


「いや、まだ終わらんよ」


「換気しようぜ、間欠泉。」


地下から水蒸気が立ち上がる。そしてオゾンはバラバラになり、徐々にいつもの空気を取り戻していた。地下のマグマにより、温められた地下水が飽和状態になり一気に吹き出した。


それと共に、瞬く間にソルトも上にぶっ飛んだ。


「さてと、次で決めるか。」


ソルトは大気を固定し、すぐさま下へと戻ろうとする。


「シーン2、狭まる境界」


ガルドがプレートを動かし、山地を作る。急激に引き合わされる2人は、当然の如く距離が縮む。


「繋がる繋がる。陸繋砂州(トンボロ)そして陸繋島(タイダル)!!」


ガルドの大剣が発達し、より大きく、より鋭く。剣を視野に収めれば、ガルドが正確に見えないぐらいに。


「摩擦熱を正確に!1ヶ月ほどならデザイアルに支障はない!!大気圏(アトモスフィア)!!」


ソルトの右腕が赤黒く衝撃波を生む。腕はボロボロに朽ちていき、赤い液体が宙を舞う。


「俺の」


「僕の」


「「勝ちだぁぁ!!」」


衝突した時、音は聞こえない。そこで感じたのは、圧力。ただ、真空波が起こる。観客席に居る半数が鎌鼬が起き、どこかしらに切り傷を負った。烈もまた然り。左腕、右足、計4つの傷を負った。


そして、ガルドが、上半身を露出した状態で現れる、装備していたものが破壊されたのだ。ガルドの完全勝利と思われた。


しかしソルトも生き残っていた。右腕が黒く、醜く朽ちながら。だが、上空にいる。静かに舞い降りている。そしてその状態のままだと、場外へと落ちていく。軌道修正できるような体力は残っていない。確実にしとめれるような体力をガルドは残していない。


そして、


「ガルドさん、素晴らしい戦いだったよ。ほんとうに素晴らしい。僕の完敗です。ありがとうございました。」


にこやかな笑顔でそう言った。


「予選最後の乱闘で勝て。デザイアルで会おう、ソルト。楽しませてくれよ。」


そして、ソルトは場外に伏せた。試合終了のゴングが鳴り、勝者はガルドとなった。


ガルドは踵を返し歩き去っていった。ソルトも救護され去った。


騒然で凄絶な戦い。烈は驚嘆。この化け物達がデザイアルに居て、その土俵に烈が、立っている。


試合はまだ続くが、烈は精神的にやつれた。仲間に誘導され、休むことにした。



夜、予選はあと20日ほど続くが、烈達は静かで休みがよくとれそうな宿屋で宿泊。


美しいシャンデリアの下、壁には様々な飾り付けをされている。烈達は赤い絨毯の共有スペースに居る。


ミリアが話を持ちかける。


「ねぇレツ、あの戦い見てどう思った?」


烈は眉間を寄せて


「凄すぎる。改めて考えると俺達が勝ったのもゼノとかサイバーとかガルドとかソルトとかの強敵に当たらなかったからだ。正に奇跡。ライララの戦いも危機一髪だった。」


セレナが熟考する。


「ただ、デザイアルの前にこの事実を知れたのはでかいと思うよ。大事なのは対策。弱者は弱者なりに考えていかなきゃ。」


セレナのまともな意見に烈は頭を悩ませる。弱者が強者に立ち向かう。平等の天秤もある。しかし、烈はその効果を受けないし、烈がいなければ平等の天秤を発動できない。この予選で明らかになった不利な点。それを埋めなくてはならない。


「変に弱者という言葉に惑わされない方がいいんだよ〜、自分から変わるのも大切だと思うかな〜。」


リズの一言に、烈は思いついた。デザイアルまで、残り一月。一月で、


「修行しよう。一月でデザイアルで通用するぐらいに!」


全員が驚きの眼を向ける。当たり前だ。一月で今より倍以上強くならなければならないのだから。それ相応の信念がなければ成すことが出来ない。


ミリアが最初に


「いいじゃんいいじゃん!、そういうのだよ!王道じゃん!」


続いてルナも


「私も、それには賛成だ。自分の能力にはまだ伸び代があると感じた。高める時間が欲しいと思ったところだ。」


セレナも目を瞑り顎に指を置きながら


「私も、チームとしてはバランスが良いサポートタイプですが、戦闘向きの輝石の能力が無いんですよねー。自分の輝石の能力の幅をより応用させればみんなの役に立てるはず。」


リズが、じっくり考えて横目で烈を見る。


「私も賛成だよ〜。実は新たな技に挑戦してみたいと思ったところかな〜。それと、みんなね、必殺技みたいなのがないんだよ〜、それじゃあかっこつかないかな〜!」


烈が立ち上がる。足が少し震える。完全に回復しきっていない。


「必殺技かぁー、俺も、平等の天秤だけじゃなくて、輝石を俺なりに買わなきゃな。」


ミリアが手を上げて


「はいはーい!なら私レツについて行くよ!」


と、烈とミリアで固まるそうだ。


ルナは困ったように


「うーむ、私は騎士団の鍛錬場を使えないだろうからそこら辺は自重的にやらないとダメだと思うのだが。」


セレナが提案する。


「でもルナさん、案外裏切りに気づいていないかもしれませんよ?私みたいに」


ルナが確かに、と思う。ルナはそこまで地位が高くなかった。よってルナは平然を装うことした。ただ、無断欠勤が続いたので罰が下りそうだ……。とルナは思った。


リズは自分にピッタリな場所があると、言って独立行動を図るそうだ。


一方セレナは、


「私は……どうしようか。レツさんについてこっかなー」


烈はニヤケて言う。


「えー聖女ならまだしも、聖女のダメなところを受け継いでるみたいなおまえがか?」


セレナの静かな怒り。


「あら、最近私は、あんたのために意外と働いてることわかってんの?あんたのその震えてる足を止めてやるよ。」


と、言うと烈はニヤリと笑う。その態度にセレナが烈に襲いかかろうとする。ルナが慌ててとめる。


「離せぇ!コイツを殺さなければ、私の気がすまぬぅ!」


「なんとも物騒な聖女ですなぁー。」


「レツ!?挑発するでない!」


ほとぼりが冷めて、彼らは新たなステージへと歩む。


「いたいた。こんなとこにおったのか」


団欒して、仲間はより親睦を深める。

しかし突如現れたのは、輝石教会幹部、ガルド・ヴァインハルト。


「なんでお前がここにいる」


その場にいるガルド以外全員が構えた。


「そう身構えるなよ。お前らは、その…セレナの友達……みたいなものだろう?」


どうやら戦う意思が無いと。にわかには信じ難いが、言葉を受けいれた。


そうして意外なことにセレナとガルドは世間話に花を咲かせ、親子のような暖かさを感じた。その時、教会を辞めた理由も話したりした、そうするとガルドは最悪だなぁそれは、と大爆笑をかましていた。


「てかガルド、強いんだな。さすが幹部だ。」


そう聞くと、


「俺みたいなやつはバンバンいる。俺に勝てなきゃシャルトは夢のまた夢だ。」


「それとデザイアルでは俺たちは敵同士。このことを忘れずにな」


少し威圧感のある勢いだった。しかし烈はその言葉を聞きニヤけて


「あぁ、もちろんだ。ぶっ倒してやんよ」


烈は勝つ気でいた。


ちなみにガルドは、セレナを探すために、片っ端から情報を聞き、ここを嗅ぎ付けたみたいだった。


ふとセレナが


「ガルド様、私強くなりたいんです。サポートだけでなく、攻撃ができるような人になりたいんです。どうすればいいですか?」


ガルドらセレナが真剣な目で訴えかけてるのを見た。

成長を本気で求めているその顔を。

そしてその突然の問いかけに、ガルドは


「……じゃあ、俺のとこへ来いよ。もちろん輝石教会には黙っとく。」


と、予想外な返答をされた。だが、考えてみるとそういう反応を待ってると言わんばかりの言葉だった。


セレナは感謝した。烈は戦慄する、こんな怪力に育てられたら烈はもうセレナに逆らえなくなるかもしれないと。だが、負け続ける訳には行かない。烈だって強くなるのだから。


皆が行くところは決まったようだ。後は強くなるだけ。平等の天秤、弱者の抵抗から強者になるんだ。そして強者の務め。義務。世界を均すという目的、それを果たす。


シャルトへの道は険しい。だが、仲間がいる。


「シャルトを手にしてみせる。」


そして烈が手を出すとみんなは手を出し重ね始める。

烈が叫ぶ。


「一月で、今より格段に強くなって、デザイアルへ集合だ!」


みんなは返事をする。

活気が溢れ、熱気でこの宿が吹っ飛ぶぐらいに。



翌日、皆はそれぞれの旅路に着き、一旦お別れ。

今度会うのは新たな自分であり、新たな仲間。


平等を胸に烈達は歩む。

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