第11話 同義で非なるもの
「誰もが自分を表現できる平等」
と
「誰もが生まれ変わり体現する平等」
その戦いが始まった。
試合開始直後、闘技場に雷鳴が響き、ライララの大剣が雷輝石魔法で光る。雷の斬撃が烈に迫る。烈は咄嗟に転がり、回避。
「雷の輝石!?くそ、速え!」
ミリアが観客席から叫ぶ。
「レツ、逃げて! やばいって!」
ルナが拳を握る。
「レツ、無茶するな!」
セレナが祈る。
「どうか、勝て…!」
リズが冷たくそして心を込めて言う。
「負けたら置いていくよ~。頑張るんだよ~。」
このままじゃ、勝つどころか戦えもしねぇ!
ライララの雷の猛攻撃、1度当たっただけでもとてつもないダメージが来るはずだ。万一死ななくても、隙が生まれてしまう。
烈は、ライララに対抗する為に、色々模索をしている。しかし、ライララに近づくどころか、自分自身の自由が無い。
「逃げてばっかじゃあ、いつまで経っても勝てないぞ」
ライララは煽る。しかしそれは烈の禁忌に。
━━━━逃げる
逃げるのは最良の選択肢のひとつだとよく言われる。だが、何も考えず、ただ消えてなくなりたい。ここに居たくない。そんな理由で逃げたくはなかった。
烈は孤高に生きていた。最初から独りの彼は、人には突っ張って自己流を貫いていた。1人だとどうしても限界が来る。だから逃げるしか無かった。決して負けじゃない。意味のある逃げだと信じていた。
世界が不平等なら、自分が平等に生きればいい。逃げ続けて逃げに逃げて、その先に平等がある。
そんなわけはなかった。猛烈な思想が飛び交い、世界は益々分かれていく…。
そのうち自分も1人で、独立した思想として非難されることだ。結局は多数が世界を制す。それが「運命」なんだ。
烈は強く拳を握る。
突如、烈の頭にある考えが浮かんだ。
「あぁそうか、何も俺だけじゃねぇ」
だが烈は、今は1人じゃない。仲間がいる。
転生を果たしてからのらりくらりとまるで練り消しを作るかのようにまとまったこの仲間。それぞれの形が歪で溶け込んで生まれたパーティー。しかし目的は同じでただ1つ。「平等」
「ライララ、お前の憎悪は正しい! だがな、世界を壊すっていうのは間違いだ!」
烈の指摘にライララが静かな怒りを感じる。
「間違いじゃあねぇんだよ。理不尽に搾取されるこの世界は、根本から腐っている。抵抗できないこの世の中はどうかしてんだよ。」
動きが強まり、雷鳴も増える。
烈はさらに活発に動く。乱雑で避けにくい。
もはや体力の戦いになってしまっている。
「それはそうだ。ただお前がどうやってそんな世界を壊すという思想になったかは、分からねぇ。だけどよ、それが間違ってるってのはわかる。いいか、その平等は間違いだ。」
ライララは反論する。
「上辺だけの平等が、世界自体が変わるに繋がるわけねぇだろ。俺がどういう想いで……、どういうことが起きてんのか知らねぇくせに!」
ライララの動きが一瞬止まる。隙が生まれた。烈が覚悟を決める。
「分かるわけないだろ。客観的に言おう。お前はただの我儘だ。それで何を救う気でいる。結局はただの私利私欲だ。だが、そうなるのはわかる。不平等だと自分はより求めてしまうからな、だから━━━」
「 俺も我儘だ。 」
平等の天秤━━━発動。
あたりが眩い光で覆われる。その光は消滅を伴い、ライララは弱体していた。
「ぐっ!?なんだこれは力が出ない!」
烈は平等の天秤を観客に向けて放った。力は平均化され、ライララは烈とタメを張れるほどの強さと化す。
烈は強く口角を上げる。
「さぁ、殴り合いといこうじゃないか。」
リズに言われた通り、平等の天秤を応用した。
第三者を巻き込み自分と同じレベルにまで落とす。
同じ力同士の戦いあい。どちらの平等がより功を成すか。
殴り合いといっているが、実際は拳と剣の戦い。
だが烈も、こうなるとは思ってなかったわけじゃない。戦い方は人並みにちょっとずつ努力はしてきている。
「まぁ力が弱くなったところで、武器の違いから勝敗は至極当然。」
ライララの余裕に、烈は煽る。
「そんな甘い計算は、足元すくわれるぜ。」
戦いは再開する。
しかし射程の違いのせいでなかなか攻めるのが難しい。本体を潰すには、あの剣が邪魔だ。
ライララの勢いが増す。烈は先程の言葉読み取る。ライララは過去に何かがあり、それは自分の誤算による誰かの消失の哀しみ。又は自責の念。もしくは社会格差又は欲望が織り成す裏切り。
しかし一向にあの思想の成り行きが分からない。
激しい猛攻が覆う。晴天の霹靂のように、虚を衝く雷降が多い。必死に逃げ惑うが、ライララ自身が何もしてないわけが無い。
ライララは自身の雷を避けながら素早く烈を追いかけていた。烈は2つの障害を避けながら戦いをしなければならない。
烈の攻撃は雷のせいで通常の半分と言ったところだ。
ただでさえ少ないと言うのにさらに削られてしまうとは。その上、ライララは余裕を持ち雷と共に弱った状態でもそこそこの人間は倒せるレベルであった。
烈はライララに殴られる。烈はすかさず突進。しかし雷が邪魔をする。寸で避ける。
「厳しいだろ、この猛攻は。」
リズから聞いた輝石の情報。それは使えば使うほど効果は上がり、より激しく進化する。
この攻撃は、とてつもない努力の賜物。
うぉーっと、烈は突進する。ただの意味の無い突進を。
「単調な攻撃だな。裏でもあるのか?」
その言葉を烈は無視し、特攻を続ける。
今の烈にはそれしかできない。
「つまらんな、こっちから攻めに行くか。」
余裕に笑い、ライララが走り出す。
烈は未だに特攻。烈が足下に来たその瞬間
「潰す!」
ライララの大剣が烈の頭上に、その瞬間
烈はより低い姿勢にして加速し、ライララの足を動かし転ばせた。
さすがのライララでも重みがある剣の軌道を素早く帰ることはできない。
ライララは派手に転ぶ。
その隙を見逃さない。烈は、ライララが転けたことにより手を離した、大剣を持った。しかしそれはあまりにも重い。
烈は、その大剣を場外へ吹っ飛ばした。
振り返るとライララが立っていた。
「貴様ぁ……!、」
ライララは笑顔でいたが、怒りを全身に体現した。
今度は、烈が余裕に笑い
「これで、今度こそお互い素手だな。」
そして2人は激突する。
雷の攻撃は以前止まない、しかしライララはリーチが無くなったことで、攻撃がしやすくなる。
段々と烈の攻撃が当たる。
しかし烈の体力はギリギリだった。
平等の天秤と、ライララの攻撃を避けるのに大半を消費した。
だが負けじと烈は可能性を聞く。
「なぁ、ライララ。お前は自分の雷に打たれたら痛いのか?」
ライララは不敵に笑う。
「はぁ?、耐性はあまり無いかもしれねぇな。何を期待してるか知らんが俺のコントロールで、俺自身に雷が当たることは決してない。」
きっとそうか、と烈は確信する。
ライララの怒涛の攻撃は止まらない。
だが、烈もライララに段々追いつく。限界を超えて戦いをしている。それはライララも。
烈はライララを殴り飛ばす。1番でかいヒット。
しかしライララは怯むことなく、休むことなく立ち上がり烈を横から吹き飛ばす。烈は回避が追いつかず防御に入るが、それなりのダメージを受けてしまった。
どちらかが倒れるまでこの試合は終わることの無い。先に膝を着いたものがこの試合が終わる。
「平等っていうのはな、弱者を助けてくれる。すがりつけば、救済をくれる。そういうもんなんだ。世界は変わる。」
烈は、息切れした肺から言葉を絞り出す。
ライララは反発する。
「そんなのが、今の世の中で出来るのか?無理だろ。貧民は敵、みたいなこの世の中、「異端者」が裁かれるのが定着している。見た目だけ取り繕っても、改善するわけねぇだろ。」
口論はまだ続く。
「見た目が変われば中身も変わる!、例え中身がどす黒くても、見た目を清純に本気で変わりたいと思えたなら!中身もより研磨され見た目と同意義な存在になる!」
2人は思想は全くの別のものとなり対立している。
それは溶け合う可能性が、全くないほどに。
ライララが近距離を攻める。その瞬間
烈はライララにしがみつく。ライララは弱体化しているため解けない。そして雷は止まる。そして烈はライララを刺激する一言を言った。
「何止めてんだよ、俺に打てよそんなんだから誰も救えねぇんだよ。」
ライララの目から瞳が割れる。
「は?」
瞬間、
烈に向かって巨大な霆が降る。
それはライララにも伝わる。
両者が雷光に包まれる。やがて、それは2人の伸びきる背面を映した。
ここからは、
立ち上がったものが勝者となる。
「ぐぅあぁ!」
立ち上がろうともがくのは、ライララだ。
「はぁ!!!」
烈は伏せながら力む。上手く力が入らない。
だがそれはライララも同じ。よろよろしている様子だ。
そして、
立ち上がる。烈の姿。
烈は溜めた。数秒起き上がるという行為に力を注いだ。
ライララは中腰でもう完全に立てない状態だ。
ライララが膝をつく。試合終了のゴング。烈の辛勝だ。ライララは烈を睨み、倒れた。あとを追うように烈は倒れる。
そして救護室へと運ばれた。
「レツくん、今日はお疲れだね〜」
というリズのかけに烈は
「当たり前……今完全に寝たきりなんだぞ。身体もよく動かせねぇ。」
烈が倒れたあと、ミリアやリズが運んでくれたらしい。ちなみにライララはと言うと、負けたあとブツブツ言いながら一人で歩き出した。ルナとセレナは、色々後始末をしてくれたらしい。ありがたい。
後始末って言うのは、平等の天秤のこと。相手の弱体化する能力がある輝石、で上手く事を収めてくれた。
「みんなありがとうな」
ミリアが誇らしく胸を張り威張る。
「どうってことないよ!当然当然!」
リズがニタリと微笑む。
「レツくんを運んでいる時、すごく軽かったよ〜、女の子かと思ったかな〜」
その言葉に烈が怒ったことで更に笑う。そしてセレナも笑っていて
「レツさん、あんたの戦い凄かったよ、非力なのによくやった。尊敬尊敬。」
と、セレナは最初こそは褒めるが、後は適当に返した。
ルナがやれやれとため息を出す。だがその顔は呆れたよりもなんだか優しい笑顔に見える。
「はぁ、全くお前らは……。レツお疲れだったな、かっこよかったぞ」
烈は少し照れる。
烈は一先ず勝利を噛み締めた。これでデザイアルに行ける。烈は喜びにガッツポーズをする。その瞬間、腰が痛む。
「いだだだだだッ!!」
ミリアが慌てて心配する。
ルナは救護員を呼ぶ。
セレナが背中を摩る。だが逆にそれは烈の背中を痛める結果となる。
「ちょっとセレナ!?何してんの!?」
セレナは加速する。その目は狂気に満ちていて
「そういえば教会を追い出された恨みだぜ!」
ルナが羽交い締めをして止める。
セレナが「離せぇー!!」と言うが止めない。烈はというと失神している。
その光景を客観視しているリズは
「大丈夫かな〜?」
と半分煽って半分心配している。
救護員が駆けつけてしばらく。
烈はなんとか起き上がった。
「まじで、セレナよぉー……」
烈らセレナをじっと見る。
「そんなにチラチラ見んなよ〜。これでチャラだし。許してよ。」
確かに烈にも悪い所はあったのでお互い様ということで今回だけは許した。
「あと、レツさん。おつかれさま」
セレナが労いの言葉を送った。
セレナが戦いを振り返る。
「ライララさん、強かったよね。大丈夫だった?」
リズが考える。
「んー、レツくんと同じような思想を持っていたんだよ〜。」
ルナが付け加える。
「正しくは破壊による平等だけどな。」
セレナが浸る。
「一緒のようで全く違う2つの思想……ねぇ。」
烈の見解は
「思想っていうのはどうしても過程がある。結果しかない思想は空虚なんだ。あいつの並外れた輝石の力。きっと凄まじい過去があったに違いない。」
烈は思う。ライララの憎悪。
「おぉー!なるほどぉ……。
……難しい話しないで欲しいなぁー」
と、ミリアが雰囲気をぶち壊してきた。
「簡単に言うと、人が何かをするのは絶対に何かのためなんだよ。」
ミリアは手を打ちなるほどと言わんばかりの顔をする。
「レツの話が本当だとすると、ライララは残酷な過去を持っているということになる。」
少なくとも、生半可な成り行きであの思想になるはずはない。輝石の力もそうだが、何かある。
烈は呟く。
「アイツの気持ち、分からなくもねえ。そんな奴のために、せめてもの平等だ。だから俺はシャルトで世界を変える。」
ミリアが同調する。
「うんうん!その意気だって!今度は私たちが勝ってくるよ!待ってな!」
今度はミリア達が予選へ出る番だ。
だが烈はこの時予想がつかなかった。まだ見ぬ高すぎる壁にぶつかってしまうことに。
「予選会場なんて、する意味なんてあるんだろうか?」
黒きフードの中から銀灰色の髪が少し見える。
とても魅力的な声をした男が会場の前に佇む。
それは烈にデザイアルについて教えた張本人だった。




