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不死の軍団  作者: svn
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■大都会

馬車は基本、乗り合いだ。始点から終点まで乗ってる人は稀で、色々な人が乗っては、降りてゆく。

ミーノは自由奔放、気ままな天使だが、人見知りせず、色んな人にご挨拶しにいく。

まだ言葉は喋らないし、ちょっとハイハイできるかなぐらいだけど、場を弁えているとしか思えない。

私達しかいない時しか愚図らないし、御者のおじさんにさえ、気を使ってるようにも見える。

そんな可愛い、可愛い私の天使は、今日も無邪気に隣のおばあさんに相手してもらってる。

そのおばあさん、どうも目が不自由らしくて大変そうだ。

ミーノを抱いては、「息子を思い出す」と言って身の上を話してくれた。

楽しいおしゃべりの最中、つい歌いだしちゃった私の歌を大層褒めてくれた。

私の歌で、視力が少し戻ったみたいだ、ってお世辞を言ってくれてて、少し恥ずかしかったな。


***

おばあさんと入れ違いで、二人の男性が乗ってきた。

二人共ひょろりとして細長い。片方は茶色いすっごいクセ毛。もう片方は黒髪。

クセ毛のお兄さんは、声が高くて端正な顔立ち、黒髪のお兄さんは、渋い感じが印象的だった。

そんなふたりにもミーノは突撃を敢行し、まんまと陥落せしめた。

エレナも世渡り上手で、ミーノの崩した隙をついて、突撃していく。

ミーノとエレナのコンビネーションに翻弄され、二人のお兄さんは、これまでの出来事を語ってくれた。

同郷で、同じ職場。農場で働いてたんだけど、どうやら先輩に裏切られたらしい。

詳細は教えてくれなかったけど、それが切っ掛けで村を飛び出したんだって。

「裏切り」なんて強い言葉よね。それが心に突き刺さった気がした。

二人には夢があって、大物になりたい!って言ってた。

大物って言っても色々あるよね?なんの?どんな?っていう質問がしたかったけど、空気は読んだわ。私、偉いでしょう?

私の中で大物といったら、なんと言ってもステラおばさんよね。

ステラおばさんてば、私達には「おしとやかに」なんて気取って言うくせに、「ガッハッハ」と豪快に笑ってる。

出先でみつかろうものなら、おしゃべりの的にされちゃう。

いつも一方的にまくしたてられちゃうから、困っちゃうのよね。

でも、おばさんに会いたいなぁ。男性陣にも絶対負けない、憎めない無敵の人だったのよね。


***

終点につくと、二人はあっさりとした別れの言葉で、そそくさと街並みに消えていった。

私達も今夜はこの街で一泊の予定だ。シンはさっそく宿の手配に動く。

私達も街を散策しようと、大通りを登っていく。

ここは山が近いらしく、大きな通りは斜面になってた。

人混みもさることながら、お店も数々並んでる。

カーン、カーンと金属のぶつかり合う音。鍛冶屋かな?

独特の香と煙、なにやら怪しげな鍋が見える、出店のおじいさん。・・・ちょっと遠慮したい。

大声で存在をアピールしてくる、武器、防具の店や、薬草の店、雑貨。

どうやら冒険者向けの店が多いらしい。近くにダンジョンでもあるのだろうか。

ダンジョン。シンが教えてくれた。この世には魔獣の住み着くダンジョンというものがあるらしい。

一歩踏み込めば命の危険だってあるって。怖い話しないでよ。

ダンジョンと言えば、私とリュートお兄ちゃん、キース、エレナで行ったあの洞窟。

「彼」に出会ったあの洞窟。つい、あそこを思い出す。

お気に入りの服も、鞄も駄目にした、あの洞窟。皆もあのときのこと、覚えてるかな?

罵り合う声が聞こえて、周囲を見渡すと、斧を背負った山みたいな背中がなにやら叫んでる。

お仲間?のやせ細ったローブの男と、小柄な男がその山を抑えようと必死だ。

どうやら喧嘩らしい。ついつい野次馬しちゃうのが私。

中心を見ると、見覚えのある、茶色いクセ毛。

「あっ」

と思わず、声が出たら、みんなこっちを振り向いた。

それで気が削がれたのか、山は悪態をつきつつ食事処に入って行った。

人だかりが解散していく中、クセ毛のお兄さんに駆け寄る。

クセ毛のお兄さんは、立ち上がってもうつむくばかり。

黒髪のお兄さんは、怒りを噛み殺すので精一杯。

落ち着ける所・・・眼の前の食事処じゃ、山と鉢合わせよね。他を探さなきゃ。

結局、斜向かいにも食事処があったので、私達は、ふたりも一緒にそこに行くことになった。

おっと、シンは・・・まぁ、そのうち来るよね、きっと。

食事を待つ間、ぽつり、ぽつりとクセ毛のお兄さんが語り出す。

お兄さんが言うには、冒険者になりたくて、目立つ山に話しかけたんだって。

そしたら、冷たくあしらわれて。

で、「なにくそ」と思って向かって行ったらやり返された、と。

無謀と言えば、無謀よね。こんなときシンが居たら、なんて助言するんだろう。

早くシン来ないかな?なんて、思ってる間にシン登場!

シンは、言葉少なく、でも的確に二人にアドバイスしてた。

ダンジョン組合の存在とか、予算に合った武器や防具の揃え方とか。

二人の、シンに対する眼差しは希望に満ちて、生き生きしてきたのが、私にもわかった。

それだけでも嬉しかった。

嬉しさの中、目を閉じて浸っていると、なにやら情景を思い出していた。

光に包まれた二人。二人は黒髪とクセ毛のお兄さんたち。

二人は舞台に立って、歌ってる。

歌詞に出てくる言葉そのものは、さっぱりわからない。

でも内容はわかる。今の二人にぴったりなのことだけはわかる。

でも、クセ毛のお兄さんの歌声。高い!高すぎるよ!

黒髪のお兄さんの渋い声で、クセ毛のお兄さんが際立つのがわかる。

その心揺さぶられる歌声は、耳を離さない。素敵な音色。

この歌、歌える。

───そう思って口ずさむ。

私の歌は、お店を優しく包み込み、充満していった。

談笑する冒険者、給仕する小間使い、厨房の料理人。こちらに視線を送る。

お兄ちゃんも、キースも、エレナも。ミーノだって。

クセ毛のお兄さん。黒髪のお兄さん。

そして、シンも。

皆、皆、しずかに聞いてくれた。この歌、好き。

本当は二人で歌う。でも私は独り。それでも力いっぱい歌った。

二人への応援でもあるし、自分を奮い立たせる歌。

歌は、店の外まで漏れてたらしく、窓から覗き込む人や、扉の隙間を覗く人で溢れてた。

皆くちぐちに、「凄い!」「感動した!」「もう一度!」って歓声を上げてくれる。

人だかりが出来て大変だったけど、機転を効かせたシンがうまいこと逃してくれた。

あの二人は、シンが後で世話するって言ってくれた。

世話焼きなんだから。シンったら。


***

後日、別の街で見た新聞に、二人の武勇伝が出てるのを見て驚いた。

ねぇ、聞いて。「突如現れた、期待の新人」なんだって!

シンのお世話が効いたのね。

シンにそのことを冗談混じりに言うと、「お嬢様の手柄です」ですって。

何のことやらさっぱりだけど、二人がビッグになれて、なによりよ。


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