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不死の軍団  作者: svn
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■夏のお嬢さん

開放されたビーチが名所であるこの街は、伯爵領でも有数だった。

ビーチから見る夕日は心揺さぶるものがあるらしい。是非とも見ていきたい。

そうシンにお願いすると、シンは皆に聞いてくれた。

雨の一件以来、初めて四人全員がギクシャクしてた。

広大な砂場のそばを見渡せば、光沢の強い、見たことのない葉が印象的な木々が並ぶ。

幹も独特で、初めて見る様子に、それはもう興奮した。

到着はもう日が落ちてきていて、さっそく皆でビーチに向かう。

雄大で、荘厳で、眩しくも優しい夕日に、いつの間にかわだかまりは消えてた。

興奮気味にお兄ちゃんに感想を伝えると、お兄ちゃんも大興奮だったみたい。

嬉しくてエレナの腕を掴むと、キースは肩に手を置いてた。

みんなも同じ気持ちかな?だったらいいな。

シンがミーノを抱いて合流した。もう宿を手続きしてくれたらしい。

子守と宿の手配を同時にこなすなんて、さすがは執事ね。関心しちゃった。

当人に言うと、「当然のことです」なんて謙遜するけど、評価されるべきよね。


***


私はリナ。兄に会うため旅の途中。

観光に立ち寄った街で夕日を眺めた翌朝、宿からビーチを見ると、人の多さに驚く。

宿の女将さんは、「ビーチで日光浴するのがトレンドなのよ」って教えてくれた。

ついでに女性に人気なのが「ビキニ」なんですって。

エレナは興味津々だったし、私もチャレンジしちゃうかな。

ミーノはまだ夢の中。シンが見ててくれるって言うから、エレナと一緒に着替えると、エレナと私で浜辺まで競争した。

「クラクラしちゃうね、君」

声が聞こえて振り向くと、そこには颯爽と現れた男性。

胸元が空いたシャツをまとい、嫌味のない、日焼けした胸板が鈍く光る。

決して細くはないが引き締まった体は、自警団みたいな野蛮さはなく、どこか気品がある。

髪型は短髪だが、色取り取りの髪色が、地元のオシャレなのだろう。

イヤリングがキラリと輝くと、それはいわゆる"色気"だと思う。

他愛のない世話話をしていると、短パン姿のキースが割り込んでくる。

いつも冷静なキースが食ってかかる。

おちつけー、キース。揉め事だけはやめてくれ。

キースの鬼気迫る迫力に、物怖じせずに冷静に応対する彼。

名前はホークさんって言うらしい。

ホークさんは、「スケートボード」というアクティビティ開発者なんだって。

街の名物にしたくて、道路を整備し、デモンストレーションしてるって。

キースは業を煮やしたのか、ホークさんにスケボー勝負を挑んでいた。


***


スケボー対決なんて言い出したのは、キース。

相手の有利な種目を選ぶなんて、男気があるのか、無謀なのか。

「リナにいいところ見せたいのよ、キース兄は。」

隣のエレナは屈託なく笑う。

ホークさんもなかなか負けてない。キースに乗り方を丁寧に教える。

最初は転ぶ練習するんだって。安全に転べると怪我しなくてすむらしい。

キースも最初はステーンって私ばりに転んでたけど、それもたった数回程度。

たった数回よ。その後は乗りこなしてた。

ホークさんもそれを悟ったのか、顔つきが真剣なものに変わってた。

3周勝負。街の外周を3周。

しかもハンデで、10カウント後にホークさんが出発するらしい。

このカウントだって揉めに揉めた。

ハンデなんていらないって主張と、最初は30だったカウント。

どうにか折り合いをつけて、いざ!スタート。

さすがに私もエレナもついていくことはできなかったから、後でふたりに教わった。

1周めはホークさんは様子見。キースの後ろをぴったりマークしたんだって。

2週目。ついにホークさんが逆転。でも、負けじとキースも間隔をキープ。

ついに3周目、一進一退っていうの?抜きつ抜かれつの白熱バトル!!

通りすぎるたびに汐風が爽快だったけど、早すぎて危ないよ!ふたりとも!

ゴール!

っていうところで二人して浜辺にダイブしてた。

結局どっちが勝ったのかもよくわからない。

勝った負けたの言い争いを今度は始めてた。


***


不毛な争いは、日が落ちるまで続いてた。

相撲、腕相撲、木登り、鬼ごっこ、etc。

そんなの勝負になるんかい、というエレナの突っ込みは妙に的を得てて、周囲も笑ってた。

でも、お互い一向に諦める気配がない。

遅れてきたお兄ちゃんなんて完全に蚊帳の外。シンもミーノを連れて様子を見に来てる。

あ、このシチュエーション。締めはこれね。

「私のために争わないで」

今日一番の私の大声は、閑散とし始めた夕暮れの浜辺に響く。

ハッ

二人は我に帰り、砂まみれも気にせずに、砂浜に大の字になった。

お互いの汚れた、爽やかな笑顔を見て、硬い握手を交わしてる。

相手の顔を見ては、その乱れっぷりを爆笑し合ってた。

私は今の楽しい気持ちを載せて歌っていた。光ってるのは夕日で誤魔化せるよね?シン。


翌朝、次の街に向かう馬車に乗り込むと、シンが何やら手渡してくれた。

アイスクリーム。

そういうお菓子らしい。皆でそれを頬張る。冷たくて甘い、果実は違う味わい。

牛の乳から作ってるらしく、濃厚さが際立つ。

ちょっとの日差しでも溶け出してしまうため、もったいないと思いながらも焦って口に運ぶ。

また来よう。そう思えるひと品だった。

アイスクリームの余韻に浸っていると、遠くから聞き覚えるのある叫びが聞こえる。

ホークさんだ。

「好きさー、大好きさー!お嬢さん!」

連呼するその声。彼の誠実さ、真っ直ぐさが感じられた。

悪い気はしないな、と思っていると、思わず耳まで真っ赤になってたらしい。

エレナはそれに気づいて、静かに見守ってくれた。ミーノをあやしながら。


キースは何を思い立ったか、アイスクリームをエレナに渡すと、叫び返す。

「次は決着つけるぞ、ホーク!絶対だ!」

もうかなりの距離まで来てたから、聞こえてるかどうかは微妙だったけど、キースの思いが聞けてよかった。


***


勝負のあと友人となり、交流を深めたホークは、ひとつの確信を持つこととなる。

キースは案外いい奴だったし、妹のエレナ嬢も気丈。

リュートは若干お調子者だったが、なんだか気があった。

執事のシン氏は無口だが有能だし、ミーノは可愛い。

そして、お嬢さん。あの御方。あの御方こそ女神様なのではないか、と。




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