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不死の軍団  作者: svn
23/23

■浪漫飛行

バシャリ。

水鳥が遠くで飛び立つのをぼうっと見送る。

背筋をスッと伸ばし、軽く持ったパドルを交互にサッサッサと差し込む。

半ばまで沈んだ舟はまっすぐ優雅に進む。

舟はひとり乗りで、真ん中にぽっかり穴が空いた、長細い形状をしている。

思っていたより軽くて、私でも持ち運べた。といってもギリギリまでは馬車で運んでもらったけど。

パドル操作にはもう慣れっ子。波の立たないこの湖でならどこまでも行けちゃうかも。

湖の上だと、木陰がないから陽のあたりは結構強い。パドル自体は軽いけど、じんわり汗がにじむ。

よそ見をする余裕はあるのだが、なんとも腰元が蒸し暑い。

舟自体は沈んでるのに、なんで腰元は涼しくならないのかしら。

浸水防止のカバーのせいで熱がこもるのよね。

いっそ水に浸かりたいが、転覆だけは避けたいものだ。


***

幼馴染エレナと、その兄キースは、水辺でこちらを眺めてる。エレナに抱かれたミーノもなんだか楽しそう。

高らかな笑い声とともに、後ろから尋常じゃないスピードで私の兄リュートが追い抜いて行った。

とほほ、優雅なひとときが台無しよ。見なかったことにしたい。

私はリナ。今日の寄り道は大きな大きな湖。

代官補佐を務める、長男のバースを追って未だ旅の途中。

この近くには、五大湖って呼ばれる大きな湖があるらしいけど、その中でも最大級の大きさなんだって。

えっへん!どう?私って博学でしょう?さっき執事のシンに聞いたのは内緒よ。

昨晩泊まった宿で、この舟を貸してもらったの。一目惚れって奴ね。

リュートも同じこと言ってたのはちょっと癪だけど。

この湖には、ヌシが住んでるんだって。大きな大きな竜。お宿の女将さんは、それは得意げに喋ってた。

一度くらいは見てみたいけど、神出鬼没なんだって。いくらなんでも数日で見れるわけ、ないよね?


「リュート!リナ!そろそろお昼にしよー!」

結構距離はあるけど、エレナの爽やかな声がはっきりと聞こえる。そうか、もうお昼なのね。

朝から舟の乗り方やらを教わってたけど、見上げると日がもう高い。

舟を反転させて、戻ろうとした瞬間!なにやら黒い影が足元に!?

ザバァアン

大きな波?に飲まれて闇に引きずり込まれてしまった。

キャーーーーーー

かすかにエレナの叫び声が聴こえたけど、そのまま意識を失ってしまった。


***

スモーク・ホワイトフィッシュ。

燻製所でじっくり燻された魚をディップにしてクラッカーに乗せた料理は、とっても美味しかった。

燻製の香りって食欲をそそるのね。

でももうお腹いっぱい。もう食べられない・・・もう無理よ。

ハッ!

そうか、夢か。

昨晩の料理の夢を見るなんて。リュートにバレたら爆笑されてしまうわ。

目をこすりながら夢を反芻していると、なにやら周りがおかしい。

全体的に辺りは暗いが、ところどころ光が漏れてる。

瓦礫?そう瓦礫が散乱している。

キョロキョロと辺りを見渡しているうちに、奥のほうにふたつの青い宝石が宙に浮いてるのを見つける。

目を凝らしていると、その下に真っ赤染まった炎?が開く。

怖い!え?え?くち?顔!?と思ったのも束の間。

「人間よ。」

なんともプリティな幼女感のある声がこだまする。

最初は、顔と声が結び付かなくてオロオロしてしまった。

「人間よ。聞け」

ハイ! と背筋を伸ばして答えたものの、私は結局パニック状態。

眼前にそびえる巨躯に、星光鋭い宝石の瞳。

青い鱗、首元には威厳のある髭、それはそれは気高い角。

たまに刺す太陽の光が反射して、とてもキラキラ光っていて美しい。

なのに、甘ったるいプリティボイスなんですもの。

それから、はっきり姿が見えたとき、私は正直驚いた。

だって、ものすごく大きいのよ。そんじょそこらの動物なんて目じゃないくらい。

・・・湖のヌシ様なのですか!?

と恐る恐る聞く。軽く咳払いをしながらも黙って頷いてくれた。


***

話を聞き始める。要約すると、愚痴のオンパレード。

最近はお供えものが少ないとか、もっとデザート系もってこいとか。

他のヌシのほうがよっぽど優遇されてるとか。・・・ちょっと引いた。他にもヌシはいるのね。

そもそも私は、いったい何を聞かされているの?

そのうち、昔のお供えもので印象深かった話になる。

歌。

数日だけ、歌をお供えされたときがあったんだって。

それはそれは、ものすごく楽しかった思い出。

バシン!ズシン!

歌を思い出したのか、体を左右に、小気味よくひねり出した。

踊りに合わせて大地も揺れる。


いつの間にか、ヌシ様と仲良くなっていた。

ちょっと一息。腰に付けていたポーチから何気なくビスケットを取り出す。

水没したかと思ってたけど包みで案外平気だったらしい。

ヌシ様も気付いたらしく、いかにも物欲しげなまなこ。

フェリーナ ナサーサ ティーカティカ!

モリーナ サリーナ フィッコフィコ!

ナイスバディで!プリティになーれ!!!!

ヌシ様の怪奇な呪文が響く。

一帯が水蒸気に包まれたかと思ったら、ちょこんと眼の前には小さな女の子が。

でもどこか青っぽいというか、鱗っぽいというか。髭の代わりにマフラーというか。

宝石のような瞳に、気高い角は健在。まさか!!ヌシ様!?

「どうした人間。なにを驚いている」

驚きを隠せない私に、声をかけてくる女の子。

ヌシ様の威厳は?どこ?どこなの?探せど探せど、可愛い女の子がひとり。

「ほれ人間。貢げ。よこさぬか。」

ハッと我に返り、ビスケットを差し出すと、ふたつに割って半分返してくれた。

「はんぶんこってやつじゃ。よかったのう人間。」


二人で仲良くビスケットを食べていると、私は、何気なく歌を口ずさみ始める。

歌詞の意味は理解しているが、言葉そのものはわからない。でも忘れられない曲。

歌に合わせて、リズムに乗ってヌシ様も踊り出した。

バシン!ズシン!

体は小さいはずなのに、踊りに合わせて大地も揺れる。

揺れに身を委ねつつ、歌を続ける。楽しいひととき。

私はふたつの青い宝石を見つめ、ヌシ様は私を見つめる。

ふたり?の意気が合ったとき、私は光った。光って消えた・・・・。

え〜〜〜〜〜どうなっちゃうの????


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