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不死の軍団  作者: svn
22/22

■いまはおやすみ

朝。パッチリ目が覚める。小窓からのそよ風が顔をほんのり触る。

ベッドから足が出て宙に浮いていた。

そのままぐーっと伸びる。枕は相変わらず行方不明。

泊まった民宿の香り。この周辺で伐採されたであろう木々の独特な芳香。

くち、鼻それぞれで一杯に吸い込む。もう限界!というところまで来たら止める。

ここで無の境地とばかりに思考を止め、なにもかも忘れたころに吐き出す。

これをやらないと目が覚めた気がしない。

私はリナ。小さな村に滞在中なの。小さいといっても、活気に溢れてる。

昨夜見た音楽劇。真っ赤に燃え盛るような断崖を大胆に取り入れ、時には優雅に、時には激しく。

まさか馬も演者だなんて驚きよ。鳴き声だってバッチリ歌に合ってて、そりゃすごかった。

料理だって負けてなくて、ステーキをピッチフォークに乗せて、油樽に浸す。

ジューッと一気に火が通る。でも焼けすぎてるわけじゃなくて、とっても旨し。

器用に大きなピッチフォークで調理するんだから。

ただ、それだけではなかった。感動した。

ベイクドビーンズ、ベイクドポテト、ガーリックトースト、などなどなど、覚えきれない料理は取り放題。

兄リュートに負けじと食べ比べしてたのは内緒。


***

昨晩の夢のようなひとときを思い出していると、幼馴染のエレナが慌てて駆け寄ってきた。

「ミーノ、ミーノがいないの!」

赤子のミーノがいないというのだ。いつも二人は同じベッドで寝ているハズ。

「シンは?シンが面倒みてるんじゃない?」

執事見習いのシンは、もともとミーノの親代わり。面倒見てても不思議じゃない。

「もう聞いたわ。何度も。何度も」

言い終えないうちに、エレナは泣き崩れてしまった。

私も一緒になって動揺してはいけないと思って、エレナの背中をさする。

昨晩は一緒に民宿に帰ってきたはずだし、まさかそこで迷子になるなんてないでしょう?

あの子は元気過ぎて、ハイハイでどこまでも行けちゃうし、なんならスピードも凄い。

こないだなんて岩に突進して無傷だったし。

でも変なものを口に入れてたらやだな、と思い二人で探しに出る。

エレナの兄キースも事情は伝わってるようで、リュートと探しに出てるらしい。

「ミーノ!ミーノ?」

大声で街中を進む。早い時間だったけど、街の人も心配してくれた。

「・・・いったい、どこへ」

両手を大きく広げて天を仰ぐ。鳥が翼を広げるように。

そんな仕草でミーノを待つエレナ。

ミーノは辛いことでもあったのかしら。

ん?そういえばシンは?シンなら魔法で探せそうね。

シンは宿かしら?とシンに気を向けると、目の前にはシンが居た。


***

シンが重い口を開く。

「ミーノ・・・ミーノはどうやら、盗賊の砦に向かったようです」

!?!?!?

どういうこと!?盗賊?砦?意味がわからなくて、何度も聞き返した!

「もう一回!もう一回お願い。ミーノはなんだって?」

何度聞いても同じ。盗賊の砦・・・なんてパワーワード。

昨夜。

食事帰りの私達、とくにエレナを狙う輩がいたらしい。

嫌らしい目つき、舌なめずり。如何にも悪党といった風貌でエレナを睨んでいたと。

で、宿を特定したところで、一旦輩が引き返してたんだって。

エレナに向ける殺気というか、どす黒い感情をミーノが感じたらしい。

シンも気がついてはいたものの、私のいいつけを守って静観していたんだって。

でもミーノは違った。思いのままに、あるがままに突進していっちゃったみたい。

それはまるで、裏山の洞窟で見たミノタウロスのように。

早速、兄たちも引き連れて現場に向かう。

街外れの小道から森へ入り、覆い茂る木々の間を進む。

商人、地域住人、ましてや狩人も寄り付かなそうな、寒々として、薄気味悪い場所だ。

そのもっと先。川のせせらぎがザァザァと聴こえてくる場所に抜けると、人工の建築物が見える。

砦、と呼ぶに相応しかったであろう廃墟は、今にも焼け崩れそうにぼうぼうと煙をあげていた。


***

「ミーノ!」

思わずエレナが大声で呼びかける。

すると、それに呼応するかのように、壁が。木が。建物が。砦のあらゆるものが崩れ倒れる。

ドドドドドドッドドドドドドッ

何に形容しようか、そう!ドミノ。ドミノの連鎖が目の前で起こったよう。

埃は辺りに舞い上がり、前もよく見えないほど。

そんな土煙舞う中、小さな小さな影。見覚えのある可愛い影が視界に入る。

ミーノ。

ハイハイをするミーノ。可愛い。そのひとことだろう。

手のひらや膝を汚すことはあっても、一切傷にならないミーノ。

よっぽど丈夫なミーノ。

ミーノはハイハイでこちらに突っ込んでくる。

そのパワーたるや障害という概念が存在しないとばかりに、全てをなぎ倒してきたのだ。

このままじゃ轢かれる!!!!

と心配したが、タイミングばっちりに、エレナに向けてジャンプ!

両手を大きく広げてミーノをキャッチ。鳥が翼を広げるように。

そんな仕草でミーノを抱くエレナ。

満面の笑み。やっぱり可愛い。

顔も、手も、足も。いつもの泥遊びさながらに真っ黒にしながら、笑みをエレナに向ける。

まさに天使のようなその姿に、一気に安堵が訪れる。

安心したのか、ウトウトするミーノに、やさしく「おやすみ」とささやく。

そんな中、白旗を上げて降参する盗賊たち。

ミーノは、たったひとりで三十人からなる盗賊団を壊滅させたのよ。すごいでしょ。

ミーノも、エレナも、なんだかドロドロ。

ふわっと吹いた風。風に舞う二人を見て、私はムズムズ。

歌いたい。言語は分からない。でも意味はわかる、不思議な歌を。


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