■瑠璃色の地球
大地に寝転ぶ。大の字だ。眼前に広がるは広大な空。
雲ひとつない、満天の星空。淡い光、強い光、様々な星が煌めく。
これが銀河か。
流れ星がひとつ。それはまるで光の矢のようだ。
くーっと息を吸い、そしてゆっくり吐き出す。季節のわりには、そっと肌寒い。
風が頬を掠める。大地の様々な匂いの中、ただ呆然と、その夜空に吸い込まれる。
満月はギラギラと周囲を照らす。ランタンなど必要ない。まるで昼間かのように明るい。
周辺は何もない。夜明け前の地平線がただ続くばかり。
大地の寝心地は最高!とはいかないが、ゴツゴツした岩場に寝転がるよりはマシだろう。
俺はリュート。兄バースを訪ねて、妹と移動中だ。
***
ここはオーロラっていう現象が見られるらしい。その現象が起こるのをみんなで待ってる。
さっきまでは他愛のない話で盛り上がっていたが、今は沈黙の時間だ。
オーロラを見たら次の街へ。そう約束して三日。いまだオーロラは現れない。
オーロラ。
聞くところに寄ると、一言で言えばカーテンらしい。
カーテン!?どんな光景だろうか、楽しみだ。
それにしても待ち時間が長い。これでショボかったら、キレる自信がある。
***
仰向けから横向きに寝相を変えると、地平線の奥に夥しい数の鈍い星が見える。
「規則正しい、やけに薄暗い光だな。」
ただならぬ殺気を帯びた星。
それは星ではなかった。狼の瞳だ。狼が大群でこちらを窺っている。
「キース!」
幼馴染のキースもまた、気配を察知して飛び起きていた。
キースはすでに正眼の構えだ。俺も慌てて剣を抜いて、殺気の星々に刃を向ける。
獣ならではの、ジリジリとした前進。こちらは、動きに合わせて、ゆっくりと下がる。
いつものフォーメーション。俺が左。キースが右。
狼の雄叫びが、開戦の合図になった。
飛びかかってくる狼共をキースが一閃。断末魔とともに吹き飛ぶ。
俺も負けじと、狼をまとめてなぎ倒す。
***
何匹倒したか、そんなことを考える余裕はなかった。
俺もキースも満身創痍。牙が、爪が次々に襲いかかる。
人の大きさ程ある狼。魔獣であろうか。狼共は仲間の仇討ちとばかりに、二人を襲う。
しまった!!
左腕に激痛が走る。狼の牙が上腕に食らいつく。
ガンッガンッ
柄頭で狼のこめかみを狙うが、一向に離れない。
ふと、リナの歌声が聞こえる。
リナが歌う。言語は分からない。でも意味はわかる、不思議な歌。
リナの光は、キースと俺、二人を包み込む。
また、狼共も別け隔てなく包んでいた。
リナを中心とした球体は、天をも貫き広がった。
歌い終えたときには、左腕の、致命傷とも思った噛み傷は一瞬で癒えていた。
同時に、斬り倒した狼共の傷も癒えている!?
なんてことだ。癒やしの力、なのか!?
「愛の、、、力、か。」
キースの独り言がポツリと聞こえた。
泣き顔だったリナは、今は微笑みに変わっていた。
そんなリナを見たとき、リナの後方には、光のカーテンが顕現した。
青、紫、緑。その壮大な景色は、まるでリナを称えるようだった。
オーロラが揺れる紺碧の空を見上げる。
あいつの歌声は、全てを愛し、全てを許す、そんな祈りだったのだ。




