■カントリー・ロード
鋭利で太い角。頭部から上半身に掛けて毛で覆われている。
遠目からでも筋肉質なのがわかる。顔はオジサンみたいだけど、目はつぶら。なんか可愛い。
牧草を食べながら、尾をブンブンと振ってる。ズンズンと地を踏みしめる足もいかにも頑強だ。
え!?なんか突進してきそう、してくるかも、してきた!!
ひゃー!なんで!怖い!
***
と思ったら、執事見習いのシンがスーッと前に出てた。
パッと足元に広がる魔法陣。浮かび上がったのは、巨大な腕。2本の両腕。
闇の拳を固く組み、ゆっくりと振り上げる。
ズドン!
溜まった力を一気に解き放つ!
ジャストミート!大きな衝撃と共に突進とは逆方向へ吹き飛ぶ。
これが噂のバッファローなのね。私、なにか悪いことしたのかしら?
気を失ったのか、動けなくなったバッファローを見て、ホッと胸を撫で下ろす。
「あまり前に出過ぎませんように。」と注意を促すシン。
人の後ろにいたんじゃ観光にならないじゃない。まったく。
***
私はリナ。兄バースを追って、次の街を目指して移動中なんだけど、休憩がてら放牧地帯を観光中。
なだらかにどこまでも続く平原。ぼんやりと遠くに見える山々。パッと青く広がる空に、鳥が飛ぶのが似合う。
餌を求めて、鳥が近くまで来た。全体的に黄色い、丸っこい鳥。胸元に襟みたいな模様がある。紳士なのかな?
ふわっと吹いた風の中に土埃の匂い。故郷でも嗅いだその匂い。なんだか懐かしい。
この道をずっと行けば、故郷に続いてる気がする。
***
帰りたい・・・のかな?まだ帰れない。バースに会ってない。
ボーッと佇んでいると、故郷の街並みが浮かんで来る。
お父様、領主のお仕事大変かしら。
お母様、お父様の手伝いで忙しいよね。
ステラおばさん、元気かな?
他にも、領民の皆の顔が浮かんでくる。
寂しいってこういう気持ちなのね。
でもエレナやキース、リュートにだって知られたくない。
この気持ちは押し込めておこう。そう思うと、あの歌を思い出す。
知らないはずの歌。なのに口をついて出てくる旋律。
故郷を思う気持ちを込めた歌。道が故郷へと続くと信じてる歌。
歌い出すと共に、バッファロー達も、鳥達も、集まって来てた。でもまったく怖くはなかった。
その目は、つぶらな瞳が、優しさで満ちているのがわかるから。
私の光は動物達を包む。
シンはいつもの呆れ顔。でも何も言わなくていいの。わかってるわ。




