■DOWN TOWN
黄昏。華やかに彩る色が目映い。何色と表現したらいいんだろう。
夕食を楽しもうと街を探検する。風がフッと吹き抜けると、香りを運んでくる。
どこもかしこも、お芋。お芋。お芋。お芋の香ばしさが漂う。
看板には「名物」「本場」「元祖」。ありとあらゆる宣伝文句が軒を連ねる。
こういう時は私の勘が冴え渡るのよ。私はリナ。兄バースに会いに来たけど、またまた寄り道。
賑やかな街並みに、次兄のリュートはもちろん、幼馴染のキースまで浮足立っている。
バターの濃厚で芳醇な香りに誘われ、つい店内を覗く。
大盛況なお店、の隣。お世辞にも賑わってるとは言えないそのお店に足を踏み入れる。
***
「何人さんだい?」痩せこけた頬に無精髭。エプロンは煤汚れが目立つ。店主さんのようだ。
席に案内してもらうと、注文前だと言うのに、もう料理が出てきた。
ベイクドポテト。これは美味いやつだ!
あっつあつ、ホクホク。香り立つバター。クーッと鼻から吸い込むと食欲が前に出る。
圧倒的な量だけど、案外あっさり食べられる。
ベーコンの塩味も、サワークリームの酸味もあって、飽きずに完食よ。
バースお兄ちゃんに会えない苛立ち。でも、そんなこと考えてる場合じゃない。
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「こんなに食べられるかしら」キースの妹、エレナの声。
もう誰かが次を注文してくれてたみたい。出てきたのはボリュームたっぷりのステーキ。
切り分けるのも一苦労の分厚さだったけど、豪快にナイフを入れると案外簡単に切れた。
漏れ出る肉汁は、ベイクドポテトもどこへやら。私を夢中にさせた。
パク。お肉を頬張る。噛んでも噛んでも溢れ出る旨味。「うんまい!」
さぁもうひとくち、というところで、「乗せてみな」と店主さんの声。
どうやら肉にマッシュポテトを乗せて食べろっていうことらしい。
!!!!!
お肉だけでも美味しかったのに。なんてことなの。これを、「感動」と言うのね。
肉の野性的な味わい。それをマッシュポテトの理性が受け止める。
これならいくらでも食べられちゃう!なんて思っていると、店主さんは「秘密兵器」と渡してくれた謎の小皿。
恐る恐る、肉とポテトのうえに乗せる。
!!!!!!!!!!
「私、これ好き!!」つい声をあげた。
振り返ると店主さんはニンマリ。してやられた。
***
全員、ウキウキ。
会話も忘れて食事をするなんて久しぶりね。
食後も皆で余韻に浸る。
私は、ついつい食べすぎてしまったお腹をさすりながら、あの歌を思い出した。
この世界の言葉ではない、知らないはずのあの歌。
女性の歌う、あの歌。
お休み前の下町の夜。にぎやかな夜に出かけたくなる、そんな歌。
店主さんへの感謝の気持ちで、つい歌い始めて、私の体から光が溢れる。
なにごとか、と厨房から出てきた店主さんを、感謝の光で包む。
「お嬢様、お料理の感想は、光ではなく言葉でお願いします。」
シンの呆れ声を聞き流しながら、私は光り続けたのだった。




