■なんてったってアイドル
ドドドドッドドドドッ
滝はどこに行っても名所になる。何故だろう、滝には得も言われぬ魅力がある。
私はリナ。滝が名所だと聞きつけて、ついつい観光しちゃうのがいつもの行動パターンになってきちゃった。
兄バースを追いかけて次の領に来ていたが、そんなことは一旦置いといて観光中。
今日は滝。滝を見に来た。余りの水量に呆然とする他ない。
虹もくっきりはっきり良く見える。
お目付け役の次兄リュートも、口をあんぐり開けてその迫力を堪能している。
赤子のミーノが泣き出さないか心配したが、へっちゃらそう。
抱える幼馴染のエレナの方がよほど心配になる。
エレナの兄キースは平静を装っているけど、結構顔に出てる。それはそれで面白い。
執事見習いのシンの無表情は相変わらず。
ウフフッ皆それぞれ楽しんでるみたいで、来た甲斐があった。
私が笑っていると、皆の視線とバッチリ合っちゃった。ちょっと恥ずかしい。
***
今日のスカートはちょっと短め。今日は水飛沫を浴びる予定だもの。
スカートはひらりと風に揺れる。
キースもリュートも、それに他の観光客も、チラチラ見てくるのはわかってる。
ちょっと足が見えてるくらいが可愛いでしょ?
目深に帽子を被ってても、私に気付いてくれなきゃね。じゃなきゃ嫌になっちゃう。
でも、あくまで、「清く正しく美しく。」それが今日の信条なの。
なんて考えていると、歌いはじめてしまった。
この世界の言葉ではない、知らないはずのその歌。
シンが「お嬢様・・・」と止めようとしてるけどもう遅い。
滝の律動は、この歌にピッタリ。
激しくも軽やか。ついついノリノリで歌い上げてしまう。
もうやめられない。絶対やめられない。
私は光り始めたら、歌い終わるまで光り続ける。
その場に居た全員の視線が、私に釘付けになってるのを感じる。注目を集めるのも悪くない。
***
フーッ気持ちよかったー。
今日も絶好調。喉の調子も抜群。好きなときに好きな歌を歌うのは格別よね。
ザワッザワッ
滝の荘厳さの中に人の声。
あれ?なんか周りの様子がおかしいゾ?と辺りを見回す。
他の観光客の皆さんが跪いている。滝を見るときの作法なのかな?と思ったがどうやら違うらしい。
跪き、両手を前に組み、額に近づけている。祈りを捧げているみたい。
「女神様だ」
「いや、聖女様よ」
ポツリポツリと聞こえ漏れる声。
もしかして、わたし?
え?え?やってしまった?
キースもエレナもリュートも、そしてミーノまでもが『やれやれ』と困り顔だ。
シンは押し黙っているけど、きっと同じ思いだろう。
ど、どうしよう・・・
***
シンが察してくれたようで、闇の精霊にお願いしてくれた。
魔法だ。魔法が成功すると、じんわり魔法陣が浮かび上がる。
シンの足元に魔法陣が鈍く光った。
ぞぞぞぞっ。
不自然極まりないけど、私達を薄暗い雲が包み込む。
いつもの逃走用。手慣れたものね。
雲もいいけど、本当なら幕がいいのよね。なんて贅沢かしら。
陣が見えた瞬間が逃げ始める合図。スタコラサッサと駆け抜ける。
こういう場面は、「いつものこと」と皆笑顔。あ、シンは無表情よ。
あとでリュートお兄ちゃんに『ドジっ娘』ってからかわれるんだろうけどね
素敵な一日だった。
あー、もう1曲歌いたいかも。




