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不死の軍団  作者: svn
11/18

■スマイル・フォー・ミー

着いた!やっと着いた。

私はリナ。侯爵領事館で働く兄、バースに会いに来た。

バースが働く領事館は、侯爵領中央にある。

侯爵領事館に向かう大通りを背伸びするように歩く。

道路は整備され、とにかく広い。ゴミのひとつも落ちてない。

これが都会かぁ。私達の故郷、帝国最南西に位置する伯爵領とは大違いなわけよ。

道路を囲む建物はどこかきらびやかで、どれもこれもお日様を遮るように背が高い。

眩しい!時折目に飛び込む陽光は、影が強い分、一層力強さが増す。

ピューッと風が吹くと、建物のせいか、いつもより強く吹いてる気がする。とにかく寒い。

湿った感じがあるのかな?故郷の風は、もっとこう熱かったような。

悠々と歩く人たちと比べて、私達はキョロキョロ、ソワソワ。「田舎者」って思われてたりして。

先を行く幼馴染のエレナの抱くミーノは、いつもと同じでキャッキャッと両手で愛想を振りまいてる。

ミーノのあまりの元気ぶりに、エレナも大変そうだ。

エレナの半歩後ろを歩くのは、次兄のリュート。護衛騎士でも気取ってるのかしら。

動きだけは機敏に周囲を警戒している。野次馬先でも探してるのかな?

私の隣には、エレナの兄キース。キースだけはキョロキョロしてない。落ち着いたものね。

いつもどおり、私の歩幅に合わせてくれてる。安心して観光させてくれる。

シン。執事見習いの彼は別行動。宿の手配に走ってる。いつも頼りにしちゃうのよね。


***

侯爵領事館は、荘厳な門に門兵が三人。門の両脇で、槍を手に微動だにしない二人と、忙しなく応対する受付係が一人。

キースが受付係に話を通すと、領事館に迎え入れてもらえた。

応接室に通される。「しばしお待ちを」と給仕の方がお茶を用意してくれた。

お茶も高級みたいで、如何にも香りが違う。シナモンかな?オレンジかな?香りが印象的でさっぱり爽やかだけど、甘味が強い。

エレナはわざわざ砂糖を追加してるみたいだけど、流石にいらないんじゃない?

お茶請けにはなんとチョコレート。高級菓子よ。これは是非堪能せねば。

ひとくち、パクリ。鼻を抜ける濃厚な味わいの甘味の中に、カリッとした食感。食感のあとに広がる塩の味。

濃厚さを際立たせてくれる。ちょっとビックリしたけれど、これがチョコレートなのね。

お茶にお菓子にと夢中になっていると、館の執事長様がいらっしゃった。

執事長様が言うには、バースは領の東に使いに出ていると言うのだ。

えーん、がっかり。会えると思ったのに。

肩を落とし、トボトボと門を出ようとしたところで、お茶を出してくれた給仕の女性が声を掛けてきた。

「あのぅ、ちょっとお話が・・・」


***

街の名物だという喫茶店に入る。シンと合流もしたいし、落ち着いて話すには丁度いいよね?

喫茶店の名物だという「コーヒー」は、私以外も皆初めて。

芳醇な香りに何故か落ち着く。独特な苦味に続く後味の爽やかさは、さっきいただいたお茶とも違う。

「あ、おいしい」

そんな素直なひとことに、給仕の女性ファナは思いがけずニッコリ。

彼女は、バースと付き合っているらしい。

私達が兄妹だってことは、帰り際に知ったのだという。

バースが赴任した直後は、行き違いで仲が悪かったんだって。

でもあるとき、野犬に襲われた所を助けてもらって、そこから。

その後は、やれどこのデートは良かっただの、あの夜景は二人だけのものだの、とにかく惚気の応酬。


***

そんな彼女の告白を聞き終えたところで、とある曲を思い出した。


両手を広げ、太陽のような笑顔で踊る若い女性。

ニッコリと微笑むと八重歯が印象的。

そんな彼女が元気いっぱいに歌う。

恋心が弾む、そんな歌。

街角で見た、強い陽光に負けないほど眩しい気持ち。

真っ直ぐな恋の気持ちを歌い上げる。

私のために笑って。

あなたのために笑顔になる。

最初から最後まで、元気に、元気に。


思い出した先から歌っていた。

振り付けだって踊れちゃう。

私はいつもの通り、皆を光で包む。この気持ちで、優しい気持ちで。


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