18話 現実と異世界
修正版ではなく修正前のものを公開していたので直しました。
そんなわけでダンジョン攻略が始まった。中からは多くの轟音が聞こえてきていたが、それはだんだんと静まっていく。
時間が経つにつれ、外から見えていた魔物たちは少しづつ数を減らし、冒険者は逆に勢いづいているのが目に見えてわかった。
「千代はいかないの? ダンジョン攻略」
ふとした疑問である。千代はダンジョン攻略に行かずずっと私の隣に立っていた。
「私は特別枠だ。まあ増援組みたいなもんだな。剣崎曰く、自由に動いて空いた穴を修正してほしいんだと」
「穴?」
一体どういう意味だろうか。そんな私に千代は指を指した。
「ほら、そろそろ出てくるよ」
そう言った手前ダンジョンから出てくるのは数人の冒険者である。何人かが肩を貸し、そのまま倒れ込んだ。
怪我人だ。それも頭から血を流して気絶している。
「これは……」
「ダンジョンを攻略してりゃ怪我人は出る。特に今回みたいな難易度の高いダンジョンだと無傷ってのはありえない。ここからは怪我人がどんどん出てくるから私もあとで空いた穴を修正しに行くんだよ」
つまり、怪我人が出るのは当然だから、それによってできた戦力不足を千代が埋めようというわけだ。たしかに考えてみれば当たり前の話。ダンジョン攻略は命がけっていうし、それによる怪我人の続出は免れない。千代以外にもチラホラ攻略に参加していない冒険者が何人かいる。彼らも千代と同じ穴埋め要因ということだろう。
「私……ダンジョン攻略舐めてたかもしれない」
ダンジョン攻略を無傷で終える。私は心の底でそう思っていた。もしかしたら今回のダンジョンもこれほどの人数が集まったし誰も傷つかないんじゃないかって。そう思っていた。でもそう甘くない。現実はありにも非情だ。
怪我人が運ばれてくる惨状を見ていると、それを嫌でも再確認させられる。
「わかってたことだよ。言っとくけどあんたも多分無事じゃすまない。もしかしたら逃げ出したいくらい痛い目を見るかもしれない。それでも逃げちゃだめだ。あんたが今回のダンジョン攻略の立案者なんだから、そのくらいは覚悟しておきなよ」
「わかった」
少し想像よりも心臓が高鳴っている。おそらくこれは、私自身が攻略に対し恐怖を感じ始めているからだろう。
自分で立案しておいて情けない話だが、やはり理想通りにはいかないものだ。
「ま、何かあったら裕栄を頼れ。あいつは剣崎と違って押せばこっちの意見を尊重してくれる。ちょうどお前の護衛班だし、多分お前がクエストをクリアする頃にはあいつもクリアして護衛班に戻っているはずだ」
「えっ!? そんなにすごいの!? あの人……」
「ああ。あいつは性格もいいし、剣崎よりも総合力では上だ。あと女の押しに弱い。真面目な分免疫がないから、お前がかわいい顔して頼めばどうにかーー」
「いやちょっと待って? なに言ってんだかわかんないんだけど!? 馬鹿か?」
なぜ千代はいつもちょっとエロチックな方向に話を持っていくのか。私は確かに女だけど前世じゃ男だ。正直女も男も異性で見れない異物と化している。相手が誰だろうと、色目を使うことはない。
「おっ、ようやく回答班が攻略に赴く時間みたいだ。由利原がこっちに向かって手を振ってる」
「ほんとだ。行こっか」
静香も由利原の近くに座っている。そのさらに隣には数人の冒険者と思われる姿が。彼らが合図を出しに来た冒険者だろう。他の回答班もすでに集まっているようだ。
「これで全員だな。よーし、それじゃあ行くぞ、全力でクラウチングスタートだ!!」
そう言って私たちは体を屈ませつつ、その時を待つ。
「ねぇこれ意味あるの!? 普通に行かない!?」
「いいじゃん、私こういうの好きだよ? 運動会みたいで」
「シャキッとしろよ、一秒でも早く目的地に着くんだ」
「わ、私足遅いんですけど……」
「はーいごちゃごちゃ言わないでくださーい」
冒険者に怒られつつ、準備中。絶対これ意味ない気がするけど、言っても無駄なのでそれ以上は何も言わない。とにかく、まずは目的地に全力で向かうことからだ。魔物が来るだろうけどどうにか搔い潜っていち早く教室に入る。
「それじゃあ合図が出たからスタートするよ。よーい…………ドンッ!!」
冒険者の人が剣を振り下ろした瞬間、私たちは全力でダンジョンに飛び込む。
そして結界を通り過ぎた瞬間、景色がガラリと変わった。
「うわっ!? 何これ!? 空紫!? 魔物多っ!」
「あはははっ、うるさーい!! 大乱闘だ!!」
結界を超えた瞬間、変化する景色。紫色の空、大勢の叫び声、大量の魔物、飛び交う甲高い衝突音。
まるで異世界に来たかのような感覚に、思わず走りながら叫ぶ。
「回答班が来たぞ!! 予定通り護衛しろ!!」
剣崎君の声が聞こえてきて、同時に冒険者たちが私たちそれぞれを囲んだ。
それを横目で見ながらも私たちは構わず走り続ける。
「!」
と、その瞬間、目の前に現れたのはたくさんの遊具だった。まるで運動会の障害物競走の如く、地面からぼこぼこと遊具やネットが生えてきた。
「うえっ!? なにあれ!? 知らない!」
「情報にはなかったね! 多分イレギュラーだよ!!」
「やばいじゃん! どうするの!?」
「そんなもん!!」
由利原が一足早く走ると、目の前のタイヤを跳び箱のようにして飛び越えた。
「乗り越えるしかないでしょ!」
「ま、まじか!」
由利原のとっさの判断に私も叫ぶ。だが考えている暇はない。
彼女が何事もなく万遍の笑みで乗り越えているのを見て私もとっさにジャンプした。私だけでなく他の回答班の人も飛び越えて前に突き進む。
「よっと、こりゃいい。最近運動不足だったんだ、ちょうどいいぜ!」
「だな。面白い体験だ」
「たしかに。なかなか楽しいじゃん」
男子組が早い。運動能力に差があるのか、タイヤを飛び越え、ブランコを越え、ポールを避け、蜘蛛の巣のように張り巡らされたネットを振り払う。
「がぁああああ!!! やっぱ邪魔! なにこれ! ネットとかだるいんですけど!?」
「うぜぇ、一々時間稼ぎしやがって」
「ハッ、お先ぃ!!」
「あっテメェ!」
「私もお先!!」
「由利原まで!?」
「おい、女に負けてらんねぇぞ! 俺たちも続け!!」
「わかってる!!」
みんなマジで速い。私は完全に後続だ。これでも女子の中では由利原に続いて二番目なんだけど、完全に男子と突き放されてるし由利原がダントツで早い。
「うわぶっ!?」
「静香! 大丈夫!?」
静香がこけた。
「わ、私は大丈夫! 気にせず進んで!!」
「わ、わかった!!」
しまった。こういう時、何があっても千代に進めって言われてたのに。
「ルリ、後ろ!!」
「え?」
背後から魔物。護衛の冒険者たちが守ってくれている中、一匹だけ包囲網を抜けて私を襲ってきた。
「っ!!」
とっさに鞄から、魔道具を取り出す。そして魔力を注入すると、途端に魔物が吹っ飛んだ。
魔道具ーー扇子人形。人形に扇子を持たせた魔道具だ。魔力を入れることで人形が動き、突風を起こすことが出来る。
吹き飛んだ魔物は護衛班がすぐに対処。
「ごめん!! 一匹抜けた!!」
「大丈夫!!」
魔道具作ってきててよかった。もし丸腰のままだったら殺されていたかもしれない。
遊具で足を奪い、魔物が襲ってくる。これは確かに護衛班と回答班で分けないといけないわけだ。
ともあれ、どうにか遊具エリアを抜け校舎の入り口にたどり着く。
「こっちだ!!」
入り口にも多くの魔物が。しかしほかの冒険者が道を作ってくれているのでお構いなしに走り込む。
「ルリちゃん!! 私こっちだから!!」
「了解!!」
由利原の声が聞こえる。場所は入り口左手一番奥の教室。室名札には理科室と書いてある。どうやらすでに目の前まで来たようで、ドアも空けていた。
そんな彼女に背中を押され、私は三階へ。数学のテストは一年三組の教室で行うため、階段の正面奥に存在する。
「えっと、多分こっちであってると思うけど……」
場所は覚えている。だけど見取り図だけでその場所まで行けるかと言われれば私は馬鹿なので不安だ。
「あってる!! そのまま進んで正面!」
裕栄君にそう言われ全力で階段を駆け上がる。
「ここだ宮野!! 魔物が多い!! 飛び込めぇええええ!!!!」
「うおぉおおおおしゃぁああああ!!」
階段を上がってすぐ。そこには既に道を開けた冒険者の姿があった。彼らは魔物をどうにか倒し、そのまま抑えている。そんな彼らの足元に倒れる魔物をジャンプして飛び越え。
教室へ。
ちょうどベストタイミングで冒険者の一人がドアを開けたので勢いのままに飛び込んだ。
回答班宮野ルリ、数学の教室へ現着。
そしてーー、
「え?」
ドアを越えた瞬間、景色が一変した。
そこには、多くの生徒と、一人の教師が立っていた。
補足:
一階、正面玄関西ーー理科室。
由利原到着。
一階、正面玄関東ーー保健室。
尋菜到着。
二階、東方教室ーー音楽室。
久遠到着。
二階、中央教室ーー社会室。
家入到着。
三階、東方教室ーー数学室。
宮野到着。
三階、西方教室ーー国語室。
不在。後由利原が攻略予定。
三階、北棟ーー英語室。
清坂(静香)到着。
学校裏、北方向ーー美術室。
藤村到着。
学校裏北方向ーー技術室。
神崎到着。
別館、正面玄関より西ーー体育館。
不在。後裕栄が攻略予定。
それぞれの立ち位置は以上となります。覚えなくていいです。というか覚えてもまったく意味がないので覚えないでください。時間の無駄です。なんとなくそうなんだぁくらいに思っていただければいいです。
( ・∇・)/《時間の無駄と言いながら補足を書くという矛盾》
あ、あと説明下手な部分も補足しておきます。急に遊具という単語が出てきましたが、あれは道中地面からボコっと出てきています。所謂ダンジョンが回答班の邪魔をしているというわけです。それを搔い潜って彼らは教室へと向かいました。
補足は以上です。気が向けばブクマ、評価等よろしくお願いします。
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎←こいつです。




