熊田と壁山の会話
「え。青山さんと熊田ちゃんって知り合いだったの?」
「うん。二年前に喫茶店で会ったことがあるんだ。それでその時の彼女の振る舞いに」
「恋しちゃった⁉」
目をキラキラと輝かせて訊ねる壁山に熊田は唸って。
「わからない。心臓がドキドキして変な気持ちになるのは間違いないんだよ」
「そっかー……アレ? 熊田ちゃんって男の子が好きなんだよね?」
「そのはずなんだよ。中学の時にイケメンくんに恋をした話はしたよね」
「うん。何回も聴いたよ」
「だから私は男の子が好きなのに、女の子の青山さんのことが気になる。これって変かな?」
壁山は即座に首をブンブンと振って。
「ちっとも変じゃないよ。だって青山さんとってもカッコいいんだもん。劇団の男役?とかしてそう」
「ああ、言われてみればそんな感じがする」
青山の爽やかで優雅な振る舞いは熊田がこれまでに恋した男子にはないものだった。
「そうなると、私は青山さんを無意識に男子だって思っているのかな?」
「結論づけるのはまだ早い気がするよぉ。もう少し様子を見て、自分の気持ちを考えてみよう」
「そうだね。ありがとう壁山ちゃん」
「えへへ。どういたしまして」
友人の壁山と話したことで熊田の心は少しだけ軽くなった。