青山への注目と壁山さんの心配
授業が終わると転入生の宿命とも言うべきか青山は女子に群がられていた。
「どうして転校してきたの?」
「親の仕事の都合なんだ」
「青山さん男子の制服選んだんだね」
「こっちの方が僕に似合うかなと思ってね。どうかな?」
「僕っ娘なんだ~。可愛い~。かっこいい~。制服似合ってるぅ」
「ありがとう」
ひとつひとつの質問に丁寧に答えていく青山を一瞥して熊田は席を立って教室を出る。
同じ空間にいると心臓がどうにかなりそうだと思ったのだ。
特に目的もなく歩いていると後ろから友人のひとりである女子生徒、壁山が追いかけてきた。
「待ってよぉ。熊田ちゃあああん」
甲高い声に小柄な体躯。ツインテールを揺らす小動物的な姿の壁山はアイドル的存在としてクラスの皆から愛されている。
「壁山ちゃん。どうかしたの?」
「様子が変だったから追いかけてきたの」
「心配させてごめんね。私は大丈夫だから」
愛想笑いを浮かべる熊田に壁山はぷうっと頬を膨らませて余り袖が目立つ両腕を腰に当てておかんむりになった。
「嘘つかないの。熊田ちゃん、今日変だよ?」
「それは……その……」
視線を泳がせる熊田を上目遣いでじっと見つめ続ける壁山に、彼は降参した。
「実は――」
熊田は今の悩みを壁山に打ち明けることに決めた。