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イケメン女子の去り際
「どうぞ」
さり気ない仕草で皿を差し出した少女に熊田は目を丸くした。
「よかったらあなたも食べてください。僕の奢りです」
「えっ、そんなことできませんよ」
「ここで出会ったのも何かの縁ですから」
どうぞと言う少女に熊田は断ることができなかった。
彼女があまりにもおいしそうに食べる姿に自分もホットドッグを食べたくなっていたし、せっかくの好意を無下にすることもできなかったからである。
「それではお言葉に甘えて」
皿を受け取りホットドッグを食べる。
味を見て、すぐに彼女が幸せそうに食べていた理由がわかった熊田だった。
綺麗に食べ終わると熊田と少女は同時に席を立った。
「ありがとうございます。御馳走様でした。美味しかったです」
「どういたしまして」
少女はフッと笑うと会計表を手に取り、颯爽とした足取りで会計へと向かっていく。
お金を支払い去っていく彼女を熊田は呆然として見送ることしかできなかった。