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喫茶店で相席を頼んできた美少女
「はあ~……」
行きつけの喫茶店で熊田は巨躯を丸めてホットココアを飲んでいた。
温かい甘さが心を少しだけ慰めてくれそうな気もするが、イケメン君に彼女ができたという事実からどうやっても逃れられず、悲しみと絶望の混じった妄想が頭の中でループして、彼に何度もため息を吐き出させた。
二杯目のお代わりを頼み、運ばれてくる間ぼんやりとしていると玄関の扉が開いた。
カランカランと扉の上に取り付けられたベルが鳴り、客が入ってきたことを知らせるが熊田にとってはどうでもいいことだった。
「すみません。相席、いいですか」
かけられた声に気づいた熊田が顔を上げると、ひとりの美少女がいた。
エアリーヘアに澄んだ瞳。透き通るように白い肌が眩しい。
シャツにスラックスというボーイッシュな恰好をしており、細身で華奢な体躯によく似合っていた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
少女は爽やかな笑顔を見せて席につくと「見てもいいですか?」と確認を取ってからメニュー表を眺め始める。
その時、熊田が注文した追加のホットココアが運ばれてきた。