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熊田の悩みと告白

熊田は見た目だけなら非常に男らしい。厳つい顔に広い肩幅。名前に違わぬ熊のような男だ。しかし彼は自分の見た目や野太い声を嫌っていた。できることならもっと女の子らしい外見になれたらと思っていたが、現実は非情でどんどん男らしくなっていった。

さりとて女の子になる勇気も持つことができなかった。スカートや可愛らしい服を着たい願望はあるものの、自分がつけた姿を想像すると絶望的に似合わないと思っていた。

対する青山は中性的だ。男子の制服が似合うのはもちろん、女子の制服だって完璧に着こなせるだろう。性別を超越した存在というのは彼女のためにある言葉だと思えた。

壁山は熊田の複雑な内面をある程度理解しているのか、ほとんど女子と変わらぬ対応をしてくれて、友人としてとてもありがたいと熊田は思っていた。

青山と隣同士の席で接しながら熊田は少しずつ考えていった。

青山はかっこいい。男子からも女子からも羨望の眼差しを集めている。

ひょっとすると恋ではなくて憧れの感情が近いのかもしれない。

けれど、単なる憧れだけで顔が赤くなったり心臓がどきどきするのか、熊田にはどうしてもわからなかった。

長い間考えて、熊田は告白してみることにした。

恋は憧れかはわからないけれど、青山のことが好きなことには変わりがない。

嫌われるかもしれない。気持ち悪いと思われるかもしれない。

それでも、自分の心を誤魔化すことだけはしたくない。

関係は変わるかもしれないけれど、自分を騙すよりはずっといい。

放課後。夕刻に迫る中、ふたり以外誰もいない教室にて。

熊田は勇気を振り絞って言った。


「あのね、青山さん。話があるんだけど、いいかな。すごく、大切な話」


隣で読書をしていた青山は本を閉じると熊田と向き合う。

彼女は口を真一文字に結び、瞳には真剣な色を宿している。


「話してよ」


促され、熊田は口を開く。喉が渇く。汗が噴き出す。

それでも、懸命に声を発した。


「私はっ! 青山葵さん! あなたのことが……好きです!」


熊田の告白にしばらく沈黙していた青山だったがやがて微笑しゆっくりと口を開いた。


「ごめんね。君の気持ちは嬉しいけれど、僕はまだ君に恋愛感情を持つことはできない。

なにしろ僕と君は前に喫茶店で出会ったのを別にすれば、数日しか経っていないからね。

お互いのことをまだ何も知らないし、時間が短すぎるよ」


穏やかながら彼女の言葉は的確で熊田は何も言うことができない。

俯く彼に対し青山は穏やかな声質で話を続けた。


「今は難しいけれど、未来はどうなるかわからない。だからさ、今度の週末、君さえ良かったら僕と一緒に遊びに行かない?」


願ってもない提案に熊田は喜んで承諾するのだった。


おしまい。

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