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第7話 勉強会編その2 圧倒的不利でも勝てる世界線はあるよね?

ぢゅらおです。

前回の話と今回の話の間に変わったことがあります。それはなんでしょうか?

「────それでなにか言い訳はあるかな? 被告人三室来人(みむらくると)くん?」

「・・・こんなこと言うのもなんですが、本当に事故だったんですよ」

「ふぅーん...時雨しぐれの...はどうだった?」

「・・・? あ、はい。すぐに顔を背けたんであんまり確認出来ませんでしたけど、最高でした」

紗奈花さなか。これ黒だ。真っ黒だ」

「どうするはな? 処す? 処す?」

「いや。炙る前に1回天日干しした方が美味しくなるらしいぞ」

晃太郎こうたろう。俺は冗談だが、お前もさすがに冗談だよな...?」


 来人お風呂侵入事件の後、被告人裁判のために来人は手を後ろで手錠(150円)で固定されたまま、紗奈花の部屋で尋問を受けていた。


「さすがに安心してくれ。半分冗談だ」

「よかっ────おい待て。いらない言葉付いてなかったか?」

「被告人よ」

「あ、はい」


 不気味な視線を向ける花に来人は背筋をスっと伸ばす。

 

そして、花は来人の顔に指をピシッと向けると判決を言い渡した。


「判決。三室来人。未成年の身体を見た罪及び真実を認めなかった虚偽罪。さらに時雨ちゃんという私だって見たい身体を舐め回すように見た罪で・・・」

「とんでもなく誇張されすぎてると思うんだが。あと最後の私怨じゃないか?」

「─────死刑とする」

「待ってくれ!?」


 手錠で手を縛られてるという設定そっちのけで力ずくで外し、来人はその勢いのまま目の前にある机を両手で叩いた。


「執行猶予は!?」

「ない。死刑」

「せめて情状酌量とかあるだろ!」

「女子の身体を見たんだよ? あるわけないよね?」

「おい晃太郎! お前友達だよな? なんか言ってくれよ!」

「・・・そうだな。来人。覚えてるか?」

「何を?」

「お前は友達が少なかった俺に気軽に話しかけてくれたよな?」

「あぁ。そんなことかマイフレンド。俺は当たり前のことをしただけさ」


 実際クラス替えで友達が少なく喋る相手もいなかった晃太郎に声をかけたということは本当であるが、少し事実が足りない。


 これもまた当たり前であるが、来人も話し相手がいなかったため、友達が少なそうな晃太郎をわざと狙って話しかけたのである。

 

何度でも言おう。来人は決して優しさで声をかけた訳では無い。利害の一致というものである。


 そんな事実を隠したままキランッとキメ顔を決めながら答えた来人に晃太郎は涙を浮かべ、来人の肩に手を置く。


「俺はあの時のことを感謝してる。けど同時にあのことを忘れてはいけないと思うんだ」

「ん? まだなにかあったか?」

「あぁ。────俺が花のことをゴリラと言っていたという濡れ衣を着せたことだ...」

「・・・」

「・・・」

「人間って眠い時が1番素直になるって知ってたか?」

「あぁ。俺は今少し眠い。それを踏まえた上で言おう」

「うん」

「俺はお前に喋りかけてもらった喜びよりも・・・捨てられた悲しみの方が勝ってるんだ!!」

「ふざけるなぁぁぁ─────!!」

「落ちつけぇい!」


 今にも掴みかかろうする来人を一本背負いで黙らせた花。それを見ていつも通りと思う紗奈花と花への忠誠心が増した晃太郎。そして普通に怪我した来人。


「えぇーい! 罪人であることは変わらんのだ! 大人しくお縄につけい!」

「待ってくれ!!」

「なんだい? 遺言かい?」

「この裁判。まだ証拠が足りないだろ!」

「??」

「・・・証人尋問がないじゃないか!」


 今からでも十字固めで意識ならず命までも刈り取られる寸前に発した来人の逆転の一手に花は力を弱める。


「うーん...確かにね。本人の意見聞かないと公平じゃないもんね。・・・よしっ! 時雨ちゃん入場!」

「時雨。入ります!」


 まさしく忍者と言っても忍びない見事な前回り入場を決めた時雨に本人と花以外のその場にいた全員が思った疑問があった。


(((そこにずっといたの!?))))


 何よりいちばん驚いたのは紗奈花である。


(時雨ってこんなに運動神経良かったっけ?)

 自身の中で湧いた疑問に紗奈花はしばらく首を傾げ唸った。


「まぁ別にいいや。時雨? あなたがお風呂で来人にどんな目にあわされたのか嘘偽りなく説明して」

「・・・わかったよ。お姉ちゃん」

「あれ? 時雨ちゃんって敬語以外の言葉も使ってるんだ!!」


 さっきまで人を殺しかけていた雰囲気を微塵も感じさせず、目を輝かせながら花は時雨の手を握る。


「あ、はい。中々友達様に使うことはありませんが...お姉ちゃんはまぁ・・・家族ですので」

「ねね。私と話す時も敬語じゃなくてタメで話してくれない?」

「・・・! いいのですか!?」

「あったりまえじゃん! ズッ友に...なろうぜ☆」

「はい! よろしくお────。・・・よろしく!」

「あのぉ。そろそろ本題に戻っても?」

「うん? あぁごめん被告人(笑)」

「今過去最高に呼び方に悪意がこもってたな? あぁ!? やるのか花さん!」

「・・・やるの?」

「ハイ。ヤラナイデス。ゴメンナサイ」


 ボキッと首を鳴らしてみせた花の姿に来人は生まれ持った感覚で感じた。


(勝負挑んだら俺100%死ぬけど?)

 来人がブルブルブルと体を震わせたのに合わせ、花がブルブルブルと手を震わせている様子は誰がどう見ても生まれて間もない小鹿をライオンが狙っている絵にしか見えない。


「まぁそれで?...結局時雨ちゃんはどう思ってるの?」

「私? そうだなぁ」


 時雨はうっとりとした目で来人のことを少し見つめると視線を写り変える瞬間その奥に怪しい光が反射した...


「──────す...」

「へっ? なんて?」


 細くそして少し長く呟いた声を聞き取れなかった花は耳を時雨の口元に近づけた。


 そして、時雨がもう一度呟いたことを聞きとった花は何をするでもなくその場に佇んだ。


「時雨? 花になんて言ったの?」


 紗奈花が恐る恐る時雨の顔を伺うとなにか危ない笑顔を思い浮かべていたと思ったらすぐにいつもの時雨の笑顔に戻った。


「ううん。大した事じゃないから」

「そ、そう...? ならいいんだけど」


(絶対大した事だよな!?)

 来人は顔には出さないものの、焦りを押し切れず手に汗を握っていた。


 なぜならあの花が騒ぎ立てるわけでもなくその場で放心してるからである。そんなこと地球が終わる時だってありえない。


「おーい。花? 大丈夫か?」

「...へ?」

「あ、大丈夫かって聞いたんだけど」

「あー。ごめんね晃太郎。別にちょっと疲れただけ」

「・・・? 花が疲れるなんて珍しいな。1回お風呂借りて入った方がいいんじゃないか?」

「うん。ありがと。そうするね」


 花が紗奈花に一言「お風呂借りるね」と伝えると自分の着替えを持って階段を降りていった。


 残された4人の中にはなにか不穏な空気が流れていたが、誰もそれを切り裂くことができ──────


「よぉぉぉぉし!!」


 1キロ先からでも除夜の鐘を鳴らせそうな声を出した来人は自分が持っていた手提げから人生ゲームを取りだした。


「勉強なんてクソ喰らえだ!」

「来人? お前さすがに早くないか?」

「うるさい。これはお泊まり会だ!」

「勉強会だね!?」


 いつものガヤガヤが戻った3人を横目に時雨は1人静かに虚空を見つめていた。


「ふふっ。とりあえず協力者を作らないとね♪」


 誰もその声を聞くことはなかった...







 お風呂に飛び込むように入った花は時雨から聞いた言葉に疑問を持つように自分の髪の毛をクシャクシャっとかき混ぜる。


「時雨ちゃんのあの言葉って一体...」


 そして再度頭の中でその言葉がお風呂の壁で跳ね返るように反響する。


『来人様のことは大好きですけど...もし────なら来人様には()()()()()()()()()()



 ※※※※※※※



「では第1回人生ゲーム大会〜!!」

「「「「いぇぇーい!」」」」


 来人が拳をあげながら声をあげるとそれに合わせて他の4人も反応をした。


「花? もう大丈夫?」

「大丈夫! お風呂先頂いてごめんね〜」

「ならよかったよ〜」


 紗奈花が安堵のため息を漏らすと重ねるように花も少しため息を吐いた。


(なんかさっき変な空気になったけどせっかくのお泊まり会なんだ! 全力で楽しんでやるぜ!)

 1人勉強会にはいらない気合いを込めた来人はボードを広げゲームを始めるための準備をする。


(俺は...眠い!)

 眠さと死闘を繰り広げる晃太郎。


 バカ2人による思考が駆け巡る中、紗奈花がその場全員をボードゲームに本気にさせる提案をする。


「じゃあこのゲーム負けた人。1週間1位の人の言うことを聞くってことでどう?」


 そして5人それぞれが野望を持った人生ゲームがスタートする...

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