第5話 モテ男!?なわけない
ぢゅらおです。
生活習慣って悪い部分を直そうと思っても直せてないから習慣になってるんですよね?じゃあどうすればいいんですか。
「く、来人?」
「・・・」
「あ、あのさ」
「・・・」
「────! もう話くらいは聞きなさいよぉ!!」
ムウっとほっぺを膨らませると紗奈花は来人のほっぺを力の限り引っ張った。
「─────!! ふぉへぇふぇふぉ!?」
「何言ってるか分からないよ!!」
「ふぁふぁふぁほぉへぇふぁなへぇ!」
「人と話す時はちゃんとした言葉で喋t!」
「はい喋れてない原因紗奈花ですよー」
2人の見苦しい(イチャラブ)光景に花は紗奈花の頭に手剣を与えて仲裁する。
「・・・はぁはぁ...ありがとう花さん」
「いやいやマイフレンドのためならなんのなんの」
「ちょっと花聞いてよ!」
「・・・ん? 何をだい?」
「それが昨日....」
紗奈花は花の耳元に手を当てると昨日一体何があったかをそれはそれはこと細かく話した。
それを聴き終わった花は机の上で顔を合わせないように伏せている来人の背中を笑いを噛み殺しながらバンバン叩く。
「いやぁ来人も全く隅に置けませんなぁ〜」
「ねぇ、ちょっと本気で悩んでるんだって!」
「・・・一体何を悩む必要があるんだい?」
「いや何をって...」
「相手は学校の対の美女って言われてる内の1人だよ?」
「────対の美女? なにそれ?」
「この学校に通っていてそんなことも知らないの!?」
「いや、結構初耳なんだが...」
「・・・まぁそれを知らないのは百歩譲っていいとしてその内の1人はその時雨ちゃんだけど─────」
そう言うと花は作為的に紗奈花を見つめると、怪しげな親指をピンッと立てて「任せて!」と言わんばかりの笑顔。
それに気づいた紗奈花は止めようとするが時すでに遅し。
「そのもう1人がね...今君の目の前にいる...」
「えっ! 花さん!?」
「────!! 違う、私じゃないよ!」
もしこれが本当に花だった場合自分のことを自分で棚に上げて「私可愛いでしょう?」みたいにただの自慢になってしまう。
この流れで花の事だと思っていた来人の唐突な発言に花は顔を紅潮させ、髪をいじいじ...
もちろん裏で来人に氷のような視線が飛んでいたのは言うまでもない。
「紗奈花だよ! 対の美女って言うのは間藤姉妹の事を言ってるの!」
「え? 紗奈花が? 本当に?」
(あれ? なんか今誰かに撃たれた?)
腹の辺りをさすってみるもさすがに穴は空いていない。だが、合唱のように聞こえてくる声にさすがの来人も恐怖を覚えた。
「クルトコロスクルトコロスクルトコロス...」
家に帰ったら海外に逃げる準備しよ。と思う来人であった...
「でさ、来人?」
「ん? どうした?」
「これずっと聞くかどうか迷ってたんだけど」
「おう」
「・・・お前どんなメンタルを持ってたらこの状況で飯食べれるんだよ...」
昼休みを迎えいつも通りに向かい合って昼ごはんを食べていた来人と晃太郎。そんな2人の和やかな食事風景にはとてもいつも通りとは言いづらい光景が映っていた。
「・・・別に、机の周りに輪を作って男子が集まって謎の詠唱をしているだけの景色だが?」
「まず、普通の学校で『詠唱』なんて言葉使わないだろ...」
「確かに...俺も詠唱は使わないな。使っても解放だけだし」
「触れちゃいけない面に触れたような気が...」
親友の残念な面の片輪に触れてしまった晃太郎は酷く哀傷を感じ、細い涙を頬に垂らす。
一方で来人は目の前で涙を流し始めた晃太郎に何をしていいか分からず、とりあえず背中をさすってあげた。
「晃太郎!」
「うん!? どうした花?」
そんな2人のぬめりぬめりとした空気を良くもまぁそんなに元気よく破れたものだ。
そんなヌメヌメブラザーズに話しかけてきたのは言わずもがな、花と...そして紗奈花である。
「良かったら私達も食事に混ぜてくれない?」
「あー、俺は全然いいけど...来人は?」
「・・・! あ、お...俺もいいよ」
「そ! ありがと。じゃ、おじゃま〜」
「お、おじゃま...します?」
近くにあった机をガラガラと引っ張って来ると晃太郎と来人の机に合わせた。もちろん晃太郎と花は隣同士。となると必然的に来人と紗奈花は─────
「皆の衆! せっかく同じ班になったことですし、1つゲームをしようではないか!?」
「げ、ゲーム?」
席に座ってから落ち着く暇もなく発言する花に来人は若干気にそまない言い方で答えた。
「そうです! こうやってご飯時に班になってやることと言えば〜?」
「はいはいはいはい!!」
「元気が良いのはいいことだぞ! マイボーイフレンド! 答えは?」
「間接キs...! ─────グヘッ!」
柔道師範代である花の肘打ちを食らった晃太郎はおそらくしばらくは立ち上がれないだろう。
(oh......she is dangerous...)
殺戮の光景を目の当たりにした来人は思考回路がバグり散らかし、一時的に英語で考えてしまった。暴力ダメ...
「んんっ! では異分子は排除しまして」
「一応彼氏...」
「ん? 何か言ったかい? 来人君?」
「い、いえ! 何も!」
「ふふふっ─────」
今ここまで影を潜めていた紗奈花の突然の含み笑いに来人のみならず花までもが身の縮む思いを感じた。
「さ、紗奈花? どうした? 体どこか悪いのか?」
「ち、違うよ! なんか、私が気にしすぎてたのかなって思って...」
「あーそれについてさ俺考えてたんだよね...」
「うん...」
「別に今決めなくて良くね? って」
「・・・うん?」
「俺さ...を好きなったことがな...かったからさ。決めることに焦ってた自分がいたんじゃないかって」
「んんん?」
「だから! その、もし...!?」
来人はその次に言う言葉を発言することが出来なかった。いや、正しく言うと発言させてくれなかったであろうか。
紗奈花が来人の口を塞ぐように自分のお弁当箱に入ってた玉子焼きを押し付けたからである。
「ねぇ来人」
「・・・?」
突然の玉子焼き攻撃に来人はただ美味しさを感じ、花は両手を口に当てただただ心中ひそかに喜んでいる。晃太郎は未だ(以下略)。
「私が作った玉子焼き美味しい?」
「─────ん。美味い」
「・・・そ! 良かった!」
「じゃあお返しにこれあげるわ」
「これって・・・来人の家の玉子焼き?」
「そうだけど...あ、別に欲しくないよな──────」
そう言って自分の出した玉子焼きを戻そうとしたが、紗奈花は来人の腕を掴んで止めると一思いにパクッと1口で食べた。
「ふふっ────おいしっ」
紗奈花は前髪を手で抑えながら、その小さな口でそれはまぁ美味しそうに・・・
そうして再び自分のお弁当に向き合った2人は考えた。
(あれ? 俺もしかして激辛玉子焼きあげてない!?)
(あれ・・・私今無意識に間接キスしてない!?)
もちろん表面上には出てないが、来人は爆弾をあげてしまった焦りから汗が顔を走る感覚を、紗奈花は玉子焼きの辛さなんか感じないくらいの気恥ずかしさを感じていた。
その後クラスの男子の中では男子同士で玉子焼きを交換して涙を流すという不思議な事が流行ったらしいとな...
「おーしじゃあこれでホームルームは終わるけど、あ! そろそろ期末テスト近いからなーしっかり勉強しとけよー」
無事今日も安全に終わったなぁ〜あはは! よしじゃあ今日も家に帰ろう─────
「えっ期末テスト?」
「そうだな」
「そうでしょ?」
「当たり前でしょバカ」
となんて思っていられる訳がなかった。来人がこぼした疑問に晃太郎、花、紗奈花は「毎度おなじみ」といった様子で首を横に振っている。
「あああ...あと何週間後だ!?」
「1週間後だけど」
「・・・紗奈花。お前はもちろん勉強─────」
「してるに決まってるでしょ」
「・・・は、花。お前ならや、やってないよn」
「ごめーん。珍しくやってる〜」
「こ、晃太郎、貴様ならやっていr」
「すまん。今回は花に弱み握られて泣く泣くやってる」
(えっ...俺以外全員やってる?)
というよりやってない方がバカである。慶青学園は仮にも名門校。テスト1週間前ともなれば生徒全員(来人以外)は勉強を始めている。
そんな来人の思い詰めた表情を見た花は何かを思い付いて不気味な笑みを浮かべ、来人の肩をポンポンと叩く。
「では、そんな来人のために私がいいアイデアを出しましょう!」
「ま、まさか! もうカンニンg─────」
「今日は紗奈花の家でお泊まり会だ!!」
「「「はぁぁぁ─────!?」」」
(んぅふっ! 我ながらいいアイデア!)
(花と泊まる...稽古始まる...危険だ─────)
(あ、お泊まり会とか小学生ぶりかなぁ)
(な、なんで私の家!? いや、今私の家に来たら...! それに花はまだしも、家に男子なんて呼んだことないよぉ!!)
「ちょ、ちょっと花──────」
「じゃ着替えと勉強道具を持って紗奈花の家に集合だぁ!」
「「おー!」」
「ねぇぇー! 私許可してないんだけどぉ!?」