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第4.5話 雨宿りの時って意外に話が盛り上がるよね?

ぢゅらおです。

最近朝が起きることを許してくれません…どうしてでしょう…

「なぁ、この子とこの子どっちが可愛いと思う?」

「うーん...こっちか...な?」

「なんと! 俺もこっちの方が好きでさ、このなんというか幼いキャラなのにボンキュボンってなってるのがまたそそられる!」

「───私普通に顔が好きだったんだけど」

「・・・人の好みはそれぞれだ」

「好みと言うより趣味嗜好が混ざってたね!?」


 この雨の中さすがに強行突破は明日の体調が悪路を辿るのはわかっていたのでどうすることも出来ず一旦教室に帰ってきていた。


(話が...続かねぇ─────!)

 かれこれ1時間はずっと話している。いくらお口が回るのが早い来人くるとでもここまで来たらさすがに話のネタも尽きる。元々帰るのが1時間遅れていたところにさらに1時間上乗せされ、外では良い子のチャイムが鳴っている。


 次の話が思い浮かばず口をごもごもさせている悪い子来人を片目に紗奈花さなかはスマホに目を向けていた。


「・・・? この学校って校内ではスマホ使用禁止だよな?」

「ん? そうだけど...それがどうしたの?」

「優等生である紗奈花が校則を破るとはねぇー?」


 来人は不気味な笑顔を浮かべ「どうしよっかなぁー?」とでも言いたそうな目で見つめた。


「先生に言ってもいいけどそうなった場合今までの君がした事全てバラすからね?」

「優等生であるこの俺にバラして困ることがあるとでも!?」

「・・・グッバイマイフレンド」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

「────じゃあ、ん」


 職員室に足が向いていた紗奈花に全力の反省を示し、かろうじて高校生活を守った来人は目の前に差し出されたスマホの意味を理解出来ないでいた。


「えーっと、つまりどういうことで?」

「────だから...ん!」


(いやわかんねぇよ!! 最近の女子高生は口で説明もできないのか!?)

 来人が紗奈花に少しばかりの疑問の目を向けると、それに気づいたのか、というより諦めたのか、「やれやれ...」とでも言いたそうに顔を横に振った。


「お詫び! 連絡先交換して!」

「れ、連絡先?」

「そう!」

「・・・!」

「─────いや待って。このなんの変哲もない流れで泣くのおかしくない?」


 突然目の前で天を仰ぎながら泣き始めた来人にさすがの紗奈花も少し体が後ろに下がっていた。


「───すまん。まさかこの需要の欠片もない俺の連絡先を知りたがる女子がいたとはと思うと涙が止まらなくて...」

「ねぇ、本当に最近思い始めてきたんだけど本当に人間関係狭すぎない?」

「むむ。狭いとは失敬な。俺だって狭くしたくてしてる訳じゃねぇーよ」

「じゃあなんで─────」

「・・・そこに理由なんてあるか。単純に求められないだけだよ...」


 実際その通りであった。来人は決してクラスで嫌われているという存在では無い────ただ、わかるだろう...一言でいうとオーラが凄いのだ。やばい人オーラが。そんな人は現実でも2次元でも触るな危険である。


「あの...なんかごめんね(笑)」

「───あぁ、わかってくれればそれでいi...とはならないぞこの野郎。せめて顔くらいは反省の色見せろや」

「・・・てへっ──!」

()()()()()何でも許されると思うなよ」

「─────うん? 今『可愛ければ』って言った?」

「あぁ? 言ったけd...!!」

「へぇ、私の事可愛いと?」


 完全に誤爆してその場で固まった来人に紗奈花は少々デレながらも肩をツンツン。さらに、嘲笑うような目をプレゼント。


(─────落ち着け俺。別に女子のことを可愛いと言うのはおかしいことじゃない)

 そう。過去は変えられない。言ってしまった事は仕方ない。問題はどう乗り越えるかである。


(数々の修羅場を乗り越えてきたんだぞ俺は! 『ドキプリッ』(18禁)とか『いもパラ!』(18禁)とか『スクハル!!』(18禁)・・・様々なゲームを完クリしてきた俺に不覚なし!)

 ありありである。まず現実と2次元は違う。この男はそれを知らない。なんと可哀想に...


「───まぁ、そうだな...世間一般的に?! 可愛い分類に入るんじゃないか?」

「ふーん...まぁ、今回はこれで許してあげますかねっ!」


 欲しい答えが引き出すことが出来ず少しは悔しい思いを感じたが『可愛い』という単語が聞けただけで今回は良しとする紗奈花。それに対し、見た目より結構焦っていた来人は肩の重りを外したかのように息を吐いた。


「で? ・・・連絡先だっけ? 俺のでいいなら全然あげるから────はいこれ」

「ありがと〜」

「────ところでさ」

「うん? なんだい?」

「なんで連絡先欲しかったの...?」


 温暖に終わるはずだった空気がその一言で氷点下まで冷やされた気がした。


 核心をつかれた紗奈花は思わず顔を引き攣らし、立場逆転で勢いに乗った来人は鼻で笑う。


「べべべ別に結構仲良くなったからそろそろ貰ってもいいんじゃないかなぁって思っただけだし? 決してたまに連絡したいとか? 暇な時に遊びに誘いたいとか? 全然違うからね!?」

「oh......すっごい早口嘘バレバレ...」

「うるさい! バカ!」

「まぁ、俺も交換...したいとは思ってたし」

「───ふ、ふーん? そうなんだぁ? 良かったねこの紗奈花ちゃんの連絡先交換できて?」

「なんでいつも無駄な一言多いんだよ!」


 紗奈花のおでこにピンッとデコピンをお見舞すると、「痛っ!」と手で擦りながらオーバーにリアクションした。


「でさそろそろ問題に戻っていいかい? 紗奈花?」

「うぁ? なんかあったっけ?」

「・・・俺ら今帰る手段なくて困ってるということをお忘れで?」

「あー。それなら大丈夫。妹が傘持ってきてくれるらしいから」

「へぇ、妹いたんだ」

「うん。この学校の1年生だよ?」

「────1回顔見てみてぇな...」

「え? 知らないの?」

「知らないって何を?...」


 顎に手を当てて心当たりを探していた来人とそれを「本当に?」とでも言いたそうな目で見る紗奈花。そんなふたりの空間を教室の扉が開く音が一蹴した。


「もう! お姉ちゃん! 今日雨降るから傘もって行けって言ったでしょ...ってそちらの方は?」

「・・・はいぃ。───っと三室来人って申します...一応お姉さんのクラスメイトですぅ...」

「そうでしたか! 私──間藤時雨(まとうしぐれ)と申します。突然のご無礼をお許しください」

「・・・! いえ、全然大丈夫です...」


 突然のコミュ障ムーブをかました来人に思わず「おいちょっと待てっ」とツッコミを入れる紗奈花。


「なんで急にそんな感じに!?」

「────んん! ちょっと紗奈花ちょいちょい」


 手を招き教室の隅に呼ぶ来人に紗奈花は疑問を浮かべながら素直に従った。


「────あのな紗奈花」

「なんだい?」


 紗奈花は顔では平然を装っていたが、いつもとは違いすぎる雰囲気に唾を飲み込んだ。


「────知らない人怖い。震えが止まらない...」

「いやコミュ障レベルマックスか!?」

「女子とちゃんと顔見て話したことが少ないから尚更怖い...」

「いや、初心うぶか!────ってちょい待てぃ。『女子とちゃんと顔を見て話したことがない』? ちょっと前見てみ?」


 怯えた目で言われた通りに前を見るとそこには当たり前だが、紗奈花(女子)がいる。


(・・・あ、やっべ。女子と話したことあったわ)

 紗奈花が女子であることを本気で忘れていた来人は目の前で笑っているのに殺意を感じる顔に脂汗を流していた。


「言いたいことはわかるかい? 来人くん」

「・・・来人言葉ワカンナイ」

「この野郎ぉ!! 誰が女子じゃねぇか言ってみろ───あぁ!?」

「ちょまじで痛ぇ!────というか妹の前で男子の頭をグリグリしてる奴結構こっち側だろ!」

「1度ならず2度までも! もう貴様は万死に値する!」

「言葉! 汚くなってるって!」

「知るかぁ! ケツの穴から手ぇ入れて奥歯ガタガタ言わせたろか!?」

「ちょっと乙女が言っちゃダメだって! あと関西出身だったの!?」


 そんな見る人が見たら恐怖でしかない光景にそこに時雨は少々不気味な笑みを浮かべ頬を少し赤くしていた。そして、次に発した言葉はその場全員を酷く困惑させた。


「突然で申し訳ございません来人様」

「ふぇ!? あ...なんでございますか?」

「もしよろしければ─────」

「・・・はい?」

「彼氏という者になって頂けないでしょうか?」

「「はぁぁぁぁ!?」」


 来人どころか思わず紗奈花も口に出す。


「待って時雨! あんたいきなり何言ってるの!?」

「お姉ちゃん。私自分に嘘はつけないよ」

「うんそれはそうだけど...」

「私来人様が大好きになりました♡」

「そこの流れがおかしいでしょぉ───!!」


 全く次元の違う話に問題の根本である来人は意識を失いかけていた。


(あ、お星様が見える〜あ、こっちにはお月様だぁ)

 もう話が飛びすぎて来人の意識はこの世にはなかった。

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