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第40話 あどけなさとは一体何なのか。これからも一緒に考えていこうと思う

ぢゅらおです。

宣言通り、この話で最終話です。

初めて書いた作品で初めての完結。

正直、目に浮かぶものがありますね……

紗奈花、晃太郎、花の3人は星名に急かされるように背中を押され、Mi-kuを後にしていた。


「それで紗奈花。教えて貰った場所ってどこなの?」

「ん! あ、えーとね……」


ポケットからスマホを取り出し、教えて貰った位置情報を確認する。

すると、紗奈花は目をまん丸にして言った。


「どこだろ?」

「分からんのかいっ!」


紗奈花。まさかの方向音痴。


「じゃあ晃太郎! 紗奈花のスマホで確認してあげて!」

「自分で見ればいいじゃないか」

「……わたしは指示を出すのが仕事なの!」


前を歩く晃太郎の背中を手で押す花。その反動でバランスを崩し前に倒れそうになるが、 両手を後ろ回りにぐるぐると回し、かろうじて回避した。


「あっぶねーな全く……ってここって──────」

「どこだったの?」

「いや、うーん……」

「なに? そんな曖昧な場所だったの?」

「あぁ。大体の場所でいいなら、その学校の裏側。山の中。つまり──────」


口に手を当てて、視線を落とし考える晃太郎。晃太郎が徐々に開示した情報によって、3人の中にある1つの可能性が導かれる。

その可能性を、ポロッと零すように紗奈花が


「……あの洞窟?」


と告げた。


※※※※※※


時は少し遡り、校庭の裏にある山で来人くると時雨しぐれ、そして何故か未夏(みか)の3人は横たわる幹の上に座っていた。

足元には一面綺麗な花が咲いており、時雨は時折「綺麗ですねぇ〜」「あの色いいなぁ〜」などと感想を述べている。

来人はただ何にも反応する訳でもなく、俯き自分の足先をじっと見つめていた。その姿にいつもの元気の良さは感じられず、魂が抜け落ちているようにも思えた。


「ところで、2人の時間に私なんかがお邪魔しても良かったのかな?」

「この場所があるって教えてくれたのは未夏さんですから! それに誘ったのは私ですし」


「ですよね? 人殺し」と横に座る来人に視線を向ける時雨。あの一件以来、毎日のように言われているがその度にあの思い出が蘇り、強烈な吐き気を起こすそのワード。

喉の奥から出しそうになる気持ち悪さを手で口を塞ぐことでかろうじて回避する。


そんな2人を見て、未夏の手が一瞬伸びかけるがそれをすぐに引っ込める。伝えたい、だけどそれは私の役目じゃない。そう言い聞かせて。


「……この花畑ね、こんなにも綺麗で目立つのに知ってる人少ないんだよ」

「? そうなんですか?」


「こんなにも綺麗なのに、もったいないですねぇ〜」などと足元にあった花を摘み、花弁を1枚1枚取っていく時雨。


「ここって慶青学園けいしょうがくえんの裏にあって、結構管理されてるんだけど、学校の人もこの場所は知らないらしいんだよ」

「来る途中道かどうか怪しい場所ありましたもんねっ」

「そうそう、私もよくここに来て色々考えて、忘れて帰ったりするんだよ」

「何しに来たんですかっ!」


未夏のちょっとしたボケに的確なツッコミを入れる。楽しそうに話をしているが、その場にいる全員が顔をそれぞれから背けていた。

突然、風が吹き花弁が散り空に高く舞い上がる。その様子を見て、未夏は「綺麗だね」と素直に感想を述べたのに対し、「……そのままの方が良かったのに」と小声で零す時雨。


「……私もう帰るねっあとは若いみなさんでごゆっくりっ!」

「えぇーもうちょっとお話しましょうよー」

「これ以上は私はお邪魔になるからね……」

「何を邪魔になるんですか! それに私の周りの人と話すよりもよっぽど楽しいです」

「あはは、そう言ってもらえてお姉さんは嬉しいぞーって」


時雨のトゲのある言い方に少し言い淀むも、

その上っ面の笑顔に心からの笑顔を返す。


「どうしても行くなら仕方ないですけど、またすぐ遊びましょうね? 今日は図書館に遊びに行ったつもりだったのにここまで案内してくれてありがとうございましたっ」

「まぁ話の流れだったし、私も来たかったからいいよ! じゃあね、今度は時雨ちゃんが好きな場所に行こうね」


そう言い、未夏は喋りながら作っていた綺麗な花冠を時雨の頭の上に載せた。

白いモクセイ味のある匂いを漂わせる花冠。時雨は頭からそれをそっと外すと、鼻に近ずけて匂いをそっと嗅いだ。


「……いい匂い、それにどこかで嗅いだことあるような?」


自分の過去を思い返しつつ未夏が去って少し経った頃、花畑の奥向こうに人影があるのに気付いた時雨。

来人もその視線に気付き落としていた顔をゆっくりと上げると、その正体に気付いて慌てて逃げようとする。

その来人の首根っこを力強く掴み、時雨は「どこ行くの? どこか行くって私言ったかな?」と抑えた声で呟くと来人は力を一気に抜き、その場に小さく蹲った。


「久しぶり〜時雨ちゃんっ」

「────お久しぶりです、花さん」

「嫌だなぁ、また敬語? もうやめてよ〜」

「私たちの間にもう慣れ親しむような間柄はないですよ」

「辛辣ぅ〜」

「時雨さん、元気?」

「晃太郎さんもお元気そうで。で、これはなんの茶番なんですか?」

「茶番……? いや私はただ今を変えに来ただけだよ」

「お姉ちゃんもまだ、この人殺しを諦めてなかったの?」


否定しても嫌なイメージが流れ込むそのワード。3人は来人の方にパッと目を向けると、その言葉を耳で捉える度に、小さく「うっ」と嗚咽しているのがわかった。


「……時雨がそう思っているなら否定しないよ」


怒りで我を失いそうになる紗奈花は、目の前にいるただ1人のために拳に力を込め、ぐっと堪える。


「? ちょっと予想してなかったなぁ……」

「だろうね。私も反省してる。確かに、来人の過去を知っているのは私じゃなくて時雨であって、その結果どう思っているかは全て時雨の自由だって」

「もう少し張り合えると思ってたんだけど、ちょっと拍子抜けだね。ならもう用事がそれだけならお暇させてもらうよ──────」

「だから私は今という時間を来人と共有してる身として、あなたにこれを渡すよ。ちなみにお姉ちゃん権限で中身は見たけど許してね」


手の中にあった物をそっと時雨に手渡す紗奈花。

もっと感情に任せ、高圧的な態度を見せると思っていた時雨はその姉の態度に不信感を抱きつつも、手の中にあった1つのエンベロープをシュッと自分の手元に引き寄せる。


「『親愛なるトキへ。愛を込めて。あま』ってこれ!!?」

「そう。こうなった原因のあまちゃんから時雨への手紙だよ」

「こうなったって言うな!! 全てこいつの責任だよ!!っ」


ありえない状況に興奮状態になっている時雨は紗奈花の言葉に力強い口調で返答する。


「それにこれは嘘だ!! あまはもう──────」

「だから私はこれをあなたに渡すんだよ。嘘だと思ったらそれでいい。ただ、中身を見て時雨は嘘をつかないで欲しい。お願い」


紗奈花は時雨に深々とお辞儀をする。それは普段の2人から、いや姉妹という関係では起こることのない特別な状況であるから。そしてお辞儀は姉としての妹への切実な願いそのものだった。


「……中身を見て、もしこれが偽物なら私たちの縁はこれ以上ないってことでいいよね?」

「もちろん」


お互いの言葉に嘘偽りがないことは既にお互いが把握していた。どんな仲であっても姉妹であり、ライバルであり、そして友人であった2人故である。

そして、時雨がエンベロープを開いて手紙を読み始めたのを確認すると紗奈花はポケットからもう1つのエンベロープを来人に渡す。


「はい。こっちは来人の」

「……」

「ふぅ、女の子が手紙を渡すのを来人は無視できるんだ?」

「……っさい」

「なに?」

「うるさいってば!! こっちの事情も知らず、ドタドタと踏み入れてきてなんなんだよ!!」


そう勢い任せに持っていたエンベロープを手の甲で弾き飛ばす来人。花はピクっと眉を動かし、1歩前に出ようとするが横にいた晃太郎が首を横に振ってそれを静止する。

紗奈花は少しの間、最後に会った時よりも明らかにやつれた顔をしている来人の目をじっと見つめ、再度落ちたエンベロープを拾いそして来人に渡そうとする。


「そう、私は知らないよ過去の来人なんて。だからこれを渡すのは今の来人にだよ。中身は時雨に渡したのとは違って見てないから何が書いてあるかは自分で確認して。渡すのはこれで最後。もし確認したくないなら好きにして」


今度は押し付けるためにエンベロープを来人の胸に手のひらで押し張る。

来人はだらんと力を抜いていた腕を胸まで伸ばし、先程強引に渡された影響で少しシワになっているエンベロープを自分の手元に置く。

開ける前に1回深く息を吸い、少し貯めたあと勢いよく吐いた来人。そして、覚悟を持ちエンベロープの封を開ける。たとえどんなことが書いてあろうとも受け入れるという覚悟であった。


時雨宛と来人宛の2つのエンベロープ。時雨宛のものは紗奈花達が、聞いてきた本当の真実が事細かに書いてあり、さらに思い出話らしきものまで小さな文字でありながらも凛々しく丁寧な形で書かれていた。

時雨は手紙を見ながら口には出さないものの、顔に様々な感情が浮かんでいることを容易に確認することが出来た。

一方来人宛のものはというと。


「来人?」

「……あぁっ」

「もし良かったら何が書いてあったか教えてくれないかな?」


今度はなるべく相手に寄り添うような声で。優しさと包容さを兼ね備えたそんな声で。目の前の来人に目線を合わせるために、膝をついた紗奈花が問う。

その問いに来人は、今にも崩れそうな顔を紗奈花に向け、濁音の混じった声で答えた。


「『だーーーーーい嫌いっ!!! べぇー』って書いて……あった、!」

「……どう?」


意味は分かるが、意図は分からない1文。だが、その1文によって来人の中に渦巻いていた感情が一気に晴れ渡る。

意図は分からなくても伝わる。大切なのは自分がどう伝えたいか。

昔、ある子に教わったことを思い出し、「あ、あぁ……!」と大粒の涙と共に泣き叫ぶ来人。

かつて自分が好きになったその時から変わらない幼さを感じた紗奈花は、そっと手を背中に回すと自分の方に抱き寄せる。


「なんで、なんで俺は1回も見に行ってあげなかったんだよ……」


鼻を啜りながら零す弱々しい言葉。どうすればいいのか分からない。ただどうしてあげられるかは分かる。紗奈花は声を発さずにひたすら自分の胸元で泣き崩れる来人を受け止め続けた。

来人宛のエンベロープにあった1文。それは来人にとって一番欲しかった人からの言葉であり、そしてかつて好きだった人からの精一杯の返事であった。


「……人ってちょっとした事で躓くし、そこから立ち直るのに時間がかかる不器用な生き物だけどさ──────こんなにも素直でかっこいい生き物他にいねぇーよな」

「珍しくいいこと言うね?」

「ばーか。俺は今、最高に……感動してるん、だっ!」

「も、もらい泣きまじですか……」

「そういうおめぇも泣いてるじゃねぇーか」

「う、うぇーん、だってだっでぇ!!」


と遠くから見ていた晃太郎と花も気付かないうちに涙を零していた。


※※※※※※


「……お姉ちゃん」


時間は少し進み、やっとのことで一旦落ち着いた雰囲気になった4人。時雨の顔には他の4人とは違って泣いた跡は無いものの、顔に至る所にシワが寄っていて酷く悩んだことが伝わってきた。


「確かにこれは本物……だった。ごめん」

「お姉ちゃんが嘘ついたことある?」

「─────いくらでもあると思うけど……」

「そうだね」


少しの間気まずい沈黙が流れる。


「私はあの時、あの日の自分勝手な勘違いで憎しみを持ってそして、来人を巻き込んだ。本当にごめんなさい」


今度は一通り泣いて紗奈花の前に座り直していた来人に向けて頭を下げる時雨。


「私、引っ越そうと思う。もう花さん達に見せる顔がないし、何より私自身が私自身に向き合う自信が無い」


まだなにか言いたげそうな素振りを見せた時雨だったが、唇をキュッと噛むとその場から早々に立ち去ろうと踵を返そうとした。


「……逃げるんだまた」

「えっ?」


紗奈花は立ち去ろうとする妹の背中に向けて、言葉を発する。


「そうやって自分が越えられない壁があったら背中を見せて逃げるんだ。そして自分で勝手に壁だって認識して、無理だって決めつけるんだ」

「……」

「ま、私はそれでもいいけどねぇ〜」

「……バカ! アホ! クソ姉!!」

「!!?」


急に言葉遣いが子供らしくなった時雨に紗奈花は、眉を引き寄せる。


「もし許されるんだったら私だって!!!」

「ごめんトキちゃん」


自分の足を強く叩き、顔を下に背け叫んだ時雨はふと聞こえた落ち着きのある声に顔を再び上げる。


「ごめんときちゃん。俺は過去は忘れない。忘れたくない。でもそれでも、俺は未来のために今を生きる。……あまもきっとそうするはず。俺はあまのためにじゃなくて、あまのように生きたい。ヒーローに憧れる子供のようにさ。……時雨さんはどう生きたい?」


口角を少しあげ、目を軽く細め時雨の目を優しく覗き込む来人。たった1枚の手紙であの子が何を伝えたかったのかを深く考え、そして導いた答えを今度は自分が伝えたい相手に伝える。

少しの間悩みに悩んで、自分に言う資格がまだあるのかと思った言葉を喉の奥に押し込めようとした時に、目の前にかつての自分が好きになり、そして恨み、そして今は仲良くなりたいと思う少年の健気な笑みが目に入ってきて、自らもふっと歯を見せ、はにかんだ笑顔を見せる。


「私もあまのためにじゃなくてあまのように生きることにしたよ。……それでもし私にその資格があるなら、もう一度私と友達になってくれないかな?」


来人はその言葉をじっくりと受け止め、そして目の前で手を伸ばし頭を下げている時雨の手をぎゅっと握り返す。


「嫌だなんていう資格が俺にはないよ。俺らは間違えた。だけどそうじゃなかったら俺は今ここにいなかった。間違いから生まれる正解だって俺はあると思うよ」


かつて3人で結びあった時と同じように手と手を重ね合うように手を握り続ける2人。その2人の間を花びらを乗せた気持ちの良い風がまるで自分も手を合わせるかのようにビュッと通り過ぎて行った──────


その場にいた他の3人もそれぞれが各々の形で手のひらを合わせ、緩やかに風に乗って散っていく花びらをただじっと見つめ続けた。


※※※※※※※


時は過ぎ、時期は冬を迎えたある日の学校。

2-4のクラスの片隅、正しく言うと一学期と同じように手堅く1番後ろ、しかし今度は窓側だがその位置の席を獲得した来人のところにいつものメンバーが集まっていた。


「で、今回のテストどうだったの来人?」

「もち、赤点2つ」

「たまにはゼロにしてみないの?」

「叶えられない夢は見ねぇのが俺のポリシーだ……」

「程度低いねそのポリシー」

「あぁ!?」


いつものおしどり夫婦の喧嘩、横目でそれを見つつバカにしながらも自分たちも満更じゃないおしどり感を演出している晃太郎と花。休み時間であることをいいことに、最近よく教室に遊びに来る時雨。

当たり前の日常を当たり前に過ごす。そんな普通の毎日を送っていたのだが──────


「それで? 来人は結局紗奈花の告白の返事どうすんの?」


花の発した一言に教室中が凍りついた。


「……?」

「いやその「ナンノコトデスカ」みたいな顔要らないから」

「ちょっと記憶にございませんなぁ──────」

「……あっそう? なら来人がさ!な!か!の家でさ!な!か!に恥ずかしいコスプレさせようとしてたことみんなに言っちゃおうかな?」

「100%純粋の嘘やめてぇ!? させようとしてないし、人生ゲームの罰ゲームだし、なんならしたの俺な!? 結局ぅ……? あはは、皆様方お揃いで」


来人の眼前には久しぶり野郎御一行様が規律正しく1列に並んでいた。


「「「「こくはくぅぅぅぅ? いえぇぇぇぇぇ? エロコスプレぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」」」」


全員が発狂し、その場で手や足をばたつかせるその映像はもはや夏にやる怖い話特集そのもの。タイトルは呪われた野郎共とでも言おうか。


来人はその光景を確認し受け止め、自身の履いてる靴紐をぎゅっと強く結び直した。


「まぁ……もしこれから先、俺と紗奈花がバカみたいに一緒にいるなら、いつか、かまくらの中で鍋つつきながら馬鹿みたいに笑いあって、みんなでゲームしようぜ」


そう言い残し、紗奈花が最後に見たのは、席から飛び上がるように机を跨いで廊下に逃げた来人と、来人を押さえ込もうと飛びかかったが目標を失いどうしようもなくその場に崩れていく野郎の塊というなんとも言えない醜い光景であった。


※※※※※※


「──────ばぁぁぁっくしょい!!!!」

「風邪? 来人」

「ぐっしゅ! あぁ、かもなぁ〜」

「有り得ねぇだろ。バカなんだから」

「うん。有り得ないね」

「晃太郎と花さん、お前らついに直球で言ってくるようになったな」

「まぁ本当のことだし?」

「おいお前らに遠慮の二文字はねぇのか」

「配慮の2文字が足りない来人に言われたくないよーだ」

「……はっくしゅっ!」

「あー紗奈花♡可愛いぃぃ〜」

「扱いなんか違う!?」

「紗奈花はあどけなさがあって可愛いからいいの!」

「あどけなさ? こいつのどこにそんなものが──────」

「悪かったね! 来人に指さされるようなやつで?!」

「痛っ!? ブーツで足踏むなよ!」

「有難いことにかかとで踏んであげたんだから感謝しなよ?」

「痛さ倍増じゃねぇーか」


こうした会話をしているが、今来人達はかまくら作りに奮闘している最中である。しかも天気は最悪で、フードを被っていても横から殴り掛かるように降る雪が来人の顔面に当たりまくって──────


「って晃太郎が振りかけてるんかい!? どうりで俺だけ真っ白だと思ったわ!! このクソ親友がぁぁぁ!!」

「バカがぁー。気付くのが遅すぎるんだよ!」

「おいひとつ教えてやる。凡人は夢を見て、天才は夢を描き、バカは寝る。世の中はそう出来てるのだよ。つまりバカが寝なきゃ凡人は夢を見れないし、夢がないなら天才は夢を描けないんだよ!」

「なら凡人が寝て夢見ればいいんじゃね?」


晃太郎からの鋭いツッコミに来人は先走る口をムスッと閉じる。


「てか口動かしてる暇あるなら、手を動かせよ晃太郎」

「お前が、変なメッセージ送ってこなきゃ今頃家でこたつで丸くなってるつーの!」


投げやり気味に来人にスマホを見せつける晃太郎。そこには確かに「なぁ、この後かまくら作って鍋パした後、パーティーゲームしようと思うんだけど、良かったら来てくれねぇーか?」という自分が送った文章が表示されていた。


「だって俺らもう卒業だぞ? 思い出作らんと」

「うーん、まぁ一理あるね」


来人の意見に後ろから賛成してきたのはかまくら作りのはずなのにでかい雪だるまを作成中の花。

さらにその後ろで紗奈花は一応避難用に用意しておいたテントでゆっくりとお茶を楽しんでいた。


「紗奈花もこっち来て一緒に雪遊びしよーよー」

「雪遊びじゃねぇ! かまくら作れって!」

「えぇーだるいぃぃ」

「おめえもだるいじゃねぇーよ!」

「……ぽちっ」


花は紗奈花の面倒くさがる様子を見てポケットに入っていたスマホを操作したあとある1つの音声ファイルを再生した。そこからは紗奈花の声で


「好き。私は三室来人が好き。私は今この時、目の前にいる君が好き」


といったセリフが聞こえてきた。


「あ、これ紗奈花の5回目の告白ね?」


「「あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」


当事者である2人は花のスマホに向けて思いっきりダイビングをして、それを奪おうとしたが勢いの弾みで対面から飛び出した2人の頭は見事な音を立て、2人は雪の中に伏して沈黙することになった。


※※※※※※※


「おっまたせぇー!! ってあれ?」

「おっ! 時雨ちゃんやっほ〜」

「花ちゃん! ごめん、冬期講習で遅くなっちゃったっ!」

「いいのいいの〜どうせこっちもこんな感じで待ってるだけだから」


と後から到着した時雨の目の前にはテントの中にあるこたつでみかんを食べている花、そして横並びで寝る来人と紗奈花、また未だに外で何かを作っている晃太郎の姿を見受けた。


「なんというか……、いつも通りか!」

「そっ! いつもどおーり!」


あはははっ!と共鳴するように笑い合う2人。

テントの入口のすぐそばには結局かまくらを作ることを断念し、雪だるま制作になった4人が作ったそれぞれの小さな雪だるまがあった。

時雨はふと足元に目を落とし、それを見つけると


「私も作ってくるぅー!!」


と持っていた荷物を投げ捨て大はしゃぎで雪だるまを作りに行った。

手に持っていたみかんの皮をまたひとつめくり、口に放り投げた花は横並びで気持ちよさそうに寝る2人を見て「本当にお似合いだこと……」と小言を零す。

そして入口の雪だるまに目を向けると、作りが甘かったのかそれともテントの中の熱にやられたのか、来人の作った雪だるまが傾いていて、紗奈花の作った立派な、だけども口をつけ忘れてる雪だるまに寄りかかっていた。


「「ペットは飼い主に似る」なんとも的を得た言葉ですこと」


そうして、雪だるまを見た時に遠くからやってくるのを確認した星名と未夏に手を振ると、手に残っていたみかんを上に投げて、見事に口でキャッチした。

ぢゅらおです。

まずはここまで読んでくださった方に心よりお礼を申し上げます。また初連載から約2.3年経ってしまったことこちらも心よりお詫び申し上げます。

言ってしまえば望んだ終わり方進み方かと言えば決して満足いくものではなかったかも知れません。しかし、後悔は微塵もしていません。

この物語を作った身として責任をもってこの物語を見届けることが出来たこと作者として、そして一番のファンとして誇りに思っています。

今のところこれ以上の話を足す、またはショートストーリーを書くつもりはありません。しかし、僕の始まりを作ってくれた彼らが恋しくなったらまた戻ってこようかなと思います。

最後になりますが、拙い文章、ルールから外れた部分など様々あると思いますが、完結後もこの作品あったな位で覚えておいてくださると、作者冥利につきます。

また、次回の物語でお会いしましょう。

ちなみに1話だけ公開されてるやつを修正、再構成したものを新作にしようと思っております。よろしくお願いします。

では!

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