表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/44

第38話 過去は今を紡ぐためにある。

ぢゅらおです。

少し長め、しかも珍しい地の文多めの説明文口調の話になっています。所々時制がおかしいところがあるのは、星名の語っているから。過去と今を行き来しているから。そう捉えてくれると嬉しいです。

まず、軽く来人と私の関係について話しとこうか。

来人のご両親さんは俗に言う転勤族で、よく色んなところを、国内のみならず海外も回っている人達で、ある日海外に行くってなった時にまだ幼い来人を連れていくのは可哀想だということで、よく交流していた私に来人を預けて行ったんだよ。

まぁ、そこら辺の話はどうでもいいよね。それよりもあの日のことについて深く話すよ。あの日は記録的豪雨の日で、いつものように遊びに行こうとする来人を止めたんだけど、来人は「うるせぇっ!」って聞かなくてさ。いつも遊んでるところに行くそうだったし、何かある前に帰ってくるだろうと思った私はそのまま送り出しちゃったんだ。そう思うと、止めなかった私にも責任があるのかな。

そして、あの忘れられない災害が起こってしまった……


※※※※※※


窓の外を見て、ますます強くなっていく雨とは裏腹に帰ってくる様子のない来人に私は若干の不安感を覚えて、傘を刺して来人のことを探しに行くために外に出た。

歩いているだけでも体が飛んでいきそうな暴風も相まって、私の中で感じていた不安感は徐々に増大化していった。

20分ほど歩いて辿り着いた、今にも氾濫しそうな川の上に掛かっている今にでも川に押し流れそうな橋の先から、弱々しくだけど、急いで向かってくる小さな影を見た。それは来人だったんだよ。

私は持っていた傘を投げ捨てて、来人のところに走り向かった。そして橋の上で来人を抱きかかえると自分が来た方向へと踵を返した。

その数秒後、橋は大きな音と共に、原型を残すことなく崩れ去ってしまったんだよ。あと少し遅かったら目の前の存在を失ってしまっていたことを考えると、今でも身震いが止まらない。

暫く走り、川から距離をとったところで一息をついた私はやっと腕の上で私に身を任せる来人を見つめた。その時、私は来人が何かを伝えようと口をパクパクしていることに気づいた。

なにか伝えようとしているのか、しかし声を発していない来人に最初は、無視して家に戻ろうとしたんだけど、体を家の方向に向けると少しだけ私の腕を握る来人の力が強くなった気がしてその場に止まった。


「来人っ!! 何が言いたいの!!」

「……あっ、あぁあ!」


音は出ても言葉では無い。しかしその確かに何かを伝えたいという眼差しに私は思考を巡らせる。

すると、その間に来人は片手を伸ばしある方向に指を指した。その方向には既に氾濫してしまった川があった。

この時、来人はいつも誰かと遊んでいると言っていたことを思い出し、ある可能性を導き出した。


「……まさか、あの壊れた橋の先に友達がいるの!」

「ぁあ!!」


肯定ととれる力強い頷き。そして私は、弱った来人を急いで家に送り届け、近所の知り合いの人達にこのことを伝え、急いで川の先にいるであろう来人の友達を探しに行った。


※※※※※※


「とここまででなにか聞きたいことはあるー?」


と語り口調とは似ても似つかないふわふわした口調で喋り続けて乾いた喉にお茶を流し込む星名。

ここまでで1つ分かったことは、来人は逃げたんじゃなく、助けを確かに呼びに行ったこと。言葉が出ず、上手く伝えられない状況も必死に手振りで星名さんに伝え、そして目的を達成していたこと。


「じゃあ来人は逃げたわけじゃない……?」

「逃げた? 誰が?」


紗奈花が自分の中でまとめていた情報の一部が、無意識に言葉として発してしまい、それに反応した星名はトーンを落とした声で続ける。


「時雨ちゃんは来人が逃げた。そう言ってたの?」

「はい。それであまさんは助からなかったって」

「ふーん。少なくとも訂正したいのは、来人は逃げてなんかいない。確かに何も出来ず、1人じゃ何も役に立たない来人だけど、あの時は自分が出来る最大の役割を果たしていたよ。それを否定されるのは少し癪に障るね」


それはあの場にいて、あの場の来人を知る星名だからこそ言える言葉。そしてそれは実際起こったことというのは星名の態度からも疑う余地のない事だった。

一方で柄にもなく、少し気持ちが高揚した部分を見せた星名は手でほっぺをぺちっと挟むと、軽く咳払いをして紗奈花にほほ笑みかける。


「というのを、君たちに言っても仕方ないし、なんなら私と同じ立場なのか君たちはっ」

「……星名さんが話してくれる来人の方が私たちが知ってる来人って感じがして安心しました」

「それを聞いて私も安心したよ。なら、私はそれに応えなきゃいけないよね」


表情は先程よりも柔らかく、だが視線は鋭く、自分の体験したことをなるべく正確に分かりやすくするために自分の思考を集中させた。


「まずその後何があったのかを話すと、その後川を渡れる唯一の橋が崩れているのを確認した近所のおじさん達は、川の水位が少し落ちるのを待ってその間に簡易的な橋を作り、無事に対岸に渡ることに成功したんだ」

「じゃあその近所の方たちは、2人を見つけることが──────」

「出来た。けど、出来なかった。という表現が正しいかもね」

「というのは」

「ここの話は私も直接行けてないから伝聞になってしまうんだけど、1人は弱ってはいたが、意識を保っていて、もう1人はその子の傍でぐったりと力なく横たわっていた……と」


※※※※※※


私は救助を近所のおじさん達に任せて、先に家に帰って来人の手当てをしていた。表面上の傷はそこまで大怪我という具合ではなかったけど、雨に打たれて体調は目に見えて悪く見えた。

だけど、私が必死に看病している間、来人はずっと「2人は……あまさんは……」って繰り返していたね。私はそんな来人を可哀想に思って本来だったらダメなんだろうけど、先程2人が病院に運ばれたという連絡を受けていたので、弱っている来人を車に乗せて、近くにある病院まで走らせた。

病院に着いて、先に受付をしなきゃいけなかった私は来人に「行きたいなら、先に行ってきなよ」と2人がいる病室の番号を伝え、来人に先に行くよう促した。

そこからは私は少しの間、来人と離れ受付を済ませてから病室に向かったのだが、着いた時には病室の端で力なく座り込む来人と、真ん中にあるベッドの上に数え切れないほどの機械を付けた少女の姿があった。


「く、来人……」


と声をかけても反応する気配はなく、私は横たわる少女の傍にある椅子に腰をかけた。モニターには心拍数が表示されていて、少なくとも少女の心臓が動いていることが分かりホッとし、胸を撫で下ろす。しかし、すぐ後に入ってきた医者らしき人から、目の前の少女は心臓こそ動いているが、意識が目覚めることは無い。つまり、生きているようで生きていないそういった状態だということを聞いた。その話は私にだけ聞こえる声で喋った医者の配慮で来人には聞こえていなかったと思う。だけど、その事実は来人の状態を変えることにさほど力を持っていなかった。


「あ、あの。少し話よろしいですか?」


伝えられた事実、その小さな体で受け止めるにはあまりにも大きすぎるその事実をどうすればよいのか、自分の中で問答していた私はふと、後ろからかけられた声に身をビクッと震わせる。


「あなたはその子の保護者でしょうか?」


スーツを着て、髭を少し生やしたそこら辺では珍しいビジネスマン風の男の姿が。私はその男の問いに対して、言葉ではなく、首を横に振ることで返答する。


「……ではそちらの男の子方でしょうか?」


その質問に対しては首を縦に振る。


「なるほど。私、今この場には居ないんですが、私の娘がこのお2人と遊んでいるとの事らしくて、今回も遊んでいたと存じ上げています」


見ない顔に私は半ば警戒をしていたのかもしれない。この目の前の存在が、来人を危険にするのか否か。それを慎重に見極めていた。


「そして、今回のことにつきまして、保護者として情報を整理したいと思いまして」


私の危惧に反し、その男は至って冷静に、しかし冷酷に物事を進めようとしていた。


「……娘さんのお名前は?」

「あぁ、失礼しました。娘は時雨といいます」


時雨なんて来人の口から聞いたことがなかったが、来人の口からよく聞いていたトキとあまという2つの名前。ふとベッドの上の方に目を向けると、ひらがなで「あま」と名札が付いているキーホルダーを見かける。となるとトキという子がこの時雨という子なのか……


「なるほど、私はあそこにいる来人の保護者です」

「彼がそういう名前なのは承知しております。よく娘から聞いていましたので」


これが彼の話し方なのかもしれないが、場に合わないかしこまった口調に私は少しイライラしていた。まるでこの状況を分かっていないかのように感じたからだ。


「まぁ長居をするつもりはないので、手短に。私たちはこの後すぐここを離れるつもりです」

「はぁ……」

「まぁ娘にとっても、そちらの来人君にとっても。……またそちらのあまさんにとっても距離を取るのがいいと親として判断しました」


その時の私はまるでどうでもいいことを喋っているその時雨ちゃんの父親らしき人物の話を微塵も聞いていなかった。

ただ、そんな私でも構わないかのように淡々と話を続ける。


「私も詳しい事情は知らないのですし、知ったところで私には関係ないですが、娘から聞いた話だと、川遊びをしていて、氾濫した川で溺れたそちらの子を助けるために来人くんが助けを呼びに行ったところ戻ってこなかったから、今回の出来事が起こってしまった。そう聞いております」


私の中で、前触れもなく目の前の男に怒りを覚えた。私もそうだが、その場にいなかったくせに何故他人から聞いた話を真実と捉えるのか。そして、直接は言ってないものの来人の責任だと遠回しに伝えているその口調に私は顔面を殴ってやろうかなとも考えたが、そうしたところで状況が良くなるわけもなく、出かかった拳を押さえつけるように引っ込める。


「……少なくとも、来人は助けを呼びました。あれは仕方の無い事故だと私は思います。こんな日に子供だけで氾濫手前の川に遊ばせに行かせてしまった私たちに問題があると思います」


私は落ち着きを繕い、少しでもこの男に響けばと若干の自責と他責を込めた言葉を発した。

だが、この男は興味を持っていないかのように言葉を返す。


「まぁどう思うかは人それぞれですから。時間が惜しいので私は行かせていただきます。あ、あとこちら少しばかりですが、今回少なからず私の娘も事件に関係しているとの事でこちらを置いていきます。この娘さんの保護者様がいらした時には病院代の足しにお使いくださいと伝えてください。では」


とこちらの返事もまたずに、ドアを開けその場から去ってしまった。その男が残した紙袋の中には恐らく数百万はあるであろう札束が見えた。

私は多分この時初めて人の汚さを見たかもしれない。他人と意見を揃えず、聞こうともせず、まして最後まで事件と言い張り、それは自分は来人が犯人であると主張すると言っていることに同義であった。

私は1人残された病室でますます顔色が悪くなっていく来人と一切変化のないあまという少女の2人を交互に見つめ、ただ無力な自分を責めるように膝を2、3回強く叩いた。


※※※※※※


「とまぁ、これが私の知っているあの時の真実だよ」


前々から聞いていた話をより細かく聞いて、より事の重さを理解した3人には、言葉を出して何かを問う余裕などなかった。

少なくとも今の話から時雨が、何故来人を恨むのかそうなってしまったのかを理解するのは十分な情報だった。


「……じゃあ来人は恨まれて当然なのでしょうか」


もう後悔なんて残したくない、ただその意思で喉の奥から言葉を絞り出す紗奈花。

ぎゅっと胸元の服を掴み、苦し紛れに出しているのが見てとってもわかるその様子に星名はニコッと笑う。


「少なくとも、私の話を聞いて紗奈花ちゃんが自分の意見を出してくれたのは本当に嬉しいよ。本当によく頑張ったね。ここまで聞いてくれてありがとう」


そうして優しく頭を撫でる星名の手の感触に感化され、紗奈花は涙が溢れ、「うっ……うっ……」と声をこぼす。


「そんな紗奈花ちゃんに敬意を持って、ここから話すのはその先の話。私からじゃなく、君たちに伝えて、君たちがどうするか考えて欲しいことを話すね」


そうした言葉の元、覚悟を持った目を向ける星名に、3人は机の下で手をギュッと強く握る。


「あまちゃんはね、実は今あの土地で来人と同じように元気に過ごしているんだよ」

「「「えっ?」」」


3人の疑問の声が重なり、大きくなったその種。来人と同じように過ごしている。その言葉はさっきの話を聞いている限り、想像出来ないし、ましてどういうことなのか上手く噛み砕けないでさえいた。


「来人もあの土地を離れてしばらくあと、あまちゃんは奇跡と言ってもいい回復を遂げて、目を覚ましたんだよ──────」

ぢゅらおです。

久しぶりに後書きを書きます。

というのも、なんか急に最近更新を始めたなと思ったら、気付けば終わりに近くね?なんて思う方がいらっしゃるくらい急展開になってしまったと思います。今更新を再開した理由は正直結構気分なのですが、私自身この書ける間に最後まで書ききってしまいたいそう思っております。

その為に重い話を書き続けて限界が来る前に、途中番外編をでこの物語の本来の面白さを持ったストーリー、字を書きたいと思い付け足したりしました。

そしてこのお話でいよいよ、残り残すところ多少変わると思いますが、3、4話になってくるのではと思っております。初めての完結。当初思い描いた終わり方では無いかもしれませんが、わたしはこの物語に一種のメッセージを込めて書き切りたいと思います。必ずしも面白おかしく終わる。重い話はすぐ終わる。そうした縛りに囚われない自分なりの書き方で進められていることにとても感謝しています。ぜひ、残り少ない期間、最後まで読んでくださると大変嬉しく思います。

では次の後書きは最終話でしたいと思います。

ではまた!すぐお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ