第36話 頼りたい人と頼りになる人は大きく異なる。
ぢゅらおです。
この話を書いている僕はちょうど4月1日。つまりエイプリルフールです。
嘘でもいいので、何かご報告できるような人間になりたいですね。どんなに大口叩いても許される日、エイプリルフールとはそういう日だと思います。
ピクニック祭での1件の後、紗奈花達の班は近くを見回っていた先生に、体調不良者が続出のため棄権する旨を伝えリタイアをした。
そこに来人の姿はなく、居場所を聞かれた花はただ来人は体調が悪くなった訳ではなく、別の班に合流しに行った。そう伝えた。
実際のところ、学校側からさらに問い詰められることはなかったため、恐らく来人は時雨と合宿上に到着はしたのだろう。なんにせよ、もう関係ないことだが。
※※※※※※
「紗奈花ぁー? 久しぶりに遊びに行こーよっ」
「う、うん。そうだね行こっか」
「まぁ俺もいるがなぁ」
「女子会に混ざるならそれ相応のことはやってよね晃太郎」
「相応のことってなんだよ、おい下向くな下を」
「なんにも言ってないじゃ〜ん」
「伝えるのに言葉は要らねぇんだよ」
チョップで制裁を与えようとする晃太郎の手を片手で軽く受け流し、お返しとばかりに顔のすぐ横を掠めるように渾身の右ストレートを披露する花。直後に起きたすきま風のような突風がその威力を物語っていた。
「あはははっ……」
「……時雨ちゃんは今日も外出中?」
「おい、花」
見慣れたはずの紗奈花宅もどこか寂しげな雰囲気が漂っている。花はその2階部分に存在する時雨の部屋に目線を向けつつ、呆れた声で呟く。
衝撃の一夜だったあの日からしばらく日が流れたとはいえ、誰も触れようとしなかったタブー的問題に堂々と突っ込んでいく花に、晃太郎は困惑の表情を浮かべる。
晃太郎も気になっていたが、こちらから聞くことも出来ずにもどかしい時間を過ごしていたのは間違いない。
「あーうん、そうだよ」
晃太郎の予想通り、紗奈花も気まずそうに素っ気なく答える。
先程まで、言ってしまえばわざと和やかな雰囲気にしようと少しオーバー気味にリアクションを取っていたのが台無しになってしまった。
「……あのさ、今日の少し行きたい場所あるんだけどいい?」
少し考える素振りを見せた花は意を決したかのように上に向けていた視線を真っ直ぐ見つめ直す。
「行きたいところ?」
「うん。どうしても煮え切らないこの感情を整理するのに、必要な場所。それに今最もこの状況を受け止めてくれそうな人がいる場所」
「えー、俺今日シフト入ってないから行きたくねーんだけど。と言いたいところだけど今回は俺も進んで行かせてもらうぜ」
「……星名さんのところ、だよね」
「正解っ! それともまたこの話を星名さんから聞くのは嫌?」
「ううん。私も聞いてみたいもう一度。その上で来人ともう一度話がしたい」
顔を上げた紗奈花の表情は先程までの自信なさげの湿気たようなものではなく、覚悟を決めたいつもの明るい表情だった。
3人で拳を合わせ、宙に振り上げたその空は雲ひとつない夏らしい綺麗な青空が広がっていた。
※※※※※※
来人の再従姉妹 にあたる、星名が店長を務める飲食店Mi-ku。いつしか、2-4でクラス会を開いた際にお世話になった、というかお世話したこの店で晃太郎は今でも時々バイトとして働いているそう。
花はもちろん知っていたが、紗奈花に伝えるのをすっかり忘れており、店に向かう途中の道ではその話でもちきりだった。
その関係で花も時々店にご飯を食べに行くようになっていたのだが、そこで星名経由で聞いた話だと、晃太郎は見た目によらず几帳面でお客さんから好かれているとの事だった。
「おぉ? 何やら外が騒がしいと見てみたら、見たことあるガキどもがいるじゃないかっ」
「店長、たまたま来たこの子達に自分のサボりを正当化させないでください。店長、既に一時間前からここで座ってるだけじゃないですか」
なんて紗奈花にとっては懐かしいこのやり取りが聞こえてきて、声の聞こえる方向に目を向けると、星名が「よっ!」と手をこちらに振っていた。
その面影はどこか来人を連想させる。
やっぱり、遠いとはいえ似ているところもあるんだな……
「まぁいいじゃねーか暇なんだし」
「店長はね!? こっちはしわ寄せで忙しいんですよ!」
全くもうっ!と頬をふくらませた店員は店の奥へとそそくさと消えていってしまった。
「怒られちゃった……あははは」
「星名さん、お疲れ様です!」
「おっ、なんだ晃太郎も一緒だったのか? あれ、今日はシフト入ってないよな?」
と言いつつシフトが書いてあるバインダーを手にして確認を始める星名。その行動が終わるのを待つことなく、紗奈花は星名に向かって苦しそうにしかし確かな覚悟を持って頭を下げる。
「お願いです星名さん。前に言っていた来人のこと、詳しく教えて頂けませんか?」
「ん、あ〜、やっぱりその話だよね」
「やっぱり?」
まるでその相談に来ることを知っていたかのような反応を見せた星名に、花は「う〜ん?」と疑いの目を見せる。
その目を見て、星名は顔の前で手をバタバタとさせると首を横に大きく振り、強く否定する。
「あーいやいやっ! 来人がいないからなんとなーくそんなことかなぁっとね? あははは」
「……なんで事前に知っていたかなんて今回の問題じゃないし、いいか」
「そうそう、さ! 立ち話もなんだし中に入った入った!」
そうして紗奈花達の背中を半ば強引に押し、店の中へと押し込む星名。履いているズボンの後ろポケットに入ってるスマホの画面には「本バカの未夏」というアカウントからのメッセージが何件も届いていた──────
ぢゅらおです。
物語も終盤、きっと僕は近いうちに最終話と題名づけられた話を書き始めるんじゃないかそう思い始めてます。




