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第33.5話 忘れたくない過去と忘れられない過去。

ぢゅらおです。

毎日制作生活3日目です。ちなみに連続執筆記録、最高記録樹立してるかも知れません。

人生がつまらなかった。何も楽しくないし、何も悲しくなかった。別にそんな自分が可哀想だとも思わないし、変わりたいとも思わなかった。

俺の人生はこういうものだ。そう、ただ決めつけるだけだった。あの時以外は。


※※※※※※


来人くると〜こっちこっち〜」

「ぜぇ……はぁ……お前ちょ、と待てって」

「体力ない来人〜。ばーかばーかっ!」

「! バカは取り消せぇー!!」


目の前を走る少女。その後ろを必死に追いかける俺。こうした鬼ごっこでも、普段から本を読むことの方が多かった俺はちょっとした運動でもすぐ息が上がる。

このままだと49連敗目を喫してしまう。それなら──────


「トキさん! 目の前飛び出ろぉぉー!」

「ガッテン承知! てりゃぁぁ!」

「ちょトキ! 急に飛び出さないでぇぇー!?」


ゴツーンッとでも擬音が付きそうな大きな音と共に、2人の少女が力なく地面に横たわる。


「……タッチ」

「いててて、この状態の可愛い少女を見て一番最初にやることがセクハラですか」

「いや、俺鬼だから」

「鬼のようにこのあまを襲うって言う事!?」

「いや鬼ごっこのな!?」

「そんな事知ってるよ! 私が言いたいのはまず「大丈夫?」って聞くべきって事だよっ」

「これはこれは失礼しました。頭の方は大丈夫ですか? あまさん(笑)」

「こにゃくそぉ──────!!」


外傷を気にした上での言葉なのか。それとも、知能を気にした上での言葉なのか。どちらの意味で捉えるかは人次第だが、反応から見るに恐らく後者の方で捉えたに違いない。ちなみに俺も、後者の意味で言った言葉である。

そうして暴れようとするあまさんをトキさんは枕代わりにして抑える。


「んーいい枕だぁ」

「トキ! 離せぇぇこれが黙って見過ごせるものかぁー!!」

「事実を言われただけなんだから落ち着いて」

「待って敵増えた?」

「なんのことだろーね?」

「敵って全く人の事をなんだと思ってるのやら……」

「おいゴミクズカス来人。来人はなんの疑いもない敵だよ」

「えぇ、酷い言われよう……」

「全くもう、いくら本当のことだからってそれは言い過ぎ──────」

「「一番の敵こいつじゃない!?」」


お互いの顔を見合った俺とあまさんは少しだけ苦笑すると同じ人を指さして眉尻を釣り上げる。

共通の標的となってしまったトキさんは、キョトンとした顔を浮かべると自身を指さして一言。


「わたし……何かしました?」

「丁寧な言葉使えば許されると思ってるんじゃねぇー!!」

「何をしたかと言えば、何をしてないか探す方が難しいんじゃないかなぁ!?」


言いたいことを言い切り、一旦落ち着くように呼吸を揃えて、深く息を吸う3人。そしてお互いの顔眺め、口をすぼめてる者や、大きく口を開けている者、うっすら笑みが滲み出ている者など。

お互いがお互いに違うことが面白くて、俺が我慢出来ずに「ふっ」と声を漏らすと、俺らは空を仰ぎながら、大きくガハガハと笑い、呼吸が苦しくなるのを感じる。

テディベアの様に座り、お互いの背中を寄せ合いながら笑う俺らは、自分たちから見ても仲の良い3人組だった。それ以下はなく、それ以上があったかはよく分からない。ただその時間がとても楽しかった。暗闇に住む俺に差した明るい光のような時間だった。

そんな毎日が続けばいいと思った。

俺にも、こんな時間があってもいいと思えた。


※※※※※※


「なんでまた、思い出したんだろう」


俺には思い出す資格さえないのに。という言葉は喉の奥にしまう。これを口にしたら、今度こそ壊れてしまう気がしたから。

来人は雨で見ずらくなる視界を眉上に腕を添えることによって確保しているはずなのに、目元に次々と水が垂れ落ちる。横殴りの雨のせいと思ったが、


「なんで涙流すんだろ……」


悲しいせいか? 何に? 俺は悲しんでいいのか? 誰に?

──────きっと、あまを思い出した、いや忘れられないからだ。


「そっか、あの時もこんな雨降ってたっけ、それで川が目の前にあって、それで……」


来人は初めて自分がいる辺りを見渡してみると、自分が見たことある風景によく重なる事に気付いた。強く降りつける雨。水量が増している川。そして、森の中……


「……もうやめてくれよ。もう目の前に出てこないでくれ、俺は違うんだ……あまは──────!」


来人はすぐ近くにあった木に背を任せ、力なく座ると、あの日以来会うことの出来てない少女の名前を呟く。その名前は来人の脳裏にあの後、忘れようとしても忘れられない事実を強く甦らせる。


「──────あまは……死んだんだ」


来人の顔は笑ってるように見えたが、目には光が宿ってなく、全てを諦めた。そんなような表情だった。


「トキさんに教えられたんだっけ」


今でも覚えている、家に涙ながらに駆け込んだ俺から事情を理解した親に連れられ、病院に行った。そこで俺は、ベットの上で1寸も動かないあまとその横で泣き崩れているトキさんの姿を見た。

トキさんは俺を見つけると、睨みつけて俺の髪を引っ張り、あまの顔と俺の顔を数センチの所まで近付け、「見ろっ! 見ろっ!」と繰り返す。

見に来たはずのあまの顔を俺は見たくなかった。いや、受け止めたくなかった。

だが、トキさんの言葉はそれを許さなかった。

寝る度に脳に響くあの一言。

忘れたことは無い──────


「人殺し。こう呼ぶのは懐かしいねぇ……」


耳元で突如囁かれた言葉に来人は反射的に反対方向へと飛び退く。恐る恐る目線を上に向けると、見覚えのある笑顔で手を後ろで組む時雨しぐれの姿が写る。


「え……は、え?」

「あはは、本当は会ってすぐにでも言いたかったんだけどね。色々あって今になっちゃった。まぁベストタイミングではあったね」

「時雨、さん?」

「ううん違うよ。私はね、トキって言えば分かるかな? この人殺し」

「!」

「思い出すよね〜この感じ。あの日によく似てる。これも因果か何かかな」


淡々と喋る時雨に、来人は慌てふためいて逃げ出そうとするが、ドスの効いた時雨の睨みがそれを許さなかった。


「そうそう、単刀直入に言うね。私は来人が私に囚われていて本当に良かったよ。もし、そうじゃなかったら、結構な強硬手段に出なきゃいけなかったからね」

「違う! 俺は何にも囚われたりなんて──────」

「ううんしてるよね。じゃなかったら、お姉ちゃんの告白断ってないよ。言ってたじゃん自分で。『誰かの特別な人になっちゃダメだ』って。それ、私が病院で言ったことを思い出したんでしょ?」


俯いて視線を逸らそうとする来人の顎を挟むように片手で掴み、強制的に視線を自分の方向に向ける時雨。来人の脳には、あの時見たビクともしないあまの顔が何度もチラつく。


「うぇ、あ、う──────」

「そうそう。来人はもう普通のような生活はダメだったのに。まさかここまで呑気に暮らしているとは思ってもなかったよ。でもね……」


時雨は恐怖で怯える来人の目から流れ出る涙を、舌で擦りとった。

その瞬間の目は、先程の憎しみの感情が混ざった目とは違い、心から愛している人を見る。そんな目だった。


「何かある度に、思い出して苦しむ。そんな姿も見れて私、体の火照りが止まらなかったの……」


そう言いつつ、時雨は自身の体の線を軽くなぞる。


「だからさ、来人。私と付き合おうよ」

「……え」

「来人はさ。私の言葉をずっと覚えてくれてたんだよね? だから恋人を作らないようにしてたんだよね? なら私もその責任を一緒に負いたい。私なら、きっとあまも許してくれるはず」


足を伸ばして腰を下ろす来人の上にまたがるように座っている時雨は、ただ呆然とする来人の背中に腕を回し、ギュッと強く抱き締めた。


「人って過去を忘れることは出来ないし、未来を知ることも出来ないけど、今は生きれるんだよ。だから来人、過去のために3()で今を生きようね」






ぢゅらおです。

元気の源は誰かとゲームすること。もしくは、話すことです。どうしてもこのシーンを書いていると、現実の僕まで暗い気持ちになるのですが、息抜きにやるゲームでそれを耐えてます。皆様もこれから一気見される方、毎日1話ずつ丁寧に読んでくださっている方、様々だと思いますが、どうかご無理はなさらず、この物語を楽しんでくれると嬉しいです。

次のお話からは特筆したいことがない限り、あとがきがないかもしれませんので、あしからず。

では次のお話でお会いしましょう。

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