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番外編1-2 嘘とは恐らく叡智の発明である。

ぢゅらおです。

番外編その2です。

海外行ってました

時刻は紗奈花家に集合して長い針が2周ほど回った頃、未だに物事は1ミリも進んでいなかった。


「そろそろ本題に入りたいんだけど……」

「くるっくーそれでねそれでねぇー? えへへ」

「この飲み物ってソフトドリンクで合ってるよな?」

「うーん……ラベルには子供ビールって書いてあるけどねー」

「となるとあれか? ふいんき酔いってやつ?」

「そうかもしれないが、馬鹿め。賢い俺がいちよう教えてやるが、雰囲気ふんいきだ」

「来人、いちようじゃなくて一応いちおうだよ……?」

「……ふいんきで変わるだろうが!」

「雰囲気だろ」


このような小さな争いから話が生まれ、最初の頃は積極的に参加していた紗奈花さなかも気付けばぐったりと身体を壁に預けていた。


「あ、そういえば紗奈花」

「う? なに?」

「そのなんちゃらゲームっていつするんだ? 俺ら一応それ待ってるんだが」


「な?」と周りに視線を回し、頷きを求めた来人。

すると、それにならい、「お姉ちゃん、遅いぃー」などと雑言がチラホラ。

腹の底から溢れ出そうになる煮えきった怒りをぐっと堪え、ギリギリの笑顔を保つ紗奈花。


「じゃあ始めようかぁー?」


しかし反射的に来人の頭を片手で鷲掴み、一瞬ぎゅっと強く握ってしまった。まぁ片手でくしゃっと掴んだ程度で、髪が崩れてしまったぐらいのレベルだろう。

と言葉を続けようと俯いてた顔を上げた紗奈花に向けられる視線は、好奇の目、怯えた目、虚ろな目など様々だった。


「っと? どうしたの?」

「紗奈花さん。今確かに、来人の頭から何かが崩れる音が聞こえたんだけど……」

「紗奈花……。はぁ、まだ息あるよ。トドメ刺す?」

「くるっくー? 大丈夫っ!?」

「鼻から血が出てきたが、それ以外は問題ない」

「大問題だよねっ?!」


とまたぎゃあぎゃあと騒ぎ始めて30分後。

ようやく新たな問題が発生することの無い虚無の時間が生まれた。


「ルールの全て! 嘘禁止! 聞かれた内容に答えないこと禁止! 勝ち負けとかはなし! はい開始ぃっ!」


突如ここしかないという勢いで邪魔も入らせないという圧に守られたルール説明が紗奈花によって行われた。

実際至極簡単なルールにそもそもゲーム名なんか言わずに、最初からルール説明から始めてれば今頃チルタイムを過ごせたのではと思ったが、これ以上の火種はさすがに生むまいと喉の奥にしまう来人。

紗奈花によって、ゲーム開始が宣言され数十秒後


「えーとじゃあまぁ、好きなこととかでも言っていくか?」


ゲームをある種制限を持った自分の自己紹介ゲームだと位置付けた晃太郎が、進行を始める。

しかし、静かにしていた時雨はゲームの目的は質問ではなく、答えの方にあると考えこれはある意味、


「飲みゲー……というやつですか」

「待て、どうしてそうなった」


と来人からツッコミを受けることになった。

「うーん、そういうものだと思ったんですけどねぇー」と首を傾げる時雨に、「実は時雨さんは結構酒豪思考なのか……?」と自己質問を始める来人。

紗奈花の魂胆としては、流石妹と言うべきか、時雨の仮説で大正解であった。

ちなみに答えの部分が大切ということであって、言葉に出していた飲みゲーという観点ではない。


「好きなことかぁー。うーんいたぶることとか?」


ほのぼのとした様子の花から発せられた言葉に一同ピタッと全活動を止める。


「……マイガールフレンド。このゲーム嘘禁止だぞ?」

「いや、理解してるよ? だからそのうえで私が言ったのはいt──────」

「嘘だよな?」

「嘘じゃな──────」

「嘘といいなさい。世間的に」

「……むぅ、分かりましたぁ。嘘です。これでいい?」

「……紗奈花? この場合ってルール上どうなるんだ?」

「あ、はっへ!? うーんとうーんとね」


思考が止まっていた紗奈花は、来人に振られた質問を上手く理解できずに、両手の人差し指で頭をくりくりしながら、考えている素振りを見せた。

一方、彼氏としてこれ以上の彼女の素体を見せびらかすのは問題になると考えた晃太郎は、ゲームリタイアで静かにしているという案を提案し、満場一致で可決された。

予想にしてない、いや本来は存在しないはずだが、特別追加ルールとして退場が追加された。

花はゲームに参加出来なくなり、不満そうな表情を浮かべていたが、周りにいた常識人(自己仮定)はそれどころでは無い。

ちょっと間違えてれば、歴史に名を残した人間になっていたかもしれない恐怖に体のみならず、心までもが震えていた。

ちなみにその対象として真っ先に名が上がりそうな男は跪坐し、神にこの時代に花として生まれさせてくれたことに感謝を述べている。


「じゃあ私の方から質問を変えさせて頂きますね?」

「……お、おう。もうぜひ頼んだ」


ピシッと手を挙げ、授業かのように礼儀を持って発言する時雨に、来人は縋るかのように話を促した。


「ぜひ皆様方の好きなタイプを教えてください♡」


こうして、極めて丁寧な態度で、失礼のないように慎重に言葉を述べた時雨により、どう転んでも下ベタな話になるテーマとなった第2ラウンド。

誰が喋り出すか、どのようなことを言うのか、人間誰しも一度は人に聞いたことのあるこの薄いようで奥深い質問は、彼らを人の持つ地雷というものが大量に存在する空間へと案内するのだった。



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