第30話 思い出は時として薬にも傷にもなりえる。
ぢゅらおです。
最近、モチベーションが戻りつつあって書いていて楽しいと思えるようになってきました。
「ほぉーほぉほっほほー……ほぉーほぉほっほほ──────」
「なんかさ自然豊かのところ行くと、たまにどこで鳴いてんのか分からない鳴き声聞こえるよな」
「これ聞いたことはあるけど、正体知らないランキングのトップ3に間違いなく食いこんでくるよね」
どこからか聞こえてくる正体不明の鳴き声を聞きつつ、夜を越えるために必要な木材を集める来人と紗奈花。
当初の予定では今頃宿に着き、最速でこのイベントを終了させ、3日後家に帰る予定だったのだが……
「それにしても他のグループはもう宿に着いてるのかな……」
「というかさ、宿に着いたグループから3日間の合宿始めるってまじでどういうことだよ」
「これね、始まる前に友達に聞いたんだけど、実質全員参加の文武の武を鍛える強化合宿らしいんだよね」
「この学校ってたまに規格外なことやるよな、まぁ正直いつ着いたところで変わらないのか」
「まぁその分夏休みが減る──────」
「おいなんでこんなところで休んでるんだ俺らは。今すぐ出発するぞっ!」
「今出発したら、宿じゃなくてあの世に到着すると思うよ!?」
今すぐにでも出発しようと歩みを進める来人の服を必死に引っ張って止める紗奈花。少しの間、力比べをした後ポツポツと降ってきた雨から身を守るために、集めた枯れ木を持って2人は急いで洞窟へと走っていった。
※※※※※※
そうして、洞窟へと到着した2人だったが、多少雨に濡れることになり、髪は軽くシャワーを浴びた後ぐらいにビシャビシャだった。
「はっくちゅっ!」
「ばぁぁぁっくしょいっ!!」
「なんと可愛らしいくしゃみでしょうと言おうとした後に、とんでもないくしゃみも聞こえてきたね……」
「この状況じゃさすがに仕方ないだろ」
「それにまさか来人が濡れた木じゃ火がつかないなんてところに気付くと思ってなかったよ私は」
「まぁそのせいで集めた木に着ていたカッパを被せてきたから、俺らが濡れてるんだけどな?」
「はいとりあえずこのタオル」と2枚渡してきた花の手から「サンキュー」と受け取り、1枚を紗奈花の方に投げた来人は、洞窟を出た時にはなかったはずの立派な焚き火台を見て、目を細める。
「えーと、あの立派な焚き火台は? 俺らが出た時は適当に枯れ木を丸くしてただけだと思うんだけど……?」
「あー、あれね! あれはね──────」
と花が「あれあれっ」と声を抑えて言うので、来人と紗奈花も反射的に声を小さくして答える。
「なんであいつはあそこで寝てるんだ?」
「まぁこの大きい丸太10本運んだのは全部晃太郎ですからっ!」
花さんでは無いだろと思った来人だが、花はなぜか満足気にエッヘンと花を長く伸ばしている。
つまり、あそこに横たわる男は俺らが軽い枝を拾ってきている間に1人でこの何十kgもありそうな丸太を10本運んだとのこと。
来人は完全にスタミナを失っている晃太郎に大変だったなと珍しく気遣いの挨拶を手向けると、横にいた紗奈花はなぜか合掌して「どうか安らかに」なんて言い始めている。
これこれ……彼はまだ死んでないぞと、心の中でのツッコミもいれ、体力のある3人は冷えた体を焚き火で温めながら、今後のプランを話し合う。
「じゃあ仮定来人と花、今後について話があるんだけど」
「仮定ではないが、了解した」
「はいよ〜」
「……私たち、これからどうすればいいんだよおっ!」
珍しい紗奈花の悲痛な叫びに、花は「おおお落ち着いてっー?」と落ち着きのない声で、紗奈花の背中を擦る。そうした光景をぼーと見ながら、来人は思案を探す顔を浮かべていた。
(俺らが今、どこにいるのかそこから把握しないとな)
と考えた来人は1人、単独で外に飛び出すと明らかに倒れなさそうな木を見つけ、猿のように登り始めた。
「って!? 来人は一体なにしてるねーんっ!!」
下の方から聞こえる紗奈花の声に、来人は声を張上げて答える。
「木に登って上から現在地を把握しようとしてるだけですがぁぁ!!」
「危ないから降りてきなさーい!」
「おかんかぁぁぁ!」
「オトンやで〜!」
「いや、少しも重なってる要素ないけどなぁぁぁ!!?」
恐らく、今までで最長のツッコミ距離だったことは置いといて。
こうして騒いでいる間にも来人はいつの間にか登れそうなところの最高到達点まで達していた。
「──────おい、なんかこっちに近付いてくる光が見えるぞ!?」
「え? どこから?」
「うーんと……洞窟の方向と真逆の方からだな! ってすごいスピードだなおい!?」
来人が目を凝らした先には確かにヘッドライトか懐中電灯、少なくとも人工的な光を持つ人影が、こちらにどんどんと近付いてきているのがわかる。
来人から断片的な情報しか伝わってこない木の下で待機している紗奈花と花は、盛り上がる来人の様子にただただ首を傾げるしかなかった。
「あ、あの、とりあえず1回降りてきt──────?」
「どした紗奈花?」
「……この山って心霊スポットじゃないよね?」
「一体お主は何を言い出すか……」
「いや、微かにだけど、遠くから女性の声が聞こえたような」
「ここここここここ……」
「せめて、怖いぐらいまでは言ってね? それに花が怖いのが嫌いなのはもう知ってるんだよね……」
「っん!? なんでそんなこと知ってるの!?」
「あはは、な、なんでなんだろーねー?」
不自然にあるところから目を背けている紗奈花。花はそんな紗奈花に「分かりすぎでしょ!」とおでこにデコピンを1発お見舞いすると、事の発端であろう人物に一言。
「あとで、もう1回お話しよーね♡」
突然の悪寒を感じた来人。下で何が起きてるかは分からないが、何かが起きてしまったことは分かる。こういう時は100%晃太郎が、くだらないことをやらかした時である。
しかし、一応こういう時は自分でないことを確認するのが、人生を上手く生きるコツ。
「おーい。よく分からないんだが、今下で起きてることって俺が悪いかぁー?」
「いーやー! 来人じゃないよぉぉー!」
「りょーかいでーす!」
心の中でガッツポーズをし、自分の命が今日もあることに感謝を述べると、来人は足を滑らせてぽっくりと最期を迎えないように、行きよりも慎重に降りていく。
(それにしても、あの光って一体……)
ふと先程見た光景を思い返したその時、地面に着いたと思った場所はまだ少しだけ地面から離れている場所であることに気付いた。が、頭で気付いても体はすぐには反応してくれずに、勢いを持った体は頭から下に落ちるように、体勢が崩れてしまった。
「(あ、やべ。これ落ちたら本当にまずいやつかも)」
逆らえぬ重力になんとか重症を避けようと体を動かそうとするが、思考ばかりが先走って全く体は動かない。来人は視界の上部に映った木の根っこにぶつかった……と感じたその時、同時に叫び声のような声が響く。
「! 危ないっ!!」
そして来人の頭はポニュッという擬音に包まれた。いや、ポヨンが正しいかも知れない。なんでもいいが、木の根っこのような硬い感触でないことは確かだった。
(この柔らかい感触……なんだ、これ。天国か?)
死んだことも疑ったが、それでは意識がはっきりとし過ぎている。
ハッと答えに辿り着いたと目を大きく見開いた来人に、息を荒らげる紗奈花の顔が覗き込まれていた。
「だから、危ないって言ったじゃんっ」
「え、あ、う……その、まじですまん」
そう、木の根っこに来人の頭が当たる直前に滑り込んだ紗奈花の身体によって来人は守られたのである。今は、両足を伸ばして地面に座る紗奈花の太ももの上に来人の頭があるという、奇跡的に膝枕状態になっていた。
「ちょ、来人!」
「う、花さんもごめ──────」
「なにちゃっかり紗奈花の膝枕頂いてるのっ!」
「えそっち?」
紗奈花のさらに上から、腰に手を当てて覗き込む花に来人はシュンとしながら反省を述べようとしたが、どうやら花の怒りは別の方向にあるそう。
「あはは、とりあえず来人に怪我がなさそうで良かった良かった……あ、あれ──────?」
来人と花を仲裁するように話に割って入った紗奈花だったが、視界が段々と暗くなっているのを感じ、最終的に来人の頭を太ももの上に乗せたまま仰向けになって意識を失ってしまった。
「ちょ、ちょい! 紗奈花!? どうした──────」
「え!? ちょっと紗奈花!?」
突然魂が抜けたかのように上半身が仰け反って倒れた紗奈花に、来人も痛む体を飛び起こし、紗奈花の肩を揺する。
「っ! おでこあついよ来人!」
「そっか……あんなに体濡れてまともに乾かしてなかったしな、体調を崩しやすくなってることくらいすぐに分かるべきだった」
花に促され、来人も紗奈花のおでこに手を当てて確かめ、間違いなく熱があることを確認する。
無理させてしまっていたことに気付かなかった自分に内心腹を立てつつも紗奈花を安全な場所まで運ぶために、自身は前かがみになっておんぶできる体勢をとる。
「花さん! 俺の背中に紗奈花を乗せて欲しい頼むっ」
「け……けど来人も今怪我してるんじゃ──────」
「いいから早くっ!!」
指摘通り、紗奈花によって頭こそは守られたが、落ちた際に足を挫いていた来人。本当は歩くことがやっとでとても人を乗せることなんてできない状態なのだが。
「──────もーう! 言ったからには絶対に紗奈花落とさないでよね! 私は先に帰って色々準備してくるからっ!」
「大丈夫、投げてでも紗奈花は洞窟まで連れて行くよ」
「かっこいいセリフ吐いたつもりかもだけど、普通にダサいから2人で帰ってきてね」
「……うっす」
こんな時でもカッコつけたくなっちゃうのが男の子。本人はもちろんふざけている訳ではないのだが、どんな時でもかっこよく見られたいという考えも少なからず混じっている。
(なんというか……こう、頼られる時って深くに眠る厨二病とやらが疼くんだよな。)
脳内で久しぶりの感覚に浸っていた来人。
しかし、背中に乗る紗奈花の呼吸が荒くなっていることに気付くと、片手で紗奈花の体重を支えつつ、もう片方の手で紗奈花の上着のフードを顔が隠れるように広げてあげた。
そうして行くべき洞窟の方を見ると、距離的には長距離という程のものでは無かったが、山であるために傾斜があり、意識が朦朧としている紗奈花には無理だろうし、ましてや来人も足の状態的には残りの体力を使ってやっと帰れるぐらいの道であった。
「だいじょうぶ。お前は、何も気にせずに目を瞑ってていいから」
紗奈花に説き伏せるように小声で呟いた来人は、そうしてのっそりと斜面を斜め向きに進んでいくのだった。
ぢゅらおです。
このお話は予め言っておきますが、書きだめしておいた最後の話です。つまり、これ以上はまだ書いていません。(実際はもう1話書いていたんですが、時間が経って元あった展開に納得出来ず、書き直している最中です)
つまり、また投稿期間が空くかもしれませんし、テストが今週で終わるので奇跡の再開を果たすかもしれません。
元々、前に述べた通りここら辺で最終話まで書き溜めて一気に毎日投稿で放出してここまで付き合ってくださった皆様に感謝を述べたかったのですが、少し予定を変更してある程度の区切りが着くところまではこうやって書いた度にあげていこうと思います。そこから先は全てを書きあげて皆様にお届けしようと思います。
では、次の話でお会いしましょう!




