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第25話 ヒーローは悪役がいて成り立つのだから、天才はバカに感謝した方がいい

ぢゅらおです。

実家に戻ってきてる関係で、バイトを2週間ほどお休みしているのですが、度々LINEに流れてくる欠員の連絡がこの時期のバイトの少なさを物語っていて、きっと一人暮らし先に戻った後、バイトを再開したら、欠員入らされるんだろうなぁ…と悲しみに暮れています。

(なんつーか、笑わせるって難しい)

笑わせる。その行動を仕事にしているコメディアンに対し、来人くるとはまさに今、深い尊敬の念を抱いていた。


右手に白紙の答案。前には、ちょうど職員室から出てきた紗奈花さなか。そして、すれ違いざまに渾身の煽り顔。空いている左手でラリアットでも決めてやろうかとも思ったが、いついかなる時に誰が見てるか分からないのでそこはしっかりとおさえ──────


「無理だなアホが」

「わーお。息を吐くように妬みを吐くんだね?」

「妬みじゃねぇ。怒りだよ」

「そうだよねぇそうだよねぇ。こんな課題出来ない自分に怒ってるんだよねぇー?」


ぷぷぷとほっぺたぷっくり笑顔で内側から溢れる感情を隠そうともせず、目の前にいる男に指まで指して挑発するその元気な少女。


無垢で純粋な清楚系とは程遠い偽善的で露骨な下品系とはこいつのことだろう。


と言っても今から怒られに行く来人にはその場で喧嘩を始める気力すらなく、ただ素朴に軽蔑の目を向けるのみだった。


「先生、失礼します。すいませんでした。失礼しました」


ガラッと扉を開けた生徒がピシッと頭を下げた後、ピシャッと扉を閉めて立ち去った。この一連の流れに一分たりとも無駄がないこの動き。職員室にいた先生達は数秒の余韻の後「え?」と情報を処理しきれずに口が半開きでポカンとしていた。


「くーるとっ! どうだった?」

「先生たちの時間を邪魔しないように2秒で出てきた」

「うん。だからどうだったって聞いたんだけどね!? 提出するだけでも、もうちょい時間かかるよね?!」

「いや、こんな紙提出したって仕方ないから、紙残してくる代わりにインパクト残してきた」

「ぶっはっ! どーいうことっ」


紗奈花は笑いすぎて息ができなくなり、「た、タンマッ…」とお腹を抑える。そんな紗奈花を横目に、まるで授業をするかでもように舌打ちをしながら「チッチッチッ」と小さく音を立て、人差し指を左右に振るバカ1人。


「いいかい、課題を出せない時にとれる方法はふたつにひとつなんだよ──────」


今なお笑っている紗奈花に少しだけ気分を良くした来人は声のトーンをより一層張上げる。


「どうやって課題を出したこと自体を忘れ──────」

「課題を出せない時はどうするって?」


細い隙間を突き刺すかのような声。ビクッと身体を震わす来人が、確認するまでもないと「やれやれ」と首を左右に振り、あえて余裕を醸し出す。同様にその未確認の生物も首を鳴らすために左右に振る。


すると、先程まで死ぬほど笑っていた紗奈花が突如こんな事を言い出した。


「そういえばさ、先生ってなんの部活の顧問なんですかー?」

「俺か? 俺はだなー・・・」


と聞き終わる前に全力疾走で逃げる来人。逃げる姿はまるで百獣の王に出くわした鹿のよう。

その百獣の王は上着を横にいた紗奈花に預けると、アキレス腱の入念なストレッチを始めた。


「ラグビー部。これでも元日本代表だ」


肩書きとしては充分すぎる言葉を残した先生は次の瞬間、既に視界にいない男子生徒の首根っこを捕まえる、ただそれだけのために窓から飛び降りた。※絶対に真似しないでね!※


2年4組国語担当教師、丸瞬まるはじめ。節度を学ぶために国語を勉強し直し、今は教師としてこの慶青学園けいしょうがくえんで働いている。日本代表時の異名は「全米が泣いても笑ってる男(errorman)」だというのは後から聞いたお話…


※※※※※※※


「・・・お前、俺がよく逃げる場所教えただろ」

「ううん…えっとね嘘抜きで本当に何も教えてないよ?」

「ならこんなに早くこの場所が見つかる訳ねぇだろ!?」

「いや私もびっくりだよ!?」


場所は移り、校庭の隅にある小さな体育倉庫。そこにはもう使われなくなった道具や、体育祭でしか使われないであろう小道具が収納されていて、体育などで使う道具が入っている倉庫は別にあるため、まず人が入ることはほぼない。


しかし、裏側に立てかけてある板の後ろに穴が出来ており、ちょうどしゃがめば人間が通り抜けられる程の大きさで、来人は恐らくここから中に入ったのであろう。


「いやいや表の扉は鍵掛かってたんだぞ? どうやったらこの穴まで一瞬で見つけられるんだよ!?」

「おい三室。あんまり先生を舐めるなよ? この穴はな、先生が作ったんだから」

「え? そうなんですか!?」


来人、驚きの真実。


「体育祭の道具を探しにこの倉庫に入った時にな、ラグビーボールを見つけちゃって、つい中でキックしちゃったんだよ」

「そういえば、先生ってラグビー部の顧問でしたっけ? ・・・だからってその話にうんうんって頷けないですけどね?」

「現役時代の血が騒いじゃってな…ははは」

「じゃあ穴の外にある原型とどめてないゴム状の物質って──────」


目線で促す来人に示された先にあったのは、なんとも無惨に中身が飛び出てる物。今までの話が本当だとすると、この物とは・・・


「俺が蹴ったラグビーボール…だと思う」

「どんな力で蹴ったんですか!?」


手は落ち着かない様子で、無意識にポケットの中で指を動かし、照れくさそうにしている丸先生にツッコミを入れたのは来人ではなく、横で静かに話を聞いていた紗奈花。


一方来人はというと1つの可能性が脳に浮かび上がり、少々薄い笑みを浮かべていた。


「あーなるほどなるほど。つまり人並みに! 力の強い先生が蹴ったラグビーボールがたまたま倉庫の脆い! 部分に当たって穴が空いたっていうことですね?」

「・・・多分いくつか違うところが──────」


と言う丸先生の指摘を「いいですからいいですから」と軽く流す来人。そして穴の空いた箇所にゆっくりと歩みを進めると、右手でノックをするかのように2、3回叩いた。


考えに乗っ取ると、こうすることで錆びた鉄や、アルミの欠片がポロポロと落ちてくる──────はずだった。なかなか落ちてこない様子に痺れを切らし、もう一度、今度は強めに叩いてみると、衝撃がそのまま右手に帰ってきた。


え?と来人が恐る恐る丸先生に確認の視線を送ると、当たり前だと言わんばかりに大きく頷いている。


「こんな倉庫でも錆びていたら、外部の人が来た時に目に入るかもしれないだろ? 仮にもこの学校にそんなことがあったらイメージダウンに繋がりかねないからなぁ…」


確かにそうだと納得する2人。だが、なら今目の前にいるこの先生は己の筋力のみで、鉄の合板で作られたこの倉庫の壁をボールで突き破ったということになる。


あ、ははははは…と乾いた笑いを出すしかない来人の様子に、窓から飛び降りた時点で常人ではないと気付いていた紗奈花は「だから私じゃないって言ったでしょー!」とまだ最初の疑われた件を引っ張っている。


「・・・おい、いつの間にこんな時間なってたのか。そろそろ職員会議が始まるし、三室。今日の課題はもうこの倉庫の件を黙っとくっていう約束を守ってくれるならやったってことにしていいから次回からはちゃんとやれよー?」

「は、はい」

「間藤もこの件は他言無用で頼むぞー? もしバレたらクビになりかねんからなぁあ!」


はっはっはっと元気よく笑いつつ、紗奈花から受けとった上着を肩にかけた丸先生は「じゃあなー」と言いつつ、ちゃんとした扉から外に出ていった。


ここで驚きの事実をもう1つ。紗奈花と丸先生は来人を見つけた時、裏の穴からこの中に入ったのである。そして、当然鍵など持ち合わせていない。つまり…丸先生は帰る時に南京錠と本来の鍵が掛けられていた扉を教室の扉のように開けたのだ。


「あの人、バケモンじゃねーか…」と呆気にとられている来人に、「あの人、追いかけるときに2階から飛び降りてたよ」となんていう事実、言えるわけないと紗奈花は手で口を覆って自分の心の奥底にしまったとさ。


もはや、さりげなく課題を提出しなくてもよくなったことは来人にとってはどうでもいい事だった。


「さ、紗奈花…」

「なに?」

「俺さ、常軌を逸脱した怪力の持ち主もう1人しってるんだけど」

「あー・・・ははは、誰だか分かる気がする…」

「もしかして、あの方もこの壁に穴空けられたりするのかな…?」

「なんで私に聞くの、本人に聞けばいいじゃん?」

「バカ言え。もしあの方が怪力なのが地雷だったらどうする? 俺のお腹がこの壁みたいになるぞ…」

「・・・否定できないかも」


想像してみただけでも恐ろしく、2人の背中には氷でも背負っているのかのような冷たい汗がツーッと背筋に沿って流れ落ちた…


(今度会った時に、なるべく媚び売っとこ…)

(花って丸先生だったんだ…)

2人はそれぞれの思いを胸に、丸先生が開けてくれた扉からのっそりと重い足取りで教室へと向かっていく。


ふと、とぼとぼと歩いている最中にこんな力を持ちえてる可能性のある花のぼうりょ…もとい愛情表現を日常的に受けているのにも関わらず、涙1つ流さない晃太郎も実は凄いのでは?とも考えたが、それはあいつがバカで痛みを感じてない可能性があると結論づけ、くだらないことだと一蹴した。


※※※※※※


「「ぶぁぁぁっくしょいっ!!!」」


ふたつの場所で同時に鳴り響いたくしゃみ。

「・・・私の噂誰かしているなぁ…?」と正答を一瞬で導いた1人目は近くにあったティッシュで今度は可愛らしくチーンッと鼻をかむ。

「・・・香味料に鼻刺激されたかなぁ…」と言う2人目は手で鼻の下をゴシゴシ擦ると、目の前の激辛のカレーに己の集中を戻した──────










ぢゅらおです。

ちなみにどことは言いませんが、僕のバイト先は飲食店で主にカレーを売っているのですが、そこでのトッピングにある納豆プラスチキン煮込みの組み合わせが好きすぎて賄いで一生食ってます。

ちなみにカレーよりもラーメンの方が好きです。

・・・けど、お腹にそろそろラーメンの自我が芽生え始めて来てるのが怖いので、一旦走りに行ってこようかなと思います…

では次の話でまたお会いしましょう!!

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