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第22話 線は点の集まりなら点は線の集まりでもあるよね?

ぢゅらおです。

これが予約投稿最終日です。

もしこの後後書きが書いてなければ、予約投稿最終日という事を忘れて正午過ぎまで寝ているこの僕を罵ってください。

「・・・あざしたァっ!」

「ありがとうございました〜…」


 忙しい時間も過ぎ、来人くると達は1人飲みに来ていた最後の客に挨拶を済ませると全員一斉に「ふぅぅ」と疲れの混じった息を吐いた。


「終わったね〜!!」

「だなぁ〜」

「俺たちって何したんだっけ?」


 人それぞれ様々な感想をこぼしつつ、一同は最初の大広間へと戻ってきていた。


 そんな中、先程まで賑わっていたテーブル席で店員さんに「あとはやっとくから置いといて〜」と言われた食器を順番に片付けている来人と紗奈花さなか


「なぁなぁ紗奈花真面目な質問なんだが」

「?」

「バカって一体どのレベルのバカから言われるんだ?」

「??」

「いやさ、例えばドジレベルのバカもいるだろ? それに対してどうしようもないバカもいるじゃん。どれに対して人間はバカって言うんだろうな」

「・・・どれもバカって言ってるんだしバカなんじゃない?」

「いやいやいや。けどさ、バカって自覚ないやつとあるやつじゃ大きく違うだろ?」

「それは…そうかも?」

「なら一括りにバカって呼ぶのは他のバカに失礼だと思うんだよ俺は」

「ふぅーん。一応聞いたあげるけど来人は何バカなの?」

「俺は…賢いバカだ!!」

「なるほどね。バカ中のバカ。バカキングりょ〜か〜い」


 サッと手で軽く後ろ髪を払うと、来人に対して哀れみの目を向ける。


 いつもの紗奈花だったら返事さえしてないであろう来人のしょうもない話だったが、自分でも無自覚に来人の質問に答えていた。


「俺今、疲れで非常にナイーブなんだからそんな目で俺を見ないでくれよ…もうそれなら言葉で言ってくれた方がまだ心に優しいって。あと俺ってそんなにバカ?」

「・・・いやぁ来人らしくない来人を見るとバカにしたくなりますなぁぐへへ」

「・・・これ紗奈花もイカれてますわ」


 そう一言吐き捨てると来人は抗議の目線をキッチンに立っていた星名せなに送る。


 星名は来人から向けられる目線に首をコクンと傾けると、ほっぺに指を押し当てて答えた。


「なんだい来人くんや。まるで働かせすぎだろみたいに言ってるように見えますけど?」

「一言一句その通りですわ」

「まぁタダ働きではないよ? 後で大きいジュース何本かサービスしようと思ってたから…」

「・・・労基」

「嘘だからね!? 本当はお代は貰わないよって言おうとしてたからね!?」

「まぁ、それでよしとするか」


 1時間と聞いていたのに、3時間働かされてそれの給料とこれから自分たちが食べる食費が釣り合っているのかは置いといて。とりあえずなんでも無料という言葉を聞けただけで、働いた価値があったと来人は感じることが出来た。


 ちなみに本日全員が元々出す参加費は3000円だったのだが、500円ほど損していることには気付く訳もなく…ただキッチン裏で小さくガッツポーズをする星名。さすがに大人気ない。


「店長。ご相談があります」


 来人と星名と紗奈花が円になって話しているところに、先程星名に向かって吠えた店員が真面目な顔をしてやってきた。


「うーん? 前例を見ないレベルで真面目な顔してるね?」

「もちろんこれは店の営業に関わることですので」

「まさか! またさっきの注文見てなかったことをお叱りに!?」

「いやいや。もうそんなことどうでもいいですよ。それより──────」


 チラッと2年4組が集まりつつある大きな座敷に目を向けると、至極真っ当と言わんばかりに問う。


「彼ら彼女ら全員雇いましょう。正直今日の売上通常の1.5倍です」

「まじで!?」

「おおまじです」

「・・・け、けどうちにこんな大勢を雇うお金なんてないからなぁ…はっはは…」

「その点は心配なく。計算してみたんですが、店長が無給で働けば大丈夫そうです。・・・どうです?」

「すごい…流れるように私の人権が奪われていく…」


 ガクンと肩を落とす星名。紗奈花は冗談だと思い「あははははっ」と気楽に笑っているが、来人と星名はこの人は本当にやりかねない人だというのは昔から知っていたので、恐怖で体が震えていた。


「というのは嘘です。私がそんなことやるわけないじゃないですか〜。よっぽどなことがない限りね」

「何最後の一言怖いよ私…」

「これでも私この店の経理担当してるので」

「よく存じ上げております…」

「下手なことしたら店長だとしても首が…ですよ?」


 大人にしては比較的子供らしく可愛らしいその顔と体で労働者が最も恐れる「クビ」を一切の迷いもなく指で首を切る動作で表現する。


 ふんわりとした雰囲気から感じる本気と書いてマジと読む空気。星名にとって恐怖でしかないが、来人にとっては別段悪い気もしなかった。


「星名の首はねちゃいましょう! もう思いっきり! パァーっと!」

「こらぁぁ!!! 星名じゃなくてお姉ちゃんと呼んでって言ったでしょ!? あとなに同意してんの!?」

「来人くんの了承も取れましたし…店長?」

「あわわわわ、ちょっ近付くの禁止! あとその二ヒヒヒみたいな笑いもダメっ!!!」

「ミッションコンプリート…ふっ、星名。バーイ」

「逃げんなァ!」

「ちょ、離せてめぇ!」

「ふっふっふ…来人を盾にすればカウンター発動するもん!」

「どっかの格闘ゲームの姫様みてぇな技すんな!? あとリアルでやるやついねぇよ!?」

「物事って誰しも1番最初がいるものだよ?・・・光栄です…」

「照れんなぁ!?」

「やっぱり来人くんと店長って似てますよね」

「「似てないわっ!!」」


 ぎゃあぎゃあと騒ぎ、バタバタと暴れ回る来人と星名の姿を横目に、少し離れたところに座っていた紗奈花はふと星名との会話を思い出す。


 ※※※※※※


 喝を入れられてしばらくした後、紗奈花は家でよく料理をしているということもあり、星名と共にキッチンで料理を作っていた。


 先程まで止まる勢いを知らなかった注文用紙も客が食べる時間に入ったのか今は比較的落ち着いていて、星名と紗奈花は溜まっていた洗い物の途中、紗奈花は胸に秘めていた事を星名に話す。


「星名さん」

「どしたー? 紗奈花ちゃん?」

「その…聞きづらいのですが、来人ってもしかして──────」


 周りには誰も居ないものの、紗奈花は過剰と思えるほどに声が他人に聞かれるのを気にしていた。


 そうして星名の耳にのみ届いた言葉は星名が紗奈花を見て確信していたことと、予想もしてなかったことが混ざったかのような内容でとても複雑な気持ちになる。


「! それって紗奈花ちゃん…」

「すいません星名さん。困らせるような質問をしてしまって…」

「うーん。なんだろうね。薄々気付いていたけど──────そっか。紗奈花ちゃんだったんだね」

「ではやっぱり・・・」

「そうだよ。紗奈花ちゃんが思ってる通りだよ。だけど、そのことなんで来人に言わないの?」

「少なくとも私から言う資格はありません。それに、私はあくまでも当事者ではないので」

「でも・・・」

「いいんですよ星名さん。私が知りたかったのは内容ではないので」

「・・・いつからか聞いてもいいかな?」

「最初からですよ。会った時から…ずっと」

「全く…こんな美少女に気付かないとか来人も鈍感が過ぎるねぇ〜」

「(・・・多分、違う)」

「・・・大丈夫?」


 ニコリともしない表情を浮かべていた紗奈花に、星名は若干迷いつつもこれ以上暗くならないように気を付けつつ紗奈花の頭にポンっと手を置く。


「紗奈花ちゃんが本音を言ってくれたから私も言うけど、紗奈花ちゃんはもっと来人に近いタイプかと思ってたんだよ」

「外見…では無いですよね?」

「こんな可愛い子とうちの親族を代表するバカが同じなはずないよっ!」


「さっきも同じようなこと話しましたね」と紗奈花が言うと、「そうだったっけ?」と星名がとぼけ、2人でくすくすと笑い合う。


「今、私の中での紗奈花ちゃんは予想通り半分、新しい要素半分っところだね」

「私誰にも気付かれたことなかったんですけどね」

「そういうところは新しい紗奈花ちゃんだなぁ」


 独りでに納得する星名。

 そんな完全に大人ではなく、どこか子供っぽい要素を含んでいる星名と話していると、紗奈花の心にはなにか温かいものが満たされていく気がした。


「私、星名さんと会えて本当に良かったです」

「・・・お別れの挨拶みたいで嫌だなぁ」

「いえお別れと出会いは一緒ですので。お別れがないと出会いはありませんから」

「──────なんか私よりも大人っぽい!」

「そんなことないです。私はずっと変わらないです」

「人間ってさ。人生で変化しないことなんてないんだよ。大切なのはいつ変化することじゃなくて、どういう変化をするかだと思うんだよねっ」

「・・・その通りですね」

「なんの足しにもならないと思うけど、紗奈花ちゃんに素晴らしい変化が訪れるよう私、三室星名は祈ってるよ!」

「ありがとうございます…」


 グッと親指を立てる星名の背中には、子供っぽく大人っぽい影が伸びていた。


 紗奈花は目の前にいる星名に深くお辞儀すると、先程までのシリアスな雰囲気を一変させるかのように手のひらをバチンと合わせた。


「仕事しますかっ星名さん!」

「・・・だねっ」


 ※※※※※※


「えーでは2年4組の諸君。この乾杯にこぎ着けるまで紆余曲折ありましたが、無事全員が揃ったということでぇー?」

「「「「「かんぱーいっ!!」」」」」


 カチーンっと高らかにクラス全員分のコップがぶつかり合う音が響く。皆それぞれテスト後ということもあり、テストに関する話や、ここに至るまでにあった話などを色んな味のお好み焼き(代金は星名持ち)と共に話題に向き合っていた。


「ぷッはァァ! 仕事のあとのカルピスは最高だなおい!」

「それ言うなら酒でしょ? 可愛すぎでしょカルピスはっ」

「子供は酒飲めないからソフトドリンクでいいんですぅ。紗奈花さんこそ見栄張って子供ビールなんか飲まなくていいんですよぉー?」

「あらぁー? 来人さんこそ目の年齢が大人越えてもうおじいちゃんになってるようですねぇー? これただのりんごジュースですよぉー?」


 一周まわってもはや清々しいまである紗奈花の憎たらしい顔。そんな顔で自分で持ってるりんごジュース(?)を来人に見せびらかさんとグイっと目の前にコップを持ち上げた。


 先程おじいちゃんの目だとバカにされた来人だったが、そのジュースどう見ても子供ビールにしか見えない。だって白い泡が出来てるだもん。


 うーん?っと悩み首を傾げる来人の横からニョキっと現れた花は紗奈花から強引にコップを奪うとゴクンと1口・・・いや、残っていた液体を全て飲み干した。そして、少しだけ考えると花は呆れた様子で紗奈花に語りかける。


「自分の名誉を無駄にしない方がいいんじゃない? これどう考えても子供ビールだよ・・・?」

「うひゃっひゃっひゃっひゃっ!」

「・・・! そこまで笑わなくたっていいでしょうが!?」

「不肖ながらわたくし来人。再現させて頂きまーす」


 そう言うと来人は自分のコップをまるでワインが入ってるかのように匂いを堪能し、舌に乗る程度で結構と言わんばかりの量のみを口に入れた。


「うーん…この匂いにこの味。これはまさしく──────りんごジュースですなぁっ!!」

「「「ぎゃはははははっ!」」」

「そんな感じじゃなかったでしょー!? 花もなんか言ってよ!」

「ごめん。今回は来人に1票」

「花までぇ!?」


 ※注意※彼らが飲んでいるのは全年齢対象のソフトドリンクです。


「もーう…あ、てか花」

「うん? どしたー?」

「その…晃太郎こうたろうと仲直りした?」

「・・・あぁ。なんだそのことか。もちろんしてないよ〜」

「そっかー! したのか〜・・・ってえ? してないの?」

「なんで私から仲直りしなきゃいけないの?」

「あはは…まぁ今回は? ちょーとだけ。ほんのちょっとね? 晃太郎の意見もごもっともだと思いまして」

「あ、いや私が言ったのはそういう事じゃなくて」


「あれあれ」と花が指を指す方向にいたのは、飲んでるジュースはほんのり酸っぱいレモンスカッシュ。それをがぶ飲みして涙を流す晃太郎だった。


「くるとぉぉ…俺仲直りしたいよぉぉぉ」

「いや泣き上戸かお前は」

「そんな冷たいこと言うなよぉぉ。花と喧嘩して仲直り出来てないんだよぉぉ」

「いやなんも冷たいこと言ってねーって」

「なんでお前の手はこんなに暖かいんだよぉぉ」

「知るかァァ!」


 いつもキモイ晃太郎だが、今はベクトルが180度別の意味できもい。人間性格を変えれば人が変わるというが、どうやら晃太郎には通用しないらしい。


「・・・てかお前らまた喧嘩したのかよ」

「いや今回は俺悪くないもん」

「もんやめろ…それで何があったか聞いてやるから話してみろって」

「それがな──────」


 そう言い、憔悴しきった様子でボソボソと何があったか説明する晃太郎。来人は何か口を挟む訳でもなく、物事を判断するために静寂を貫いている。


 そうして晃太郎が一通り話終わると、来人は軽くため息を吐くと、晃太郎に向かってバカにするような目を向ける。


「お前は一体なんの心配をしてるんだよ晃太郎」

「何ってそりゃあ変な客に花が──────」

「あのな晃太郎。1つ教えてやる。変なじじいが絡むのはそいつに価値がある時だけだぞ?」

「・・・?」

「つまり…花にはなんの魅力もねーから心配しなくたって大丈夫ってことだ!」

「あぁあ!? 黙って聞いてればこの脳みそマンボウ野郎が何ボケた口聞いてんねん。殺すぞ?」

「ははは花ぁ!? 口調がすごい関西っぽいな? あとヤンキ──────」

「人の彼女に魅力がないとは来人。さてはお主命が惜しくないな?」

「そんなわけないよね!? 命は1番大事だぞ」

「じゃあ来人1つ質問だ。なぜ俺と花は付き合ったでしょうか?」

「・・・類友だろ?」


 ピッキーンと。その空間には確かに何かが切れる音がした。それも同時に2箇所から。


 来人は地雷を避けるのは苦手だが、踏む上手さに関しては横に並ぶものは極めて少ない。


「 お互いに興味を持ったから」とか「が好きだったから」とかで答えればいいものをわざわざ最もハズレの道を進む来人はあまりにも前線で指揮を執るポテンシャルしかない。


「花…」

「言わなくても分かってるよマイボーイフレンド」

「「一旦休戦じゃ!」」


 ガシッとお互いの手を掴み、力強く頷く2人。来人はその様子を見てクスッと笑うと、今度はわざとらしくヒールを演じる。


「ほぉ? では俺と君たち2人でゲームをしようか!」

「なんのゲームでもかかってこいや!」

「──────愛してるゲームやりまーす」

「「はぁぁぁぁ!!?」」


 愛してるゲーム。ルールは至って簡単。愛してると言って相手を照れさせたら勝ちである。


「けど通常のルールだと晃太郎と花が戦う勝負になっちゃうから独自ルールといこうか?」


 おっほんと咳払いを1つ。そして来人はニヤリと怪しい光を帯びた目を光らせた。


「晃太郎と花がお互いに告白しあってその内容で点数を付けよう。ジャッジはここにいるみんなで。まぁ俺は…紗奈花でいっか」

「ごっほっ──────!!」


 紗奈花は予想もしてなかった急展開に飲んでいたジュースでむせてしまった。つまり、紗奈花は来人に告白するし、来人は紗奈花に告白するということである。フリではあるが、告白というものはどういう形式であってもなにか恥ずかしさを感じるものだ。当然、紗奈花も然り。


 身体中から込み上がってくる羞恥に色んな感情が乗っかり、紗奈花は何度も何度も咳き込む。


「ちなみに、俺と紗奈花に関してはどちらかが照れた場合でも俺らの勝ちな?」

「はぁー!? それずるくなーい? 私たちは内容でしか勝負できないのに!」

「当たり前だろ! そっちはカップルなんだぞ? 照れたら勝ちなんてルール付けたら俺らに勝ち目なんてあるわけないだろ?!」

「ぬぬぬ…それは、そうだけど…」


 確かにと納得してしまった花はどこか不安げな様子だった。

 それもそのはず。晃太郎が言葉で? 内容で? そんなの無理である。口に含んだ水で雨を降らせるレベルで無理である。


「・・・言葉でいいのか?」

「文面がいいなら文面でもいいけどな?」

「いや、直接伝えたいことがある」


 そう言い、晃太郎は花の前に立つとふぅーと息を吐き、優しく言葉を紡いでいく。


「花。俺らもう付き合ってから長いよな」

「うーん…もう1年ぐらいかな?」

「なんかもう思い出せないほどたくさんのことあったよなっ」

「思い出せないの!? なんかショック…」

「花さ、思い出ってその事が他のと比べて特別だから記憶に残るんだよ。俺は花と出会ってあった全てのことが特別だったから、逆に記憶に残ってないんだよ」

「・・・んな事ないよ?」

「だよな、すまん。実は素直に言うと理由もなく思い出せないだけ」

「ふ、ふざけんなぁーっ!」


 その場にいた全員が思わず、ツッコミを入れたくなった。実際、何人かの野郎は「記憶は三日坊主!」とか「脳の容量キッズケータイか!」などとヤジが飛び交った。


 晃太郎はそんなヤジを「うるせーっ」などと流すと、先程まで働いていたせいか、少しだけ湿っている花の髪を撫でるように触ると、「けどさ──────」と続きを話す。


「けど、1番昔なのにやっぱり花に告白した日だけは今でも鮮明に覚えてるんだよな」

「─────どんな風に告白してきたんだっけ?」

「花が覚えてないのかよっ」


 なんて晃太郎はツッコミを入れるが、花は顔を見えないように下を向き、心なしか顔を赤くしていた。


「まぁ俺が言いたかったのはな。まず1つ目。さっきは態度悪すぎたごめん。2つ目、出会ってくれてありがとう。そして3つ目──────」


 と晃太郎は先程まで撫でていた花の髪に綺麗な胡蝶蘭の髪飾りをそっと付けた。


「これからもこんな俺の面倒みてほしい」


 ボソッと。強く言うわけでもなく、弱く言うわけでもなく、ただ何も気にせず。口から出る言葉をそのまま。


 らしいしらしくないそんな晃太郎の姿に、クラスメイトは囃すこともせず、ただじっと見守っていた。


 しかし1人だけ。花だけはちょうど1年前に貰ったのと一緒の髪飾りを見て、今度は耳まで真っ赤にしていた。


 溢れ出る涙を抑えずに、ポロポロと零しつつ目の前にいる何よりも愛おしい存在に向けて言葉を寄せる──────


「私もごめん。晃太郎の優しさに気付けなかった。それと」


 腕で涙をゴシゴシと拭くと、片手で髪飾りを抑えつつ、腫れた目で最大限の笑顔を晃太郎に向けた。


「・・・私を好きになってくれてありがとっ!」


(・・・なんかもうこれでよくね?)

 心の中で来人は思った。これ、先攻俺たちが行くべきだったと。予想よりも、2人が熱々で、もはやこの次に控える俺たち要らないんじゃないかと。


 目立たないようにこっそりと目を紗奈花の方に向けると、ティッシュで鼻をかみながら大号泣をする姿が。


 そして、来人は戦いもせずに敗北が決定し、打ち上げが終わるまで「俺は敗北者です」と書かれた看板を首に下げられたのだった…


 ※※※※※※


「じゃあね〜」

「じゃあな〜」


 しばらくして無事に打ち上げを終えた2年4組一同は各々の家への道と次々に分かれて行っていた。


 来人、紗奈花、花、晃太郎の4人はクラスメイトと別れたあとに4人で静かな夜道をただひたすらに歩いていた。・・・まぁカップルは手を繋いでいたが。


「いやぁ〜色々ありましたなぁ!」

「・・・さっきと人違うと思ったの俺だけじゃないよな?」

「来人、大丈夫。俺もだ」

「あの感動から一体どこからそのペースが出てきてるの…」


 ガハハと大きな口で笑う花。そんな様子を見た他3人は苦笑いでその場を乗り越えていた。


「そういえば晃太郎。なんで花の髪飾りを渡したんだ?」

「? あぁ。花に告った日にも同じ髪飾りを渡したんだよ」

「なるほど。別のものじゃなくて同じものでもいいのか…」

「来人。必死にメモっているところ悪いが、なんだそのメモ帳は」

「『俺の恋愛成就法』だが?」

「・・・二度と使うことなさそうだな」

「おい! 俺だってこの先1人や2人──────」


 と言いかけた来人は口をムスッと閉ざすと一瞬悲しげな顔を浮かべたかと思うと、その後ケロッとまたいつものチャラけた顔に戻った。


「出来る予定なかったからこれ要らねーわ」

「要らないんかいっ!」

「あははっ、来人だって別にモテないタイプじゃないと思うんだけどなぁ〜。そう思うでしょ? 紗奈花ぁ?」

「えっ!? うーん…」


 そして来人の全身を軽く眺めると、ふっと軽く笑みを見せると、嘲笑うように答えた。


「まぁ来世で期待くらいはできるかな〜」

「来世っ!?」

「来人がこの現世でモテるならとりあえず存在変えないとな」

「いや今俺という存在だとモテないと言われた気が…」

「私は別に、来人がゴールデンレトリバーだったら現世でもモテると思うなぁ」

「それ言ってること晃太郎と変わらないからな?」


 それぞれ来人に対して思い思いのことを言うと、4人は示し合わせたかのように思いっきり笑った。静かな夜にその声はどこまでも遠くまで響く。


 そんな4人の後ろ姿はその時の世界の誰よりも楽しそうな背中をしていた。


「そういえば…すっかり忘れてたんだけど、来人が初日言ってた秘策ってなんだったの? 結局」

「? テストのか?」

「そうそう」

「聞いて驚くな? 俺はネットで調べていたらあるとんでもない情報を入手したんだ…」

「・・・というと?」


 ゴクリと唾を飲む紗奈花。静音の中に拭く夜風が歩く紗奈花の髪をガバッとかきあげる。


 その時、風で落ちた紗奈花のヘアピンを来人は拾うと、カッコつけるように右手で前髪をかきあげた。


「四択のうち3番目が1番正答率が高い・・・てな」


 来人はキラリッとでもつけてほしそうなポーズをする。紗奈花は少しの間状況が理解出来ずにポカンといると、そばにいた花と晃太郎が2人揃ってお腹を抑えて、張りちぎれんくらいの声を上げた。


「「あはははははっ!!!」」

「なぜ笑うのだ!?」

「だってだって・・・ひっひひひっ!!」

「はぁあ…おもしろかったぁ…何故かって聞いたね? だって今回のテスト、四択の問題なんて、1()()()()()()もんっ!」


 ヒューと先程まで感じていなかった夜風の冷たさが、来人の頬の近くを申し訳なさそうに通る。

 花の言葉で放心して歩くことすら出来なくなってしまった来人。


 そんな来人を1人置いて、紗奈花と花と晃太郎は感傷に浸る。


「なんかこういう感じいいよな」

「私も言おうと思ってた!」

「晃太郎が文化的面を持ってるなんて私、彼女として嬉しいよ…」

「うんうん…バカにされたと思うが、もうなんかなんでもいいや」


 そうして話しているうちにも3人はどんどんと立ち止まる来人から離れていっていく。


 来人は1人、道路に立ち止まっていると鳥の親子が来人の肩に止まり、陽が出るまで止まり木として翼を休めていたとさ。

ぢゅらおです。

ここまではとりあえず予約投稿段階で書いてます。この先白紙だったら次の話で投稿文と同じ文章量で反省と今後を述べたいと思います。


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