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第20話 人間よりも機械の方が可愛らしいよね?

ぢゅらおです。

最近眠りの最低限が上昇し続けてるせいでそろそろ昼夜逆転しそうなのが怖いところです。

「えっと…なんでこんなに意気消沈してるのかなーって訊いてもいい?」

「・・・今俺たちの中で答えられそうな元気持ってるやついると思うならそいつに訊いてくれ」


 紗奈花さなかからの質問に対して、晃太郎こうたろうは疲れを隠すようなこともせず疲労感を前面に出して答えた。


「晃太郎疲れてなさそうじゃん」

「はっ…お生憎様、この通りだ」


 すると晃太郎は目の前に置いてあったフォークを手に取る。が、すぐに手から滑り落ちた。そしてこれを何回か繰り返して見せた。


「・・・俺らにはもう──────」


 席に座り誰とも喋ることなくひたすらに水を飲む野郎達。晃太郎の発した言葉に反応すると、皆持っていたコップを力強く握りしめる。


「「「このコップを割る元気さえ残ってねぇんだよ!」」」


 店中に響き渡る聞いた人の誰しもが「?」を浮かべる言葉。その言葉に訊いた本人である紗奈花でさえ「何言ってるんだろ」と理解が追いつかない様である。


 もうなんとなく気付いているだろうが、みんな仲良し|(?)2年4組の野郎共は揃いも揃って頭を締めるネジに問題を持っているものが多数いる。外れている者、元から存在しなかった者、また締まり方がおかしい者まで。


「あー…うんそうだね。そうだよね、なんか疲れたんだよね? お疲れ様でした?」


 紗奈花はかろうじて動く脳の一部から決まり文句のようなねぎらいを晃太郎を始めとする野郎達に伝えた。


「・・・はな、ねぇちょっと花」

「ぷっはぁ! うまっ! って紗奈花どしたどした?」


 1人この状況で紗奈花の隣でマイペースにジュースを飲んでいた花。ちなみにマイペースとはあくまで自分のスピードでという意味。間違ってもちょびちょび乙女らしく飲む姿ではない。


「男子が全員おかしいんだけど…」

「・・・えー? うーん…」


 紗奈花の相談によってやっとその場の空気のおかしさに気づいた花は前に座る男子。…まぁ晃太郎なのだが、その顔をじーっと眺める。


 少しして花は首をカクンと傾けると、低く唸ったまま再び紗奈花と向き合った。


「・・・いつも通りじゃない?」


「いつも通り(おかしい男子のまんま)じゃない?」という意味で告げた花だったが、一応純粋な乙女である紗奈花にはストレートな意味で受け取られてしまい、紗奈花の困惑をますます深めることになってしまった。


 ここでやっと現在の状況を振り返えることにする。女子が先に学校から去ったあと来人くるとVS野郎で見るにも耐えないバトルを繰り広げた2年4組野郎御一行様。


 その後何があったかはさておいて無事に来人を捕らえた野郎共は動かない足も引きずりつつ、女子達が待つ宴会会場に到着していた。


 では…話題の中心である来人はどこにいるのかというと・・・


「で? 今回の集まった理由の…1、パーセントぐらいを占める来人はどこにいる訳?」


 花が少し高圧的に晃太郎に攻め寄る。今の晃太郎にはそれに言い返す余裕も語彙もなく、無言で指を指す。


 指の指す方向に花は首を回すと何故か店のキッチンで必死に皿洗いをする来人の姿が。


「・・・へ?」

「俺らが予定してたよりも遅く来たせいで、店の予定を狂わせちゃったらしくてさ。それで店の人がカンカンに怒って…そしたら来人がじゃあ今ある洗い物全部片付けますと言い始めてな・・・」

「あーうん? は?」


 疲れてる影響で所々の説明に抜けているところがあるものの、晃太郎は意味は伝わるぐらいに説明をした。


 それでも流れが急すぎて頭が追いつかない花は再度キッチンの方に目をやるがもちろん先程と同様に必死に皿洗いをする来人がいる。


「・・・ふぁぁぁぁあ」


 花は全ての動作を強制停止。煙を出してその場に倒れてしまった。


「あー花がオーバーヒートしちゃったか」


 そうして倒れている花の頭を自分の膝の上に乗せる紗奈花。


「でさ晃太郎。もう何があったかは訊かないから来人がどれくらい手伝うのか訊いてないの?」

「今ある皿全部って言ってたからなぁ…」

「もう男子が来てからもう30分経ってるけど…」

「繁忙期のゴールデンタイムの飲食店の忙しさ舐めない方がいいぞ」

「言葉に重みがあるんだけど」

「実務経験1年だからな俺」

「──────プロは語るってことね」

「言葉を使わなくとも気持ちで伝わるレベルと言っておこうか」


「逆に気持ち悪くない?」とツッコミを入れた紗奈花は膝の上で倒れている花を晃太郎に受け渡すと清々しい程のイタズラ顔を浮かべ1人、キッチンへと向かうのだった…


 ※※※※※※


「あぁ! いつまでやればいいんだよぉっ!」

「はっはっは! 来人の手がもげるまでに決まってるじゃあないか!」

「もう30分はこの冷水に手を浸しているんだぞこっちは!? 冗談無しでその時は近いなおい!?」

「そしたら足を使っても洗って貰うよ?」

「悪魔かてめぇ! 衛生って言葉知ってるか?」

「足で洗っても手で洗ってもどっちも汚いのに変わりないから大丈夫でしょ?」

「ぶっ飛ばすぞ?!」


 紗奈花がキッチンを覗こうとすると、中から聞き覚えのある声とない声の叫び声が聞こえて、反射的に身を隠してしまった。


 そしてバレないように壁から顔を半分だけ出して中を覗くと来人とおそらく店の人だろうか、何やらガミガミとお互い罵りあっていた。


「んもうっ私ったら店の前で騒いでいた客に対しての罰が皿洗いだけとかやっさし!」

「何が優しいんだ? 地下労働並じゃねぇか」

「──────ふーん。じゃあもう警察に通報するしかないよね。えーっと・・・」

「ちょおっと待ったぁぁぁ!!」


 来人が通報されると聞いて何も考えずに飛び出した紗奈花だったが足元にあるアルミ缶に気付かず、その場で盛大に転ぶ。


「お客さん…ですよね? なんでここに・・・?」

「え? あ、あの…その──────」


 さっきまでは誰に止められても言うつもりだった言葉が今では何故か出てこない。


 紗奈花がその場でモジモジしていると、女性は何を思ったのか怪しげなニヤケと共に咳払いを1つ。そして紗奈花の視線を誘導するように来人に向けて指を指す。


「もしかして・・・こいつの彼女さん?」

「違いますっ!」

「何言ってんだこのババァ!」


 紗奈花の否定と来人の焦りの籠った言葉がその場に同時に響き、奇跡的に語尾のところで見事なハモリが生まれた。


 ハモリが生んだ破ることの出来ない無音タイムに3人は喋ることもなくただじっと見つめあった。


「・・・る…るる…るーるる…」

「ぶふっ!」

「あははっ!」


 突然、最近流行りの恋に落ちた時の曲を来人が口ずさむまで理由もなく込み上げる笑いを耐えていた2人。しかし来人によって乙女には似つかわしくない笑い声を上げる。


「これが恋に落ちた男女の関係ってやつね?」

「うわぁ…これ、あれだよな。友達から恋愛関係の話聞くのは楽しいけど、親族から聞くのは普通に引くってやつだよな」

「・・・親族?」

「来人、言ってなかったの?」

「店入る前に捕まってこうやって皿洗いさせられてる俺が、一体いつ教える暇があったと言うんですかね?!」

「・・・ほら…そのテレパシーとかあるじゃん?」

「おいババァ。西暦何年生まれか言ってみろ」

「20XX年」

「遠い未来からやって来ましたってか? さすが顔が宇宙人。よいしょ〜」

「・・・私宇宙人。日本語ワカラナイ。人間モットシリタイナァー」


 来人が親族と呼ぶ女性は首を少し傾けてにっこりと顔を緩める。その間、来人は何も言われないことをいいことに両手で物を上げるフリを繰り返す。


 もちろん来人は気付いてなかった。女性がキッチンに置いてあった玉ねぎを手ですり潰しているのを。


 すり潰している時点で食品を無駄にしていることになってしまっているが、そこはさすがに飲食店経営者。頭のリソースを八割来人に向けているのに対して、残りの二割はこの玉ねぎをどう使おうかしっかりと考えていた。


「・・・来人、問題です。ネギを背負ったカモがいます。しかしそのカモはいつものようにネギを背負うことが出来ませんでした。なぜでしょう?」

「簡単だな。正解は義姉貴あねきのようにそのカモがネギにとってのカモだったからな!」

「何言ってるのか一切理解出来ないし、普通に不正解でーす。お仕置は…これだこなくそぉぉぉ!!」


 女性の後ろから勢いよく来人の顔に玉ねぎの成分をよく含んだ手を押し付ける。


 玉ねぎに含まれるアミノ酸と酵素によって来人の目にはマッチくらいの火なら消せるぐらいの涙が。


(はぁ・・・醜い争いだなぁ)

 紗奈花は横目で玉ねぎを押し付ける女性とそれに対抗しようと涙が止まらない目を指で擦りつつ、自分も玉ねぎを相手に擦り当てようとする本日ハッピーバースデーの男の姿を見た。


 そして紗奈花は黙々と残った皿を義務的に洗っていた。


 人間は自分の好きなタイミングでなんでも好きなことが出来るが、機械はそんなことない。


 3人がそれぞれのことに集中している中、仕事を放棄する人間に怒りを表すようにオーダーをキッチンに伝える機械は着々と己の中に注文を溜め込んでいくのだった…

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